毎週水曜日 27時に放送、BAYFM 『78 musi-curate』の選曲を担当するdisk unionのプレイリスト番組。DJ/NEW WAVE伝道師のmoe the anvilによる選曲と、ピックアップした楽曲解説コラム「DIVE INTO NEW WAVE OTOTSU EDITION #4」をアップ。
O.Aリンク
78 musi-curate Hour.1 | bayfm78
2023/03/15/水 27:00-28:00
https://radiko.jp/share/?sid=BAYFM78&t=20230316030000
【DIVE INTO NEW WAVE OTOTSU EDITION #4】
『デペッシュ・モード:破壊と再生の音楽』
DJ/音楽コラムニスト、平成生まれの70’s & 80’s NEW WAVE伝道師moe the anvil(モエ・ジ・アンヴィル)です。
bayfm『78 musi-curate』diskunionゾーンでは月1回、今みんなに聴いてほしいNEW WAVEアーティストにちなんだ色んなことを語っています。連動したこちらのコラムでは、放送後記やこぼれ話、プレイリスト楽曲解説などを気まぐれにお届け。
今回の放送では3月24日にニューアルバム『メメント・モリ』をリリースするデペッシュ・モードを特集。
「死」をテーマにした本作の構想は、昨年5月に創設メンバーのアンディ・フレッチャーが急逝する前からあったようだが、どうしてもアンディの面影を重ねずにいられないこのタイミングでのリリースとなると、DMの辿ってきた苦節や変遷ともなんだかリンクしてしまうし、やはり畏怖の念を感じてしまうところではないだろうか。
それは90年代に『ヴァイオレータ―』のヒットで本格的に全米で成功した後、状況の変化に対応しきれなくなったメンバー各々が数々のトラブルに見舞われ、脱退騒動から薬物・アルコール依存、逮捕や自殺未遂と、まさにドン底だった90年代後半の事件を思い出すファンが多いかもしれない。しかしこうやって何度となく「破壊」されたあとに必ず生き返る、しかもよりパワーを増して完全に生まれ変わってくる、というのがDMのキャリアの壮絶なところだったりするのである。
まさに選ばれし大御所バンドたる所以。80年代のニューウェーヴやエレポップの界隈で言ったら、ここまでの大成功を収めたバンドは間違いなく他にいない。
こうしたDMの奇妙な苦節の道は、最初期から既に用意されていたのが面白い。
デビューアルバム『Speak & Spell』ではDM創設者のヴィンス・クラークがほぼ全曲を作曲していて、彼の作風は「のほほんとしたエレポップ」が特徴なので、ちょっとかわいいアイドル的な感じでシーンに登場した。
このヴィンス・クラークという奇才はかなりブッ飛んでいて個人的にもかなり好きなコンポーザーなのだが、度重なるプロモーション活動がイヤすぎて一年ほどで脱退してしまった(彼の人間嫌いエピソードは多数)。その後はすぐに、女性ソウルシンガーのアリソン・モイエとエレポップ・ユニットYAZOOを結成し、DM以上のセールスを記録、やっぱり天才ぶりを見せつけていたのだが、この結成時もソウル・ミュージックができると思い込んでいたアリソンを半分だますような形で無理やりエレポップを始めたらしく、渋々活動を共にしていたアリソンだが、ここでもやっぱりヴィンスの奇人ぶりに付き合うのがイヤになってYAZOOは2年ほどで解散する。しかしこの短期間にもかかわらず、いまだにサンプリングに使われたりと後世に影響を残しまくったYAZOOの魅力は、ピコピコサウンドに本気のソウルシンガーを無理やりコンボさせるという目新しさにあったことは間違いない。やっぱりすごいヴィンス。そして現在の彼は世界中のゲイたちの間で絶大の人気を誇るユニット、イレイジャーで今なお第一線にいることはご存知の通り。
話はDMに戻し、こんな感じで天才(奇人)コンポーザーをデビュー翌年に失ったDMは解散の危機に瀕するが、ここでマーティン・ゴアの才能が開花。人間の脳は半分失ったらもう半分がそれを補うかのように変態し驚くべき進化を遂げるというが、まさにそんな感じにDMは、マーティンの手により現在まで続くインダストリアル・ポップ、ゴスの帝王としての基盤を築くこととなった。気難しいヴィンスが脱退せずに、のほほんとしたエレポップでアイドル活動を続けていたら、DMがここまでの影響力を持つことは確実になかっただろうと思っている。DMはインダストリアルのご先祖様として、そしてヴィンスはYAZOO、そしてゲイのアンセム、イレイジャーで、各々がそれぞれの道で完全にオリジネーターとなったのである。
いま、DMはまた一つ大きな喪失を経験したが、それでも解散を心配する世間をよそに、また新しい「再生」の歴史を作ろうとしている。それが新作にどう表れてくれるか。これまでもいい意味で期待を裏切り成長を重ねてくれたように、これからのDMにもますます期待。そして世界中のファンが末永い活動を祈っている。
moe the anvil
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10代から70・80年代Punk/New Wave/ニューロマンティックに傾倒したことをきっかけに2017年よりDJキャリアをスタート。 J-WAVE番組イベントへの出演等を経た後、2018年からはディスコミュージックを中心にプレイ、アンダーグラウンドシーンにおいても、大貫憲章、松田高志、DJ MIKU、牧野雅己といった元新宿ツバキハウスDJとの共演などを重ね、プレイスタイルに磨きをかけていった。その傍ら、延長に派生したと解釈するIndie Dance / Dark Disco / Leftfield等をプレイ。 現在、都内唯一のNew Wave イベントである”New Wave Lounge”を主宰、主要クラブや野外ダンスパーティーGLOBAL ARK等へ出演するほか、活動はフロアでのプレイに留まらず、ラジオ番組レギュラー出演・音楽コラム執筆を通し、平成生まれの後追い世代ならではの多角的なアプローチ、ノスタルジックな雰囲気を残したセレクトで、幅広い世代に今昔のNew Waveサウンドを伝道する。
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