1st Album『all ok』から約2年。出産を経て母となったぎがもえかの新章幕開けを記念して、OTOTSU独占でエッセイ連載がスタート。彼女のあたたかさと芯の強さを感じる日々の様子を、ゆったりとお楽しみいただきたい。
文:ぎがもえか
編集:清水千聖 (OTOTSU編集部)
自動車免許を取得するために、教習所へ通っている。
10月から通い始め、仕事と育児の合間にこまめに通うスケジュール。子どものお世話をするため夜の授業は入れられず、日中が中心なのだが、きちんと通えば12月には卒業する予定である。
なにを隠そう、取ろうとしている免許はマニュアルなのである。
教官にたびたび聞かれる。「マニュアルの車に乗る予定があるんですか?」わたしは即答する。「間違えたんです」。泣
マニュアルとオートマの違いをよく分かっておらず、夫に「どっち持ってるー?」と聞いたところ、「マニュアルだよ。マニュアルを持っていれば、マニュアルの車もオートマの車も乗れるよ!」と教えてくれた。となると、せっかくお金をかけて取るならばマニュアルのほうがお得なのかも?と、深く考えずにマニュアルを選んだ。
そのあと周りに「教習所通ってて…マニュアルで…」と話すと、「マニュアル?難しいのに⁈乗るの?マニュアルの車ほとんどないのに…?」と驚かれる。こちらこそ驚く。そうだったのか…。きちんと調べればよかった。
いざ通い始め、実車での教習を受ける。クラッチペダルの微調整が難しくて、エンスト。エンジンかけ直して、クラッチペダルを勢いよく離して即エンスト。ディズニーシーのアトラクションのインディ・ジョーンズのごとく揺れ続けるわたしの車。
ハンドルを切るのも勢いがありすぎるようで、「それはね大山さん、ゲームセンターのハンドルの回し方だから!」と注意される。その後も「はい、ゲームセンター」「はいはい、ゲームセンターになってる」と注意され、しまいにはため息をつく教官。自分でも酔っているぐらいだから、助手席はストレスが凄いだろうに、申し訳ない。この人なんでマニュアル取ろうとしてるんだろう…と思われた上での、最初の質問「マニュアルの車に乗る予定があるんですか?」が出てくるのだろう。
1発で合格した夫は、普段から所作が落ち着いていて丁寧な人だから向いていたのだろう。もしくはゲームセンターで車のゲームをしたことがないかのどちらかだ。
すっかり自信をなくし、夜中には車を壁にぶつける夢を見て、ハッと目を覚ます始末。夫に「車を事故る夢を見たんだよー怖いよー」と泣きつくも、いやいやこの人はマニュアルを取った人だからこんなに平和な顔ですやすや寝ているんだ…と、すっかり頭が覚める。
もし無事に免許が取れたら、教習所が終わったら、もう車は運転したくない。
ただ、「免許持ってる?」と聞かれたときには、「あぁ、マニュアルを一応ね」と、格好よく答えたいのである。

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目次
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RELEASE INFORMATION

ARTIST PROFILE

幼少よりクラシックピアノを弾いたのちに、ガットギター弾き語りを主なスタイルとし、シンガーソングライターとしての活動を始める。2019年にEP『メイクアップ』(自主制作)、2021年に配信シングル『敵わない』(LD&K)等の楽曲を発表する。2023年より夫であり鍵盤奏者の大山りょうと、音楽レーベル「八百万」(YAOYOROZU)を始動。その他、CM歌唱やコーラスワークにも積極的に取り組む。
【Official SNS】
Instagram https://www.instagram.com/moekagiga @moekagiga

