2023年夏、ソロ作品では初となる全国流通アルバム『The Unforgettable Flame』をリリースし、その後も会場限定盤・自主制作音源のサブスク解禁や新曲の配信リリース、2024年3月には同アルバムのLP化など、活発な活動を続ける岡山健二(classicus / ex.andymori )。そんな彼にとってひとつの節目を迎える2024年、OTOTSU独占で岡山の音楽人生の振り返りと今後を深堀りしてゆく新連載が、2024年1月からスタート。
毎月第4木曜日更新 / 全12回予定。
文:岡山健二
編集:清水千聖 (OTOTSU編集部)
2012年の秋から2013年の春。
この頃のことで一番鮮明に蘇ってくるのは、レコーディングスタジオでの光景だ。
27才の自分は、来る日も来る日もスタジオに通っては、ドラムを叩いたり、はたまた、何もせずにソファでコーヒーを飲んだりしながら、その日の録音作業を眺めたりしていた。
結果的に、ラストアルバムとなるこの録音は、非常に長い期間に渡り行われた。
実際の録音に入る前に、プリプロ(プリプロダクション)と呼ばれる録音の準備段階があるのだけど、そのプリプロも結構な日数があり、それらは、わりと学生たちも使うような、街の練習スタジオでも行われたりした。そういった日の帰りは、みんなで飲みに行ったりもした。
この頃の練習場所は主に、小田急線・JR南武線の登戸駅近くにあったCLOUD9(クラウドナイン)というスタジオだった。
作り出した頃は、まさかラストアルバムになるとは思っていなかった。
どこから、そういう流れになっていったのかわからないのだけど、壮平さんと寛さんがandymoriの前にやっていたバンドの曲も収録しようということになった。
そうこうしているうちに、みるみる曲数は増えていった。候補曲を書き連ねたホワイトボードに20を越える曲があったことを記憶している。
エンジニアのH氏は、大ベテランで、プリプロの段階から顔を出してくれたり、この曲はこんな雰囲気で、とか、個々の曲のテンポだったり、前もって、いろいろミーティングしたりしていた。
バンド自体はどうだったんだろう。
バンドを取り巻く環境は、この上なく整っていたけど、当時はみんな20代後半で、危ういところもあったと思う。
でも、わからない。2人は全然そんなことなかったというかもしれない。ただ自分自身は、今にして思うと20代後半はけっこう大変な時期だった。
プリプロは街スタジオからレコーディングスタジオに場所を変えながらも続き、ようやくアルバムの全体像が見えてきたところで、対バンツアーが決まっていたので、モードを切り替えたりといった2012年の11月に、壮平さんの脱法ドラッグのことがニュースになった。
どういう流れかは忘れてしまったのだけど、たしかマネージャーから最初に連絡があったように思う。
ニュースを見たという知人たちから、「大丈夫か?」とメールをもらったりしたのだけど、なんとも答えようがなかった。知らない番号からも電話がかかってきたけど、ほとんど出なかった。
バンドに加入当時、ドラムのことをネットで叩かれていた時と同じく、これは自分でどうこうできることじゃないと思い、このことに関してはそれほど調べなかった。
この頃の自分のことをメンバーはどう思っていたのだろう。
andymoriは加入した当初から大変なことの連続だったような記憶があるのだけど、この辺りから、自分はどこか心を閉ざしていってしまったような感じがある。
たぶんそうでもしないと乗り切れなかったのかもしれない。
ニュースは連日放送されていたが、ツアーは中止されずに行われた。
ツアーが終われば、レコーディングが開始された。
自分はこの頃、ドラムフレーズを考えることが何故か出来なくなっていた。
ドラムの音色やグルーヴなどはよくわかるのだけど。たぶん、いろいろと無理が来ていたのだろう。
そんなこともあり、ほとんどの曲のドラムフレーズを寛さんに手伝ってもらい作っていった。
このアルバムは寛さんに相当助けられた作品でもある。
H氏の録ってくれた音が、自分が今までドラムを叩きながら大事にしてきた、うねりのような部分までを録ってくれている気がした。それについては話をしたことはないが、おそらくH氏にはそういったものが聞こえていたのだろう。
このレコーディングによって、自分のドラムのスタイルのようなものを見つけ出せた、もしくは思い出せたような感じがあった。それに、ドラムを叩く上での余分な力が抜けたのも、この時期だ。
いろんなことがあり今の自分がいるのだなと思う。
アルバムを録り終える頃に、壮平さんに呼び出され早朝の喫茶店に3人で集まった。「解散するなら今だと思う」と壮平さんから伝えられた。
自分は何も言葉が出なく、しばらく黙っていた。『この先どうしようか』など呆然と考えていたら、2人から「健二、大丈夫か?」と心配されるような感じで聞かれたので、『しっかりしないと』と思い直し、「わかった」といったことを言ったような気がする。
アルバムのプロモーションで各地に出向き、忙しい日々を送っていた。
それらも、ひと通り終わり、あと残すは解散ツアーだな、といった7月の頭に、壮平さんが橋の上から転落し、大ケガを負ってしまう。
予定は全部中止となった。そして、何もない夏がやって来た。
「宇宙の果てはこの目の前に」
1.トワイライトシティー
2.宇宙の果てはこの目の前に
3.MONEY MONEY MONEY
4.ネバーランド
5.ネオンライト
6.路上のフォークシンガー
7.スパイラル
8.空は藍色
9.優花
10.サンシャイン
11.ゴールデンハンマー
12.teen’s
13.カウボーイの歌
14.夢見るバンドワゴン
覚書
1.トワイライトシティー
壮平さん、寛さんの昔のバンドのレパートリー。ライブでは一度もやることがなかった。録音の感じ、いいなと思う。
2.宇宙の果てはこの目の前に
けっこう綿密なフレーズのすり合わせをした。最初のサビの、だんだんと音が増えていくアレンジを作るのに時間がかかった。
3.MONEY MONEY MONEY
プリプロと本番レコーディングのテイクの2つあったのだけど、収録されてるのはプリプロのテイク。
4.ネバーランド
ドラムにディストーションをかけて録音されている。その関係で、ライドシンバルは、後から重ねることになったのだけど、なかなか合うシンバルが見つからず、半年後くらいにようやく、しっくりくるシンバルに手に入れることができ、いいところに落ち着いた。
5.ネオンライト
ストリングスの方々にスタジオに来てもらった。
要望を伝えるの、なかなか緊張した。録音時は3人で固唾を呑んだ。
6.路上のフォークシンガー
スタジオで録ったテイクもあったが、結果、渋谷の路上で歌ったテイクが採用された。
7.スパイラル
ほぼ全曲メトロノームに合わせて、ドラムを叩いたが、なぜかこの曲だけうまくいかず、最終的には、メトロノームを聞かず、フリーで叩いた。
8.空は藍色
この曲で、寛さんとハイハットシンバルの開き具合の話になったような記憶がある。
9.優花
スタジオに着き、朝一で叩いたテイク。リズムの感じや、音のバランス、気に入ってる。
10.サンシャイン
ドラムフレーズ、けっこう悩んだ記憶がある。レコーディングに向かう、電車の中で、シンバルを叩く位置を譜面に書き込んだりしていた。
11.ゴールデンハンマー
この曲は、プリプロのテイクもいい感じだった。いい曲だなと思う。
12.teen’s
この曲を、しっかり録れるかが、このレコーディングの重要なポイントの1つだった。寛さんの考えたリズムパターンが面白い。
13.カウボーイの歌
壮平さんと寛さんがアレンジについて、いろいろ話し合っているのを横目に、ソファでコーヒーを飲んでいた記憶がある。
14.夢見るバンドワゴン
おそらくバンドで録音した最後の曲。サビの部分は3人で一斉に歌ったものが採用されているはず。最終的には、そんなこともできるくらいのレベルに到達していたんだなと思う。
2012.11.15(木)
DaisyBar Autumn Fes.2012~ヒロ企画“嘘が本当になる日 vol.5”〜/下北沢DaisyBar
2012.11.21(水)
andymori presents “マイム・マイム” ツアー/大阪 なんばHatch
ゲスト/くるり
2012.11.22(木)
andymori presents “マイム・マイム” ツアー/名古屋 CLUB Diamond Hall
ゲスト/浅井健一
2012.11.27(火)
andymori presents “マイム・マイム” ツアー/東京 SHIBUYA-AX
ゲスト/チャットモンチー
2012.12.02(日)
andymori presents “マイム・マイム” ツアー/東京 下北沢GARDEN
ゲスト/曽我部恵一BAND
2012.12.06(木)
andymori presents “マイム・マイム” ツアー/福岡 DRUM LOGOS
ゲスト/万能グローブ ガラパゴスダイナモス
2012.12.22(土)
『週末Diner vol.4 仙台』 【第一部】/仙台 darwin
2013.03.01(金)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/名古屋 NAGOYA CLUB QUATTRO
2013.03.02(土)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/静岡 Live House 浜松窓枠
2013.03.08(金)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
2013.03.09(土)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/金沢 Eight Hall
2013.03.15(金)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO
2013.03.16(土)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/水戸 LIGHT HOUSE
2013.03.20(水・祝)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/広島 HIROSHIMA CLUB QUATTRO
2013.03.22(金)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/長崎 DRUM Be-7
2013.03.24(日)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/鹿児島 CAPARVO HALL
2013.03.28(木)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/岩手 宮古KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
2013.03.30(土)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/宮城 石巻LIVEHOUSE BLUE RESISTANCE
2013.03.31(日)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/郡山 HIPSHOT JAPAN
2013.04.04(木)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/東京 LIQUIDROOM
2013.04.05(金)
ライブハウスツアー “FUN!FUN!FUN!”/東京 LIQUIDROOM
2013.04.27(土)
“ARABAKI ROCK FEST.13″/エコキャンプみちのく
ARABAKI ROCK FEST.13 SATURDAY MICHINOKU PEACE SESSION
フラワーカンパニーズ トリビュートセッション
F.C.w.F<Flower Companyz with Friends> ※小山田壮平のみの出演
2013.04.28(日)
“ARABAKI ROCK FEST.13″/エコキャンプみちのく
2013.05.03(金・祝)
“SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2013 in 東京”/日比谷野外大音楽堂
2013.05.05(日・祝)
rockin’on presents “JAPAN CIRCUIT vol.51″/東京 新木場Studio Coast
2013.06.02(日)
“待ち人のフェイバリット~on the street corner~”/日比谷野外大音楽堂 ※小山田壮平のみの出演
2013.06.22(土)
“YATSUI FESTIVAL! 2013″/東京 渋谷 O-EAST
【公演中止】
2013.07.27(土)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/札幌 Zepp Sapporo
【公演中止】
2013.08.03(土)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/大阪 Zepp Namba
【公演中止】
2013.08.04(日)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/大阪 Zepp Namba
【公演中止】
2013.08.10(土)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/ 福岡 Zepp Fukuoka
【公演中止】
2013.08.11(日)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/ 名古屋 Zepp Nagoya
【公演中止】
2013.08.17(土)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/ 新潟 LOTS
【公演中止】
2013.08.18(日)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/ 仙台 Rensa
【公演中止】
2013.08.24(土)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/ 東京 Zepp Tokyo
【公演中止】
2013.08.25(日)
andymori Tour 2013 “ALL YOU NEED IS LOVE”/ 東京 Zepp Tokyo
【公演中止】
2013.09.24(火) andymori ラストライブ 武道館/東京 日本武道館
RELEASE INFORMATION
The Unforgettable Flame (CD&LP)
岡山健二
CD 2023.08.02 Release
LP 2024.03.20 Release
monchént records
Price:
CD 2,200 yen (tax in)
LP 4,500 yen (tax in)
★ブックレットに書き下ろしライナーノーツ掲載
★ディスクユニオン&DIW stores予約特典:
オリジナル帯
Track List
Side A.
01. intro
02. 海辺で
03. 名もなき旅
Side B.
01. あのビーチの向こうに空が広がってる
02. 軒下
03. 永遠
04. My Darling
LIVE INFORMATION
ARTIST PROFILE
1986年三重県生まれ。12歳でドラムを始め、のちにギターとピアノで作曲を開始。19歳の時に上京し、2011年にandymoriでデビュー。2014年、同バンドの解散後は、自身のバンドclassicus(クラシクス)を結成し、音源を発表。
現在は、ソロ、classicusと並行し、銀杏BOYZ 、豊田道倫 & His Band!ではドラマーとして活動している。
【Official SNS】
岡山健二 Official SNS / リリース一覧
https://monchent.lnk.to/kenjiokayama
classicus
Web Site
https://www.classicus.tokyo/
YouTube
https://www.youtube.com/@classicusofficialchannel186