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【オブトロピーク対談連載】エキゾチカをめぐる冒険 #1 / オブトロピークの3人とトロピカル・ミュージックの行方。

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トロピカル・ファンク・バンドof Tropique (=オブトロピーク)が新たに制作中のフル・アルバムには、小林ムツミ (民謡クルセイダーズ / ムンビア・イ・スス・カンデロソス)、moe (民謡クルセイダーズ)、ワダマンボ (カセットコンロス)、長久保寛之 (エキゾチコ・デ・ラゴ)、ロッキン・エノッキー(ジャッキー&ザ・セドリックス)、八木橋恒治や、クマイルスの西岡ディドリー、和泉美紀、サムット野辺、さらにUSのニューウェイヴ・ラテンの旗手であるミラマールの全メンバーやチチャ・リブレのジョシュア・キャンプといった国際的かつ多彩なジャンルでいて、それぞれを代表するミュージシャン達が参加。既存のカテゴライズに抵抗するように、まるで極彩色のおもちゃ箱のような無国籍音楽を紡ぎ出している。

“トロピカル”であり”エキゾ”であり”モンド”。この音楽をどう形容すれば良いのだろう?

その答えを求めて、オブトロピークの近藤哲平とゲスト・ミュージシャンによる対談シリーズを連載としてお届けする。

記念すべき第一回目には、オブトロピークのメンバー3人が登場。四ツ谷の本格タイ料理バル「ラブエイジア」で、クラリネットの近藤哲平、ベースの田名網大介、ドラムスの藤田両に話を聞いた。

取材/構成:森崎昌太

◆Release Infromation◆

ARTIST:of Tropique (オブトロピーク)

TITLE:Fishcake and Fortune / Here Comes Andi

LABEL:Pepei Records

CAT No:PPR-004

FORMAT:7″ Vinyl

PRICE:¥2,750(Tax in)

●その”よくわからなさ”が、トロピカルでありエキゾチックだと思うんです。(近藤哲平)

—— 今回制作中のof Tropique(以下、オブトロ)のアルバムには、幅広いジャンルのゲストが参加しています。”トロピカル・ミュージック”という概念、ジャンルに当てはまるんじゃないかと個人的には思っています。例えばヨーロッパだと、この”トロピカル・ミュージック”というものは、きちんとしたシーンがあって、Sofrito(ソフリート)なんかが代表的ですが、DJやレーベルが中心となって数千人規模のパーティーを頻繁にやっていたりします。それも2000年代前後ぐらいから。

田名網大介

なるほど。

—— ただ、ここ日本で”トロピカル”というと、一般的には「南国とか熱帯の音楽」っていうイメージがすごく強いわけで、それはいかにして崩していけるのかな、と。今回のアルバムの参加者はとても多彩なので、関わる皆さんに話が聞けたらと思い企画させてもらいました。今回が記念すべき第一弾となり、オブトロの皆さんにお話を伺います。テーマは「トロピカル・ミュージックとはなんぞや?」です。

近藤哲平

今、わかりましたよ。何が”トロピカル”なのか?というと、それはオブトロピークなんですよ。

—— どうしてですか?

近藤哲平

“トロピカル”だと南国っぽいし、個人的には”エキゾチック”って言葉がしっくりくる。”異国”とはちょっと違った”違和感”のあるもの。自分の知らない世界とか、そういうものだと思う。そして、オブトロはメンバーみんなルーツとか、やってきたジャンルが違う。ラテンの人は1人もいない。そういう全然違う要素が集まって、”なんだかよくわからないもの”になった。その”よくわからなさ”が、トロピカルでありエキゾチックだと思うんですよ。だからオブトロピークはエキゾチック・バンド。あるいは、トロピカル・ミュージック・バンド。

田名網大介

全然ジャンルが違うメンバーが集まってやっているうちに、いろいろ混ざっているけれど、その中に”トロピカル”な要素もあったって感じもする。

近藤哲平

全然ジャンルが違う人たちが一緒にやる時も、何か目印みたいなものが必要だと思うんだけど、それがジャズなのかロックなのかで違う。ロックもすごく広いと思うけど。ロック・バンドでやるのと、ジャズ・バンドで始めるのとでは、同じメンバーでもアウトプットが違う。その”何か”をキーワードとして、”トロピカル”とかがあるのかなって僕たちの場合は思う。僕もこのバンドで曲を作ったりする時に、オブトロに合わないような曲はやらない。 例えばブルースっぽい曲とかはやらない。

田名網大介

そうだね。要所にはそういうエッセンスが入っているけど、全体を通しての雰囲気的なものは”トロピカル“になっていたりというか。みんな得意なことをやっても、このメンバーでやるとちょっとそういう風変わりなものにもなったりする。

—— それは3人という人数だからやりやすいとかもあるんですか。

田名網大介

たぶん。でも、このメンバーだからっていうのが大きいと思いますね。

近藤哲平

3人の特徴としてはコード楽器がないってこと。それはすごくフリーダム。音が2個しか出てない。そもそもコードが鳴らない。だから間違いがないんですよ。ミスっていうのは存在しないので。まあ、存在はするんだけどバレない。

田名網大介

顔に出さなきゃバレない。

近藤哲平

それはとても得意です。絶対顔に出さないから。

田名網大介

やっちゃったって顔しないよね。いきなり吹くのをやめて、お客さんのところに行ったりとかもするもん(笑)

—— みなさんはそれぞれ別のジャンルのところで活動されてたんですね。藤田さんはどのあたりでやられてたんですか?

藤田両

僕はいわゆる J-ROCKとかJ-POP。ボーカルが入ってるような。

近藤哲平

基本的にはオルタナティヴ・ロックみたいな感じだったよね?J-POPほどポップでもなかった気がする。J-POP っていうと独特のコード進行とかもあるし。

藤田両

そこまでわかりやすくはないけど、でも、ボーカルがいて、ギターがいて、ベースがいて。そんなにジャンル・ミュージックじゃない、歌がメインのバンドをずっと長いことやっていて。編成はその都度、アコギがメインだったり、エレキだったり、バイオリンが入っていたりとか、バンドによって違うんですけど。基本的には日本のライヴ・シーンでよく見る感じのバンドに長くいた。哲平さんと会ったのがきっかけで、急にこのボーカルなしの編成のバンドに入った。

—— 胡散臭いバンドに入ってしまったわけですね(笑)

田名網大介

藤田くんは哲平くんと会った時は何のバンドをやっていたの?

藤田両

パンパンの塔。哲平さんがいた宮腰理バンドとの対バンは池袋ADMのブッキングで。その時は楽屋でちょっと話して、その 1年半後ぐらいにメールで誘ってもらった。

近藤哲平

僕はずっと狙ってた。パンパンの塔はメチャクチャかっこよかったし。それでパンパンの塔が活動休止したタイミングで僕らがオブトロピークの最初のアルバムを制作していたんです。あ、今だなと思った。

—— それが2018年リリースの「La Palma」ですね。「La Palma」ではもう藤田さんが叩いているんですか?

近藤哲平

叩いてます。2曲か3曲だけだけど。全部録った後にがっつりドラム・セットではなくて、ちょっと加えるって感じで。

田名網大介

俺はその時、藤田くんに会ってないんだよね。

——「La Palma」では田名網さんはベースを弾いてなかったんですか?

田名網大介

あの時は半分ぐらい弾いていますね。

近藤哲平

藤田くんは最後にオーバー・ダブしたからみんなとは会ってないんですよ。最初に会ったのはどこ?高円寺HIGHの上のAMPcafe?

田名網大介

そう、高円寺。まだ編成がだいぶ大所帯のころですね。

藤田両

あの時が初めての対面。

—— そうなんですね。

近藤哲平

ダイちゃんも藤田くんもこんなに長い間やると思わなかったよね。

田名網大介

もともとは哲平くんがいたコロリダスっていうバンドと接点があったんですよ。

近藤哲平

最初会ったのは、もうなくなっちゃった代官山と渋谷の間にあったWEEKEND GARAGE TOKYOでのコロリダスとカセットコンロスの対バン(2016年)。でも、その前から知ってはいたね。

田名網大介

そのライヴのあとに哲平くんが元住吉のPOWERS 2でやってたカセットコンロスを見に来てくれたんです。帰り際に「今、ちょっとアルバム作ってるからベース弾きに来てよ」みたいな、すっごい軽いノリで誘われて(笑)。「スタジオちょっと入ろうよ、ちょっと一緒に遊ぼうよ」ぐらいな感じで。「じゃあ俺で良かったら行くよ」ってなってから今に至りますね。

近藤哲平

その話だとなんか詐欺してるみたいだな(笑)

——2018年に高円寺AMPcafeでの「La Palma」のレコ発を見に行って、すごいバンドがいるな、と思って。でも気づいたら3人になっていましたね(笑)。当時は何が起こったんだろうと思いました。

近藤哲平

7、8人いたのが3人ってやばいですよね (笑)。単純に東京からいなくなった人がいるんですよ。

●”この編成でしかできないこと”みたいなのを、ちょっとずつ徐々につかんでいく。(田名網大介)

—— なるほど。現実的な問題があったわけですね。それで、2018年に「La Palma」が出て、その後、2021年にElectric Cowbell Recordsから7インチ「Wooo / Zoro」がリリースされます。USのレーベルからのリリースですが、どういう経緯だったのか覚えてますか?

近藤哲平

僕が普通に音源を送ったんですよ。たしか10個くらいの海外レーベルに送って、最初に返事が来たのがElectric Cowbellでした。ちなみにすぐあとでNames You Can Trust(以下、NYCT) からも返事が来たんですが、レーベル同士が友達でNYCTがElectric〜のプレスとかいろいろ手伝ってるという関係だったので、NYCTにも協力してもう体制でElectric 〜から出すことになりました。で、「Wooo / Zoro」がよく売れたんで、続けてアルバムも出すことになったんですよ。それが2023年の「Buster Goes West」。そしたらアルバムも評判良かったんで、次のローランド・ブルーノとのスプリットも出すことになりました。

—— なるほど。レコーディング自体はもっと前ですか?

田名網大介

発売が2021年ですよね。

近藤哲平

コロナ禍。でも、そこの前後関係はもしかしたらわからないかも。出すまでけっこう空いちゃってて、録ってからレーベルに送ったりして作業してるから、もしかしたら録ったのはコロナ前かもしれないです。ちょっと覚えてない。

—— これはもう3人で録ったんですか?

近藤哲平

その時はまだ八木橋恒治さんがギターを弾いてますね。

田名網大介

しみずけんたくん(コロリダス)も一緒に録ってますね、これは。けんたくんが、クラリネットをダブルにしたらどう?とか、そういうアイディアを出していて、この曲の中心部分ができたイメージがある。

近藤哲平

「Zoro」の半分はけんたくんの作曲。AとBのコード進行、Aメロがけんたくん。このレコーディングの後、八木橋さんが東京から兵庫に引っ越してしまった。コロナもあって。コード楽器の八木橋さんが引っ越しちゃって、しばらく代わりのギターも探したんです。

田名網大介

そうだったね。

近藤哲平

ゲストにいろんなギタリストを呼んでライヴやったりしたんだけど、バンドで動くとなると相手の都合もあるし、要は八木橋さんの存在がでかかった。彼はとても面白いから。そんな状態が続いている中で、もう3人じゃ厳しい、コード楽器ないから厳しいかな、と思っていて。でも、試しに吉祥寺バオバブで一回3人でやってみたら、それがとても良くてそのままやっています。もしまだ7、8人いたら、もっとわかりやすいトロピカル・バンドになっていたかもしれないですね。

—— メンバーが多かったら、逆に専門性が出過ぎちゃう気もしますね。今の編成だからどこにでもいけるというか、何でもできるというか。

近藤哲平

オブトロには最初から1人もラテンとかトロピカル感のある人はいないですからね。強いて言うなら、ダイちゃんがカセットコンロスやっているぐらい?ムーちゃん(パーカッショニストの小林ムツミ)は例外だけど。

—— そう考えるとまさに”エキゾチック”ですよね。専門性のない人たちがあれこれ想像して、なりきって”トロピカル・ミュージック“を演奏する。

田名網大介

やっぱりトリオは面白いっていうのはあるよね。補うというか、ないものはないもので諦めるけど。”この編成でしかできないこと”みたいなのを、ライヴとか場数踏んでいくとちょっとずつ、徐々につかんでいく。

近藤哲平

ライヴの場数は踏んだからね。足りない方が面白い。毎回できたらつまらないし飽きてしまう。

藤田両

でも、いきなりこの3人で始めても、今の形にはならなさそうだなとは思う。

田名網大介

ああ、それは確かに。

藤田両

最初の大所帯でやっていた時のイメージが残っていて、それを補ってやっているのが今の感じなんじゃないかなと。

田名網大介

なるほど。それは言えてるね。現に8人の時に録った曲もライヴでやるしね。

近藤哲平

でも、やっぱりコード進行で聴かせる曲には限界があるから、そういうのはだんだん淘汰されてやらなくはなってますね(笑)。あと、3人だとやっぱりライヴが重要。その場で何をやっても大丈夫だから。いっぱい人がいたらソロを回して、もう一人コード楽器がいたら、ベースとそのコード楽器も合わせなきゃいけない。アレンジもあったり、抜き差しもあるけど、3人だったらその場で誰が何をやっても大丈夫。フリーダムなんですよ。

—— それはオブトロピークというバンドを語る上で重要なことかもしれないですね。”足りない”からこそ、今の音楽になっている。

近藤哲平

昨年の台湾でのツアーの時、ジャズの出演者が多いVinyl Decisionとか高雄にあるジャズのお店とかに呼ばれたんです。音楽的には僕らは自分らを全然ジャズじゃないと思っていて。だけど、Vinyl Decisionで演奏した時にお客さんから「ジャズだな」って言われた。なんで?って思ったけど「インプロバイズしてるから」と。インプロバイズはしてる。歌モノだと現実的にはそれはできない。歌というか、歌詞があると。

田名網大介

こう言っちゃなんだけど、フォー・ビートもやってないし、スウィングもしてないって言われたこともあるけどね(笑)

近藤哲平

ゼロに近い。僕も管楽器だけどツーファイブ・フレーズは全く吹かない。

田名網大介

ソウル系の歌モノ寄りとか言われれば、コードがいい曲とかはわりとそういう進行なんだけども。ジャズって言われると、なんでだろう?って思っちゃうよね。

近藤哲平

そうなんだよ。インプロバイズはしてる。あとインストって時点でジャズにカテゴライズされることが多いですね。海外でも日本でも。やってる音楽的なボキャブラリー、リズムとか、あとはコード進行とか、メロディーとかは、ゼロに近いぐらいまったくジャズはやってないと思う。だから僕らはある意味「ジャズとは何か?」っていう問題定義もしてるわけですよね(笑)。 商業ジャズ・ワールドにおいて。ジャズとは何か?と。

●結局、自分の頭の中にない音楽を聴くのがすごく楽しい。新しいものを聴いて驚いたりとか。(近藤哲平)

——まだこのインタビュー時点はデモ音源ですが、今作のアルバムを何度も聴いてると、哲平さんの作る曲には一つの世界観がずっとあると思うんですよ。それを的確に表現できる言葉がないだけで。だから、もうそれを一つのムーブメントじゃないですけど、”オブトロピーク“っていうジャンルにするしかないのかなって感じはしますけどね。

近藤哲平

ちょうど今回ゲストがいっぱいいるから、そういう”シーン”のようなものがあるんだぞ、という、そんな”でっちあげ”感を出してくのはいいですよね。実際、参加してくれている人の、それぞれのバンドとか全部僕は好きだから。だから、よくわからないけどなんか面白そうなシーンがあるぞ、みたいなね。ニューウェイヴ的な、あるいはヌーベル・バーグ的なインディーズ・シーンが実は東京にあるんだぞ、と。

田名網大介

でも今回のアルバムはけっこうエキゾチックな感じの、まあ全部じゃないけど、まとめるとけっこう分かりやすい感じじゃない?

近藤哲平

僕はわりとロックかなと思ってる。

田名網大介

ロックでもあるね。ロックなのはこれまでのどのアルバムもそうなんだけど。

—— ガレージ感もありますよね。

近藤哲平

最初は50年代とか60年代のガレージ・バンドに意味なくボンゴとかギロがいるような、そういう謎のノベルティ感があるやつをやりたかったんだけど、できてみたら全然違ってた。そんな曲はほぼないですね(笑)あとは本当にそのゲストのプレイにだいぶ委ねてる。そこで変わる。全然指示とかしてないんです。僕がゲストを呼んだけど、僕自身もどんなプレイをしてくれるのか楽しみなんですよ。

—— なるほど。

近藤哲平

そこでよくわからない、僕が想像もしなかったものが出てくるのを期待してやっている。それがやっぱりこの”トロピカル感”なんですよ。行ったことのない島に行く、行ったことのない場所の音楽を聴く、みたいな。結局、自分の頭の中にない音楽を聴くのがすごく楽しい。新しいものを聴いて驚いたりとか。”トロピカル”とか”エキゾチック”とかもたぶんそう。行ったことない国を想像してやる、みたいなね。

—— それが良い意味で“胡散臭く”なっていていいですよね。 オブトロは。

近藤哲平

ライヴとかでもいつもと全然違うこととかやるけど、想像してたことと違うことをやりたいからなんですよね。

—— そういうライヴをやることに対しては2人はどうなんですか?

田名網大介

あ、ぶっこんできたな、とか、クセがすごいな!とかは思いますね(笑)。もう合わせられるとかじゃないから。だって合わせないんだもん哲平くん。合わせないつもりできてる(笑)。藤田くんはもう慣れてるけど。淡々とステイするところはステイして、ガッていくところはガッといく。要所を押さえてる。

近藤哲平

オブトロピークに限らず、とにかくメンバーに失敗させたい、ミスをさせたいんですよ、常に。コロリダスの時からずっとやっている。

田名網大介

それいつから?いつからその感情生まれたの?(笑)

近藤哲平

分かんない(笑)

——イレギュラーなことをやってみて、反応を見たいってことですか?

近藤哲平

いや、自分も間違えたい。自分もよくわかんないところで。もちろん音源とかと同じことをやることはできるし、それはそれで楽しいんですけどね。

藤田両

イレギュラーなのも面白いんですよね。哲平さんは、たまに突拍子もないことをガッてやったりして、僕は普段、それに合わせていて、基本的にイレギュラーなことはしてない。だけど、この間の台湾で「ちょっとドラムからいったれ!」と思って、ガッと全然違うことやってみたんですよ。そうするとスリー・ピースだから、最初2人ともびっくりするんだけど、けっこうスッと合うんですよ。そこから新しい感じを出してくれて。それで、いつもライヴでやってることと違うものができる。だから、大きく脱線するっていうのがけっこう面白いものっていうのはあるのかもしれない。

——それがいいグルーヴになる?

藤田両

そう。大人数だとできないけど、2人がスっとそこに合わせられるので。練習から決めてやってるとあんまり面白くない。たぶんそういう狙いもあるのかな、と。違います?

近藤哲平

藤田くんは意外と言語化が上手い(笑)。大阪のCorner Stone Barでやった時、”Aller Marrons”って曲をドラム始まりでやったら、藤田くんが倍速ぐらいで始めて(笑)。最初、これ全く違う曲やってんじゃないかと思った。でもダイちゃんも始めちゃってそのままやったんだけど、僕は速すぎて指が追いつかなかった。でも、それが面白い。

田名網大介

ただでさえ吹くの大変なんでしょ?あのフレーズ。

近藤哲平

まあいいんだよ、それで。家で一人でやっていてもそれはできないから。違う環境に置かれた時にでるものだから。僕は人とやるの好きなんですけど、自分が普段やらないプレーができる。この曲は最近、メンバーの中で”今日のアレマロン”って呼んでいて、さあ、今日はどんな感じでやる?みたいなことになってきている。

田名網大介

「La Palma」に入っている最初の頃の曲。誰から始める?という探り合いみたいな。で、いきなり誰かが始める(笑)。今はちょっとそんな感じになってきてるよね、あの曲。

近藤哲平

面白いんですよ。歌モノとかやってたらそこまで劇的にその場で変わることはない。構成とか、リズムとか事前にあると思うけど。ドラムとかは楽器的にも、どちらかというと、いわゆるバックになったりするような楽器だから、やっぱり勝手に変えるっていうのは歌モノとかボーカルがいたらあまりできないと思う。特に藤田くんは歌モノやってたから。どうですか。

藤田両

歌モノだとやっぱできないですね。急にドラムが変なテンポで始まったり、それが成立できて面白いことになっちゃう編成というか、この2人だからっていうのはあると思います。

近藤哲平

3人でライヴをやるようになってから、2、3年やってるけど、まだメンバーとして2人ともいるっていうことは、そういうのに少なくとも楽しさがあるからなんじゃないかと思います。

—— 今回は3月25日に7インチの先行シングルが出て、5月にアルバムが出ますが、それ以降の展望みたいな話とかはありますか?

田名網大介

アルバムを出して、やっぱりツアーですかね。まずはツアーをして。何ヶ所か回りたい。オブトロのツアーは去年初だったよね?

近藤哲平

初だった。大阪、和歌山と台湾。

田名網大介

ツアーとかできてなかったですからね、全然。都内のみ。去年初めて行けて、それが楽しくて。また今年もリリースしたら回りたいね、なんて話していて。今のところ、名古屋と大阪と静岡が決まっている。

近藤哲平

アルバムのリリース前だけど、4月にね。

——先行シングルの7インチについてもお聞きします。「Fishcake and Fortune」と「Here Comes Andi」ですが、この曲はいつ頃できてたんですか?ライヴではけっこうやってますか?

近藤哲平

どちらも古い曲ですね。“Fishcake~”は一度もライヴでやったことはないんです。“Andi”が元々あったんですよ。いつだかのライヴに、カセットコンロスのアンディさん(アンドウケンジロウ)が遊びに来るっていうのを当日に聞いたんです。じゃあ一緒に何かやろうって思って。オブトロの曲はけっこうキメとかあるから、一緒にできる簡単な曲があったらいいなって思って、当日ライヴ前にスタジオ入ってワン・コードで作った曲です。

——驚きですね。かっこいい曲なのにそんな簡単にできたとは。アンディさんとだから“Here Comes Andi”なんですね。アンディさんがサックス吹いてるんですか?

近藤哲平

吹いてはいないですね。ブッカー・T&ザ・MG’sの”GREEN ONIONS”だって、スタジオ録音の合間に作って出したわけですから。

藤田両

土台はすごく簡単に作ったけど、ライヴで成長した曲ですね。

——なるほど。ライヴで膨らんでいったってことですね。

田名網大介

そう。最初のテーマみたいなフレーズはあったけど、そこから広がったよね。

近藤哲平

うまくね。だからスタジオに籠もって作った曲というわけではないです。

田名網大介

去年のツアーの帰りに哲平くんが車の中で“Here Comes Andi”をかけて、これ意外によくない?ってなって。もうみんな存在すら覚えてなかったんですよ。

近藤哲平

たぶんアルバム(Buster Goes West)を出して、その後どうしようかってところで7インチを録ることになった。録音してミックスしてるわけだから、なにか目的があったはずなんです。神戸に行って八木橋さんのギターを録ってる。だから2曲をパッケージにしてシングルを出すことにしたんだと思います。シングルっぽいキャッチーな曲を作ろうと思って”Fishcake and Fortune”を作ったんです。ノベルティー・ソングっぽいものを作ろうと。それに何か既存曲をくっつけようと思って”Here Comes Andi”をピックアップしたんだと思います。”Andi”は最終的に馬の声を重ねているし。

田名網大介

それがまたいいよね。今年、馬年だし。

近藤哲平

それは今まで気づかなかった。

田名網大介

え、そうなの?

藤田両

いや、あれだいぶ前だよね、馬の声入れてるの。

近藤哲平

だいぶ前に入れてる。今、言われて気づいた。それいいじゃん。使おう(笑)

——それ逆算してたらむしろ怖いですね。

近藤哲平

いや、逆算したんですよ。馬年に出そうと。俺たちやっぱ馬だから。
馬のように、これから駆け上がる。ペガサスのように。

田名網大介

変わっちゃってんじゃん。馬じゃないし、ペガサス。

——昔に録った曲が 7インチになるにあたってどうですか?

田名網大介

さっきも言ったけど改めて聴いた時にすごくいいなと思って。フレッシュな感じで。

近藤哲平

“Fishcake~”がノベルティっぽいから、”Andi”がそのままだとちょっとごついなと思って、馬のムチの音とかを重ねてノベルティ感を出したんですけど、あの馬のムチにも由来があるんですよ。

田名網大介

ムチの音に?

近藤哲平

ムチの音のリファレンスがあって。ロイ・ヘッド&ザ・トレイツの”Treat Her Right”。それの馬のムチ。シングル盤の方かな。最初のやつに入ってる。すごく好きなんです。

田名網大介

ブルース・ブラザーズの“Theme From Rawhide”じゃないんだ。

近藤哲平

それもちょっとある。

——そうやって全部種明かししちゃうと、受け手は面白くなくなる部分もあるかもしれないですよ(笑)

近藤哲平

僕は種明かしたくてしょうがないんです。明け透けてる。単純に「これが好きだからみんな聴いて」っていうことをやってるだけですから。「ロイ・ヘッド最高だからみんな聴いて」って。今回のアルバムでたくさんゲストを呼んでいるのも、この人たちをみんなに聴かせたいから呼んでいるんですよ。

——なるほど。

近藤哲平

僕は元々、トロピカル音楽はライ・クーダーを聴いて、そこに入っているミュージシャンとか、テックス・メックスだったらテックス・メックスをたどるとか、ハワイアンがあったらそれを聴くとか、そういう聴き方をしてきたから。

田名網大介

わかる。

近藤哲平

あと、僕がすごく影響を受けた、サックスを始めたきっかけのアルバムが2枚あって、そのうちの1枚がジョン・ゾーン。トロンボーンのジョージ・ルイスと、ギターのビル・フリーセルと3人でビバップ、ハードパップの曲をカバーしている作品があるんですよ。(NEWS FOR LULU / 1987年)

近藤哲平

全編カバーなんですが、この曲は誰々の曲で、特にこの録音がいいっていうのがこのアルバムのライナーに全部書いてある。それに僕はすごく感銘を受けた。そんなメジャーじゃないけど、でも良い曲をピックアップして、そのリファレンスを書いている。その曲のことを伝えたい、というメッセージを僕はすごく感じたんですよ。それに感銘を受けている。だから、オブトロピークを聴いて、いいなと思った人は、参加した人たちも聴いてほしいし、僕がリファレンスしたロイ・ヘッドを聴いてほしい。とにかく僕のプレイとか演奏は、まあどうでもいいっていうのは言い過ぎだけど、そんなに重要ではなく、僕がいいと思った音楽を、僕をきっかけで聴いてくれる人がいたら嬉しいなっていうモチベーションが高いんですよね。

——なるほど。リファレンスを人に開示したい?

近藤哲平

いい音楽をみんなに聴いてほしい。それだけですね。そのためにやってる。

田名網大介

それはアツいね。

近藤哲平

ちょっとかっこいいでしょ?でも本当だよ。これだけ素晴らしいミュージシャンがいっぱいいて、その人たちのおかげでやれてるからね。

——なんだか普段の哲平さんらしくないことを言ってますね(笑)

田名網大介

これであれでしょ?金払わなくても今日はここから帰れる(笑)

近藤哲平

いい話したから。この話、高いんですよ(笑)


●PROFILE

of Tropique (オブトロピーク)

近藤哲平(clarinet)、田名網大介(bass)、藤田両(drums)

クラリネット、ベース、ドラムの3人によるエキゾチック・ファンク・バンド。
2018年にイラストレーターのオタニじゅんと制作したアートブック『La Palma』(オークラ出版)を発表。架空の南の島での冒険を描いた楽曲群がヨーロッパで話題となり、フランスでは2つのラジオ局で同時に特集が組まれた。
2021年より米ワシントンD.C.のElectric Cowbell Recordsから作品のリリースを続け、これまでにアメリカのみならずフランス、ドイツ、イタリア、クロアチアなど欧米各国のラジオ局で楽曲がオンエアされている。2023年のアルバム 『Buster Goes West』(Electric Cowbell Records)は複数の海外メディアで年間ベストにランクインし、Bandcampにインタビューと特集記事が掲載された。また、AppleやGimletをはじめ複数の欧米企業で楽曲が使用されている。
国内では映像作品への参加も多く、東海林毅、冨永昌敬監督作品の音楽やアパレルブランド等への楽曲提供を行う他、『彼女のウラ世界』『僕の手を売ります』などTVドラマの音楽も担当している。
2025年にはアルゼンチンの人気ミュージシャンRolando Brunoとのスプリット・シングル(Electric Cowbell Records)を発表した。

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