
デビュー以来、海外ジャズフェスティバルへの参加やニューヨークへの単身渡米で研鑽を重ね、関西を拠点に活動を続けるジャズ・ピアニスト杉山悟史。
ニューアルバム『Monologues』は、”自己の軌跡との対話”をコンセプトにオリジナル曲と、これまで特に影響を受けてきた作曲家の作品を中心に選曲したソロ・ピアノ作品だ。
3月25日のアルバム発売に先立ち、今回は杉山悟史を構成する9枚のアルバムを本人のコメントと共にご紹介する。
テキスト:杉山悟史
写真:Takashi Oka(Zero.photograf lab)
Bill Evans『Alone』(1968)
初めて聴いた年:2003年(大学1回生)
自分にとってのジャズの入り口はエバンスでした。
大学の軽音楽部で、主にキーボードを演奏していた頃、当時愛読していたキーボード・マガジンの「鍵盤奏者の必聴100枚」のような記事を見て、TSUTAYAでこのアルバムをレンタルしたと思います。
エバンスの好きなアルバムは挙げればキリがありませんが、この作品のソロならではの間と音色に強く惹かれました。
Roy Haynes『Homecoming』(1994)
初めて聴いた年:2005年(大学3回生)
軽音楽部で2年あまりを過ごした後、ジャズに専念するためにジャズ研究会に転部しました。
その頃に西宮にかつてあったジャズ喫茶「Corner Pocket」で聴いた作品です。
今は亡きマスターが爆音でかけていて、パワーと一体感に圧倒されて、すぐにCDを買いました。
このアルバムがきっかけで、Chick Corea作曲の「Bud Powell」をジャズ研でよくセッションしていました。
Brad Mehldau『Art of the Trio 4: Back at the Vanguard』(1999)
初めて聴いた年:2005年(大学3回生)
それまで50年代前後のジャズを中心に聴いていた中で、突然このアルバムを聴いた当時は何をやっているのか全く理解できず、ただ頭が真っ白になる感覚でした。
正直はじめは戸惑いを覚えましたが、繰り返し聴くうちに高度な演奏の中で紡がれている裏側の構造やストーリーのようなものが見えてきて、気づけばハマっていました。今でも聴き込むたびに身震いがするような、「恐ろしい」一枚です。
Ray Brown Trio『Live At Scullers』(1997)
初めて聴いた年:2006年(大学4回生)
Benny Greenのピアノを初めて聴いたのはこのアルバムでした。
それ以外の作品と聴き比べて、このライブ盤での演奏はギアの上がり方が違う、凄まじいエネルギーを感じます。
恐れのない、全てを出し切るようなプレイでいて、全体はRay Brownのアレンジとストーリーになっている絶妙なバランスが、いつ聴いても爽快な一枚です。
Lee Morgan『Live At The Lighthouse』(1971)
初めて聴いた年:2012年
大阪の萱島にかつてあった「OTO屋」というライブハウスでのライブ後にかかっていたアルバムです。
全てのソロがシンプルかつモーダルなコード進行の上で展開されていて、各曲20分近い演奏が、張り詰めた熱のまま続く、その集中力に度肝を抜かれました。
興奮気味だった自分に、OTO屋のマスターがLPを譲ってくださり、以来ずっと愛聴盤です。
Count Basie and The Kansas City 7『Count Basie and The Kansas City 7』(1962)
初めて聴いた年:2013年
自分の演奏に少し悩んでいた時に、「ベイシーのピアノをコピーしてみたら」とアドバイスを受けた事がありました。
色々とベイシーの作品を聴いていた中で実家で父のジャズのLPとCDのコレクションの中からこのアルバムを見つけ、聴き込むうちに研究の目的を通り越して愛聴盤になりました。一聴するとシンプルに聴こえる楽曲やアレンジにも巧みなアイデアや余白が散りばめられていて、あっという間に聴き切ってしまう一枚です。
Nancy King With Fred Hersch『Live at Jazz Standard』(2006)
初めて聴いた年:2013年
現役で活躍されているミュージシャンの中で、特に好きなピアニストの中の1人のFred Herschの演奏は、このアルバムで初めて聴きました。
自分自身、ピアニストとしてボーカリストとデュオを演奏する機会はずっと多いですが、その概念を変えてくれた一枚です。
それまで数年間活動して来て自分の中に出来つつあった「伴奏する側の意識」みたいなものが崩され、「対話」として音を置くイメージを持つきっかけになりました。
Keith Jarrett『Facing You』(1972)
初めて聴いた年:2017年
数あるKeith Jarrettのソロアルバムは愛聴盤もたくさんありますが、1作目であるこのアルバムにはだいぶ後になって辿り着きました。
1曲目で「なぜ今まで聴かなかった…?」と大いに後悔しました。
鬼気迫るようなエネルギーが各曲異なる景色に乗って、音楽に引きずり込まれるような感覚で、気づけば通して聴き終えてしまっている作品です。
Rasmus Sørensen『Traits』(2022)
初めて聴いた年:2023年
サブスクでアルバムを聴き終わった後の「おすすめ」的に自動再生されたのがきっかけで知ったデンマークのピアニストの作品です。
端正で透き通るような音色に、即座に「誰?」と耳を引きつけられ、その後に続くトリオの絶妙なコンビネーションに夢中になって聴き込んでしまいました。
近年で最もハマったアルバムです。
<全体を振り返って>
今回の記事を書くにあたって、このリストに入らなかった作品を含めて、過去の愛聴盤をゆっくり聴き直す時間を持てました。
自分が以前から好きな事と、目指している事を再確認できた、とても有意義な時間でした。(杉山悟史)
RELEASE INFORMATION

杉山悟史
Monologues
2026.3.25 RELEASE
Kamnabi Records / diskunion
LIVE INFORMATION
杉山悟史『Monologues』発売記念ライブ
2026年3月17日(火) 大阪・梅田 Jazz Club GALLON
open 18:30 start 19:30~
ARTIST PROFILE
4歳から12歳までをドイツ・ハンブルグで過ごし、
小学校時代にクラシックピアノを学ぶ。
関西学院大学でジャズと出会い、
在学中より地元のライブハウスで活躍。
2008年「第2回神戸ネクストジャズコンペティション」準グランプリ受賞。
2010年JAZZ LAB. RECORDSより1stアルバム”Someday”を全国発売。
2012年ニューオリンズのフレンチクオーターフェスティバルに出演。
2014年単身渡米。2年間の滞在中、現地ミュージシャンとのセッションを重ねる。
帰国後は関西を拠点としながら幅広いアーティストと共演し、全国各地での演奏活動を行なっている。
2021年と2022年には、NHK朝の連続テレビ小説「カムカム・エヴリバディ」に出演、2023年NHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」ではピアノ指導にあたっている。
近年では、シンガーKIRA「Lost Child / Cradle」「ロンリーガール」の楽曲制作に携わり作曲家・編曲家としても活躍する。
