東京都内を中心に活動するpaddy isle。トリオになったのをきっかけに、アコースティックな編成も強化し、サポート・ドラマーを入れた従来のエレクトリックでレイヴなサウンドだけでなく、いまやふたつの顔を見せてくれる。今日はそんな彼らが9月23日に配信とCDでリリースしたセカンド・アルバム”Songs Of Innocence & Corruption”や近況について、いろいろインタビューしてみたい。
インタビュー/構成: ゴトー (Goteaux Records:後藤博則)
─満を持してセカンド・アルバム、いよいよ出たね!
丸山 凌 (Gt/Vo 以下丸山):はい、バンドとしてはシングル”Staring At The Ceiling”を出したのがちょうど去年の8月なので、一年ぶり。ファーストが2022年11月でしたから、いよいよという感じですね!
─制作の背景とかたくさん聞きたいんだけど、まず、このアルバムの制作意図っていうか、そのあたりどうですか?
丸山:アルバムを作ろう、というのは2、3年前にあって、その時は「マッドチェスター」をテーマにやろうとしてたんです。
新垣 歩(Ba/Vo 以下新垣):90年代のその辺りの音楽には大きな影響を受けましたから。
─シングルで出たばかりの”Turned On”というオマージュ曲があるけど、そういうので全編固めたかったわけ?
丸山:だったんですが、白石が抜けたり他にもいろいろあって、ゼロ・スタートみたいな感じになりましたね。
─先行シングル2曲を聴いて、勝手にアルバムはギターがうねるサイケデリックなものになるのかなと思っていたんだけど、そうではなくてアコースティックなのが多くて意外だったんだけど。
丸山:そこが今回の特徴というか、paddy isleの強みじゃないかと思ってるんです。ライヴもエレキでバンドセットもあれば、3人でアコースティックセットもあって、それぞれがいまとてもいい感じになっているので、それがアルバムに反映されてると思います。


三浦”アンドレ”達也(GT/Vo 以下三浦):そういう意味では、アコースティックなのは宅録的なアプローチで、エレキはスタジオでガッツリやったみたいな・・・。
─paddy isleの始まりが丸山くんと三浦くんの宅録ユニットだったというのが継承されているのかな。
丸山:そうですね。それもありますし、今回は曲の背景も個人的にもバンド的にも変化があって・・・それを反映した感じですね。

─そういえば、アルバム・タイトルが”Songs Of Innocence and Corruption”で、これってU2の”Songs of Innocence”がヒントになったの?
丸山:U2はあまり関係ないんです(笑)。さっきもちょっと言いましたが、個人的にもバンド的にも「ピュア」な部分と「ダウナー」な部分があって、そんな中で佐野元春の90年代の「スウィート16」というとてもいいアルバムがあるんですが、その後に出たこれまた傑作の「サークル」が「16」と対をなしている感じで、最近またよく聴いてて、そういう「対になっているもの」がテーマでもあって、そこからですかね。
─そうなんだ。僕はまた読書家の丸山くんがウィリアム・ブレイクの”Songs Of Innocence And Experience”から持ってきたのかなとも思ったんだけど、外れたかー(苦笑)。
丸山:1曲目のシングルでも出た”Staring At The Ceiling”のフレッシュな明るい曲と3曲目がそれのアンサーソングというか、ちょっとダルな、”Tumbling Man”の文字通り「つまづいている」感じが対になっていたりしてますね。
─それは気づかなかった!(笑)。じゃ、アルバムのほう行こうか。1曲ずつ行こう。paddy isleは今の3人全員がソングライターで、それぞれに個性があるから、作者は責任もって答えてくださいね(笑)。じゃ、1曲目。これは丸山くんだよね。
丸山:(笑いながら)わかりやすいですか?この歌は気持ちいい日曜の朝のことを歌っているんですが、実はちょっとエロっぽいっていうか。
─え?!そうなの?!(笑)
丸山:彼女と初めて夜を過ごした翌朝という設定で「無敵状態の少年」なんですよ。
─おお、なるほど!それで「なんて素晴らしい日曜の朝!」って歌い出しなんだね。目を覚まして、天井みつめて、隣にはって訳か・・・(笑)。ところで、録音は去年?ドラムは白石くんだよね。
丸山:ええ。録音自体はもう少し前で、ドラムは勿論、白石です。このアルバムでしっかりドラムが入っているのは彼が叩いていて、5曲かな。

─なるほどね。じゃ、2曲目、これもシングルで出たナンバー、”T.M.I.”。
丸山:これは僕と三浦の宅録から始まった曲で、作曲も2人でやってます。途中から曲調が変わります。
─今回も全部英語歌詞だけど、やっぱ母音が入る日本語だとこういう感じは出ないよね。
三浦:英語のフレーズとかを「当てはめていく」という感覚なんです。自分が知ってるフレーズや聴いた曲が頭に残ってて、自分の気持ちに合うフレーズなんかをそういうストックから探して、当てはめていくみたいなやり方ですね。
─あ、それ、分かるな!paddy isleの曲作りってリフとかちょっとしたフレーズを繰り返して曲に発展させていくみたいなイメージがあるんだけど。
三浦:そうですね。
新垣:スタジオでジャムりながら作ることも多いですね。
─”Too Much Information”を”T.M.I.”って略語にしてるのは何か意図があるの?
丸山:”T.M.I.”ってスラングなんです。「無駄話」みたいなニュアンスで。韓国とかでも。
─へぇ、そうなんだね。曲としては「王道ブリティッシュ・ロック」という感じだね。ライヴでやってる古い”Sun”なんかもそうだけど、paddy isleのレパートリーのひとつとしてある曲調だよね。それじゃ、次。
丸山:”Tumbling Man”!
─出たね。T. REX!(笑)、それも”Telegram Sam”以前の”Jeepster”あたりの感触。いまこういうのやってるバンドいないよね。
丸山:僕の弾き語りDemoは、もっとT. REXでした!(笑)それを三浦の家で宅録したんです。T.REXというより、構想としてはロバート・ワイアットのミニマムなアンビエントでもあったんです。
─さっき、1曲目と対になっていると言ってたけど・・・
丸山:ズタボロです・・・。
─「ズタボロ・フェア」か・・・(笑)。ギターが何本も入ってるね。エンディングのワウワウ言ってるのは何?
三浦:シンセです。

─4曲目は新垣くんの曲だね。声も特徴的だからすぐにわかる。これ、ドリーミーだよね。
新垣:ええ、ドリーミー・ポップですね。
─推測だけど、新垣くんはどっちかと言うと曲を完璧に仕上げて持ってくるんじゃない?
新垣:はい。この曲はDemo作って、バンドに投げて、みたいな。
─後でまた触れるけど、3人が三様の曲の色というか違いがあるね。作った人が歌ってると思うので、声で勿論分かるのだけど。新垣くんは、比較的シンプルなコード展開、オールディーズによくある”C→Am→F→G7”とか”C→Am”の繰り返しが多いよね。”C→Am”の展開好きなの?
新垣:ええ、好きですね!(笑)使ってるコードも少なくて昔っぽいコードなんだけど、あんまり動かさないでメロディを変えていくことで曲を作るのも多いですね。
─これ”Undersea Morning”と言うタイトルにふさわしく、よく聞くと水の中にいるみたいな「ぷくぷく音」が聞こえる。
新垣:グラスに入れた水をストローでこう、ぷくぷくやりました(笑)。
─やっぱり!(笑)”Octopus’s Garden”みたいだな!次の5曲目と6曲目は三浦くんかな?

三浦:当たりー(笑)。
─三浦くんの曲って結構複雑で、シンプルな中に変化を作り出す新垣くんやシンガー・ソングライター的な丸山くんとも違うのがいいね。5曲目の”Bridge”はジョージ・ハリスンを思わせるコードとスライド・ギターがフィーチャーされてるね。
三浦:マイナーになるところがジョージですかね。あんまり意識はしてないんですよね。これ実は少し前に友人が映画を作るので、サウンドトラックをpaddy isleでやってくれないか、と言う話があって、結局実現しなかったんですけど、その時に書いてそれっきりになってたのを持ってきたんです。
─なるほどね。歌詞”Walking across the Universe・・・”とか、スケールがデカくて面白い。次の”Whispering”はどんな背景で?
三浦:これはルイス・コールに興味を持って、歌詞を調べて、熟読したりしていたんです。そういうところから曲に合う言葉を探したみたいなやり方でした。
─三浦くんの曲はタイトルが抽象的で、どう言う発想かと思ってたんだけど、そう言うことなのね。
三浦:曲や心情に合う象徴的な言葉を探して、これは違うとか、結構試行錯誤するんです。
─絵を描くコラージュとは違うけど、そう言う感じだね。アコースティックなんだけど、フォーキーじゃないと言うのも面白い。
三浦:フォーキーにはしたくなかったですね。
─次の”Hard To Say”は丸山くんだってすぐ分かるんだけど、この曲はなんと言ってもアコギのソロがいいね。名演だ。これは三浦くん?
三浦:ええ、最初、ソロはスライドでいくぞ!って思ってたんだけど、いや、エレキで行こうとかやってるうちに丸山がアコギでやったらどう?アコギのソロって僕らやってないよな、みたいな。
丸山:大正解だよ(笑)。
─8曲目は新垣くんの”Today Is A Lucky Day”。耳に残るね、”♬Today is a lucky day・・・”。新垣くんの曲は普通のコード展開にちょっとしたフックというか耳に残るフレーズとかがあって、いいと思うよ。
新垣:ありがとうございます。この曲は、アルバムの納期が迫ってきた段階で捻り出したようなところがあるんですが、宅録で仕上げています。
─ヘッドホンで聞いたとき、エンディングで楽器がフェイドアウトして消えそうになった時、かすかに「ピーポー、ピーポー」が聞こえるんだよね。
新垣:そうなんです。でも、消してしまうと楽器の残響も無くなっちゃうんで、そのままにしました。入っちゃったのはほんと偶然なんです。

─で、9曲目、シングルで出たばかりの、これぞ「マッドチェスター」へのオマージュという”Turned On”。8月の下北沢THREEで観た時思ったけど、paddy isleって、めっちゃ「ライヴ・バンド」だよね。そういう意味でこういうダンサブルな曲をいま出したというのはどういうことかな?
丸山:友人のDJイベントから今もやっている”MOONSHINE”(@渋谷Ruby Room)というバンドありDJありのイベントがありまして、そういうとこで盛り上がるナンバーっていう感じですね。
─東京のライヴだと、シャイなのか、みんな案外踊らないよね。
丸山:シチュエーションによると思いますよ。Ruby Roomでは踊りまくったりしてますし。
─そうだ、これ、12インチ(死語か?!)出しなよ!(笑)。いまどうなのロング・ヴァージョンとか。
丸山:リミックスは多いですよね。
─ダブとか強烈にかまして・・・ぜひぜひ!(笑)。クリスマス用にどう?この曲ではエンディングに向かって”I’m so glad・・・”って歌ってるよね。ライヴだけのシャレかと思ってたんだけど、しっかり入ってる(笑)。
丸山:流れ的に出てきた感じです。スタジオ版では、できるだけ遠くで歌ってるように入れました(笑)。

─次の”One Night”はワルツだね。アルバムでワルツが2曲あるけどそのうちのひとつ。
丸山:これは一番最後に録音した曲です。アルバムの全体像を見ながら。歌詞は後悔から始まるんですが、それだけだとあれなんで明るい方向で締めてます。
─おお、確かに・・・。そして、11曲目は新垣くんの”Luck Of Empathy”、「共感欠如」って感じかな。
新垣:これ、タイトル通り、心情的にはあまりよくない状態で書いたんです。白石が抜けたりした頃のもので・・・。曲は三浦と一緒に宅録したんです。
─これも循環コードだね。スローな調子の。ドラムはリムとキックのみに聞こえるけど、打ち込み?
新垣:はい。この曲で重ねているギターは変則チューニングなんです。
─それは気がつかなかったなぁ。オープンGとかその手の?
新垣:いえ、そういう普通の変則チューニングではなく、自分でも思い出せないような「変わった」チューニングです。なので変な音してます(笑)。
─さて、いよいよラストソング、”All My Love”。これは三浦くん?
三浦:そうです。この曲を書いたとき、面白いエピソードがあって、「これぜったい何かの曲にあるよなー」って感じて、メンバーに聞かせて、尋ねたんです。「これ、聞いたことない?誰かの曲じゃない?」って。そしたら誰も知らないというので、堂々と(笑)入れました。
─ポールが”Yesterday”を書いたときもそんな行動に出たようだから、この曲も世紀の名曲かもしれない!(笑)ピアノで始まる、これもワルツ。三浦くんらしい「変な曲」だよ。
三浦:そうですね(笑)。後半、急にドラムが入ってスケールがデカくなります。白石に、「ここだけ叩いて」、って言って。
─アルバムの締めにふさわしいナンバーだね。・・・ということで、聞いてきましたが、曲順はどういうコンセプトというかどうやって決めたの?
丸山:ドラマーがいるのといないのとあるので、最初の構想として、シングルで出したようなドラム入りのを前半に集めて後半はアコースティックな曲でドラムは打ち込みだったり、レスだったりと言う組み合わせを考えたんです。でも、それだと落差が大きくて。それで新垣中心に曲順のアイデアを出して、最終的に今のカタチにしました。
─まぁ、そうだよね。LPで言えばA面がエレクトリック・サイド、B面がアコースティック・サイドというのはありだと思うけど、配信やCDだと繋がってるから。よかったんじゃない、今のように流れも考えた曲順で。
─じゃ、今日は色々アルバム制作のエピソードが聞けて面白かった。この記事が出る頃はツアー真っ最中と思うんだけど、アルバムの曲もライヴでやるよね、当然。
丸山:はい、勿論!それと、今回はオフィシャル・フォトブックを作っていて、これもアルバムと一緒に出しました。かなりいい出来ですので(笑)、ぜひ手に取ってみてください。よろしくお願いします!
新垣&三浦:よろしくお願いします!

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先日、下北沢のBar Giraffeで、オフィシャル・フォトブックのリリース・パーティがあった。ブック制作者たちのトークショウのあと、アコースティック・セットでの演奏を視聴した。インタビューでも触れたエレクトリック・セットの重厚な感じとはうって変わって、3人が奏でるギターとヴォーカル、そしてハーモニーが、別バンドかと思うほど異なったアレンジで、繊細にかつビート感のあるものになっていた。「海辺で夕陽を見ながら聴きたい!」そんな声がオーディエンスから上がるほど、”Chill out”させてもらった。彼らの「今」を味わえるセカンド・アルバム、多くのリスナーの耳に留まって欲しい。
RELEASE INFORMATION

▼TRACK LIST
1. Staring At The Ceiling [Album Mix]
2. T.M.I.
3. Tumbling Man
4. Undersea Morning
5. Bridge
6. Whispering
7. Hard To Say
8. Today Is A Lucky Day
9. Turned On
10. One Night
11. Lack Of Empathy
12. All My Love
EVENT INFORMATION
2026.10.10(Sat) at Disco Alive(新潟県新潟市南区上下諏訪木742-4)
open / start 19:30 / 20:00
チケット: ¥2,000(ドリンク別)
ACT: paddy isle (acoustic set), BlackSmith OneManTrash
2026.10.11(Sun) at Snokey Record(栃木県宇都宮市江野町2-15近江園ビル二階)
open / start 16:00
チケット: ¥2,500 (ドリンク別)
ACT: paddy isle (acoustic set), Wee Wee hours
DJ /Selectors: ターチ(Brave Lion), サンスケ(MONSTER GROOVE)
2026.10.13(Tue) at SOCORE FACTORY @socorefactory
open / start 19:00 / 19:30
チケット: adv.¥2,400 /door.¥2,900 (ドリンク別)
ACT: paddy isle, Mokcians, Kensuke Sudo, Mama Rag
2026.10.14(Wed)”未知との遭遇” at KDハポン @kdjapon
open / start 18:00 / 18:30
チケット: adv.¥2,400 / door.¥2,900 (ドリンク別)
(U23 ¥500 OFF)
ACT: paddy isle, ちゃむちゃむ, スイートスポット, Sunnyside Diary
2026.10.17(Sat) at RUBY ROOM @rubyroomtokyo
“MOONSHINE presents paddy isle One Man Show (tour final)”
Open / Start 18:00
チケット: ¥2,700 (1ドリンク込)
ACT: paddy isle (acoustic set & band set)
OPENING ACT: NOMAD
DJ: 涅槃, 齋藤雄, やまださき
各公演ご予約・ご不明点はバンド、またはバンドメンバーまで
paddy isle
Web Site https://linktr.ee/paddyisle
X https://x.com/paddy_isle_band
Instagram https://www.instagram.com/paddy_isle_jpn/
WATER ROOM RECORDS
Web Site https://waterroomrecords.wordpress.com/
X https://x.com/WaterRoomRecord
ARTIST PROFILE

paddy isle(パディ・アイル)
東京を拠点に活動するサイケデリックバンド。
60〜70年代のサイケやフォークロックをベースに、ソリッドながら煌びやかなギターと色彩豊かなコーラスワーク、時にはダンサブルなビートを取り入れながら、時代感に囚われないサウンドを発信している。
作品リリースやDJとの共同企画『MOONSHINE』の開催を重ねながら、現在はRyo Maruyama(Vo. Gt.)、 Ayumu Aragaki(Bass. Vo.)、Tatsuya “Andre” Miura(Gt. Vo.)の3人編成を軸に活動中。
浮遊感あふれるアコースティックセットと、サポートメンバーを迎えたダイナミックなバンドセットを自在に行き来し、その対照的な魅力を武器にライブを展開している。

