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「ヴァルキリープロファイル」、「スターオーシャン」シリーズ等、数々のゲームミュージックを手掛けた作曲家・桜庭統へゲーム音楽制作とソロ活動の相違点、次回作の構想など5つの質問を軸にインタビュー。

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「ヴァルキリープロファイル」、「スターオーシャン」、「ダークソウル」シリーズ等、数々のゲームミュージックを手掛けた日本が世界に誇る作曲家・桜庭統。そのキャリアのスタートを切ったバンドデビュー作+初期ソロ作品3タイトルを2023年7月19日にリリースするにあたって、制作当時の背景や、ゲーム音楽制作とソロ活動の相違点、次回作の構想など5つの質問を軸にインタビューを敢行した。

取材・文:嶋田夏彦(CASSETRON)
編集:汐澤(OTOTSU編集部)


Q1.

『バロック・イン・ザ・フューチャー*1』発表の後にはウルフチーム*2に所属され、’91年の『戯曲音創*3』発表までに『グラナダ*4』『ソル・フィース*5』など多数のゲーム音楽を手掛けておられます。
当時はゲーム音楽については機能や容量などの制約が大きく、ソロ活動ではそういった制約が少なかったのではないかと思われますが、この差が創造性や表現に影響を与えることはありましたか? また、活動が相互に影響を与えることはありましたか?

*1 桜庭統が大学在学中に結成したバンド「デジャ・ヴ」’88年デビュー作。

*2 かつて存在した日本のゲームソフト会社およびブランド。

*3 桜庭統ソロとしてのファーストアルバム。’91年作。

*4 ’90年にウルフチームから発売された多方向スクロールシューティングゲーム。

*5 ’90年にウルフチームから発売された横スクロールシューティングゲーム。

 ゲーム音楽を制作する時とソロ活動の時とでは、根本的に制作の考え方が違います。
創造性については、ゲームの為の音楽は自分が作りたい音楽と言うよりも、ゲームの補助的なものだと考えています。曲調等もゲーム制作陣から指定され、それに沿って制作します。
あくまでもゲーム本編がメインです。もちろんリテイク等もあるので、自分の考えが100%反映されない事も多々あります。
機能や容量の制約の影響ですが、当時はこの事が曲を作る際の最重要課題でした。この為にフレーズを変えたりした事もあったので、曲の表現には多大な影響を与えたと思います。

一方でソロ活動は音楽がメインで、自分発信なのが良いか悪いかは別としても比較的自由に制作する事が出来ます。創造性にもこの事がかなり影響しています。こちらの表現方法は生演奏が中心となります。
当時のゲーム音楽とソロ活動を比べた場合、前者は作曲家寄りで後者はプレイヤー寄りの考え方だと思います。

以上の事から制作方法の差は大きく創造性や表現に影響を与えていたと思います。相互の影響については、打ち込み中心の曲と生演奏が中心の曲で住み分けが出来ていたので無かったです。

Q2.

98年発表の『フォース・オブ・ライト*1』は、’95年の『ビヨンド ザ ビヨンド*2』’96年『シャイニング・ザ・ホーリィアーク*3』に続く3作目のアレンジサウンドトラックでした。
これらはサウンドトラックとしてだけでなく、独立したアルバムとしても高く評価されています。ゲームのための音楽がゲームをプレイしていない方々からも高く評価されたことは、その後の作曲に影響がありましたか?

*1 RPGシリーズ「シャイニング・フォース3」サウンドトラックの一部楽曲を差し替えた海外配給盤。’98年作。

*2 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)から発売されたキャメロット制作のプレイステーション用コンピュータRPG。’95年発売。

*3 セガ・エンタープライゼスから発売されたセガサターン用3DダンジョンRPG。’96年発売。

 アレンジサウンドトラックが独立したアルバムとしても高く評価されている事を大変嬉しく思います。
ゲームの補助としての曲をメインにする為に、私のキーボードサウンドや生演奏を盛り込んだ作品ですが、生演奏等もゲーム内で表現出来る現在、このスタイルが私の定番になっているので、多大な影響があったと思います。

Q3.

2000年代のはじめには『スターオーシャン ブルースフィア*1』や『黄金の太陽 開かれし封印*2』など携帯ゲーム機向け作品の音楽も多く手掛けられております。携帯ゲーム機向けの音楽では今までと異なるアプローチなどを意識されましたか?

*1 エニックス(現スクウェア・エニックス)が発売したゲームボーイ / ゲームボーイカラー用ゲームソフト。’01年発売。

*2 任天堂から発売されたキャメロット制作のゲームボーイアドバンス用ゲームソフト。’01年発売。

 当時の携帯ゲーム機は本当に表現の幅が狭くて、音色で聴かせるような曲は作れませんでした。その為、印象的なメロディーやリフで聴かせる事を意識しました。同時に使用できる音の数も3音か4音位なので、2声の和音、メロディー1声、リズム1声みたいな感じで、必然的に異なるアプローチを取らなくてはなりませんでした。

Q4.

近年、自身が担当されていないゲームの音楽や、その他の音楽を聴かれることはありますか?
もし印象に残った作品があれば教えてください。

 私は長年ゲーム音楽を制作しておりますが、実はゲームは一切プレイしません。
私が音楽を担当しているゲーム以外の事は全く分かりません。この仕事を始めた当時、ファミコンとパソコンの区別も分からなかった位でした。と言う訳で、全く他のゲーム音楽は聴きません。

他ジャンルの音楽も最近は聴く事が少なくなりました。聴いている時間が無いというのが正直な所ですが、時間が出来たら今持っている映画のサントラやジャズ、ロックのレコードを聴き直してみたいです。

Q5.

ソロ活動での次作の予定/構想はありますか?
また『ワッツ・アップ?*1』は全パート1人という究極のソロ・アルバムでしたが、こういった方向性の継続に興味がありますか?

*1 桜庭統のミニ・アルバム「アフター・オール」に新たな楽曲を加えたソロアルバム。’13年作。

 ソロ活動の次作は少しずつ作っています。ライブで演奏する事を前提にしたアルバムになる予定です。

全パート1人という制作方法のソロ・アルバムもまた作ってみたいと思っています。
ピアノやキーボードだけで構成されたアルバム等も作るかもしれません。

ーありがとうございました。


桜庭統 (さくらば もとい)
1965年8月5日生まれ。秋田県出身。作曲家、キーボード奏者。

フリーの作曲家となり、現在ではゲームメーカー (株)トライエースの「ヴァルキリープロファイル」シリーズ、「スターオーシャン」シリーズ、(株)キャメロットの「マリオゴルフ」や、 (株)ナムコの「テイルズ オブ」シリーズ、「バテンカイトス」シリーズなど、多数の楽曲を手がける。

≪Twitter≫

@MotoisakurabaM

インタビュアー:嶋田夏彦(CASSETRON)

≪Twitter≫

@cassetron


2023年7月19日に発売されたバンドデビュー作+初期ソロ作品3タイトルの中には新規ボーナストラックを追加収録、さらに桜庭自身による曲解説、制作背景が詰まったライナーも封入!

是非商品詳細は以下URLからチェックして頂きたい。


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