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SUPER GENTLE 渡邊玲子インタビュー

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SUPER GENTLEセカンドアルバム『Dancing Baby』が2023年3月22日にリリースされた。ジャケットに記された「High Energy RockʼnʼRoll」の言葉そのままに、躍動する生命体としての SUPER GENTLEは時代を超えて日本からマッドチェスター・ムーヴメントへの真の回答を僕達に手渡してくれる。 今回はそんなSUPER GENTLEからギターボーカルの玲子を迎えてインタビューを敢行!

インタビュー/編集:池田敦也(TOKYO TOWN SHALALA)
監修:渡邊文武(PTA)

最初は、メンバーと上手くやるってことに頭がいってたんです。

ーこのアルバム、ある部分においてはセカンドサマーオブラヴやマッドチェスターへの真の日本の音楽としての解答だと思っています。アルバム作りにおいて意識はしましたか?
玲子 いえ、マッドチェスターってなんですか?

ー例えば、玲子さんのギタープレイ1つとってもハッピーマンデーズの匂いを色濃く感じてて。ということは今回のサウンドメイクでは特にそのあたりは意識していなかったという感じですか?
玲子 あ、ハッピーマンデーズはわかります、そのあたりでいうとニューオーダーを最近良く聴きますね。ニューオーダーには日本の歌謡曲的なメロディとサウンドを感じます。
…元々私、歌謡曲から音楽に入ったんです。小学校6年生の時にCHAGE and ASKAが凄く好きで、その後にハマったのが工藤静香でした。今回のアルバムはなんとなく歌謡曲とか、J-POPっていうのが自分の中にあって。それとニューオーダーが結果的にミックスされたという感じですかね。

SUPER GENTLE / 神様 in da house (Divine in da house) (Official Music Video)

ー前作『NEW』では英語詞の曲もありましたが、今回は全部日本語で歌詞が書かれていますね。 個人的に、今回のアルバムはかなりコンセプチュアルというか、示唆に富んでいると思っているんです。一つ一つ聞いて行きたいのですが、まず前半、M-1とM-3という早いペースで「砂漠」というワードが出てきます。
玲子 「頭の中砂漠」っていうのは「頭の中お花畑」の反対語っていうのを思いついたんですよ。「頭の中砂漠」よりマシやろって。それを思いついてから歌詞に使いたくて。それから、砂漠ってなんか中森明菜の曲(※SAND BEIGE -砂漠へ-)とか、エキゾチックなイメージが80年代の歌謡曲っぽい雰囲気があるなあと思って。それから稲垣足穂の「黄漠奇聞」を読んでいて、その影響もあるかも。

ちなみに、歌詞において好きなワードってありますか?
玲子 雨とか涙とか濡れるとか、「水」が一貫したテーマですね。SUPER GENTLEもテツコも。

ーM-9「Paradise 2022」の最後に静かな水音が聴こえます。これが冒頭の「砂漠」というワードとの対比が非常に効いているなと思いました。砂漠は「水がない」状態であるとも言えますね。個人的な解釈ですが、M-7「Dancing Reprise」から前の曲と後半の曲でこのアルバムは大きくバンドのムードが異なっている気がして。
玲子 SUPER GENTLEはまだ結成して2年くらいなんです。だからアルバムというよりは1曲ずつ大事に作っていて、その積み重ねでちょっとずつ出来ていく感じなので、あまりそこの意識はしていなかったんですが、後半の曲は…えっと、最初は、メンバーと上手くやるってことに頭がいってたんです。

SUPER GENTLEのメンバー達は手練れが揃っています。
玲子
 そう、スタジオも緊張するんです、実は。スタジオでの練習もライブみたいな気持ちになってます、私は。だけど、バンドっていうより、私の個人的なこと、思い、考えてることをもっと出そうと思って。それが足りないんじゃないかって気づいたんです。後半の曲は、それが良く出ているなって思います。

SUPER GENTLE / うみのうた -Seaside Song- (Official Music Video)

以前、玲子さんの「自分はその場の空気が乱れるのが好き」というツイートを拝見したのが ずっと頭の片隅に残っていて、SUPER GENTLE『Dancing Baby』は紛れもなく、フロントマン玲子の中に渦巻いている居心地の悪さ、天邪鬼的な衝動がSUPER GENTLEとして完成する過程のドキュメンタリーだと思うんですよね。
玲子
 今の話はとても腑に落ちました。筋道だった歌詞ってあんまり興味ないんですよね。良いこと言うとか、立派なことを言うんじゃなくて、歌ってる人の私生活だったり、その人の思ってることを盗み聞きしちゃった、みたいな雰囲気を味わいたいタイプなんです。そういう歌詞を書けたつもりです。あとは、M-6「うみのうた」はキーボードの大山りょうくんの作詞作曲ですね。

そうだったんですか! アルバムの中でも「回帰線を越える」という印象的な一節から始まるこの曲は「Dancing Reprise」直前のターニングポイントになっている気がします。
玲子 「うみのうた」は下北沢THREEでりょうくんの初の弾き語りを観ていて、良い曲だからSUPER GENTLEでやらない?って聞いたら、良いですよって言ってくれた、そんな曲です。ターニングポイントというのは意識はしていませんでしたが、もしかしたら無意識で共有されているものがあるかもしれません。

無意識の共有。
玲子
 私、頭で考えてやったことってちょっと知れてるなって思ってるんです。曲作る時も、夢の中で鳴ってた曲だったり、寝ぼけて作ったり。起きている時に真面目に考えて出来ることって範囲が知れてるから、よくわかんないもの出来ちゃった、っていう方がなにか大きな意味を含んでるんじゃないかなって。だから、ドキュメンタリーというのは、確かにそうかも知れません。わざとじゃなさを、わざとやる。そこをみんなわかってくれてるのかも。

小田島さんがSUPER GENTLEに対してそういうイメージを持って くれたんだなってとても嬉しかった…

今回、是非聞きたいと思っていたのは、ジャケットの絵を描かれた内山亜紀先生との関係です。内山先生は80年代初頭に『あんどろトリオ』を代表とする美少女漫画を書いた第一人者で、特に『あんどろトリオ』なんかは、もう女の子のパンツがどうとかオムツがどうとか、いわゆる「ハチャハチャ」な内容にも関わらず、その1ページ1ページの絵の完成度の高さ、デザイナー出身を生かした芸術的な絵柄に近年再評価が集まっています。こちらをジャケットに選んだ理由はなんでしょうか?
玲子
 実は今回のアルバムを作るまで内山先生のことは知らなかったんですよ。基本的にSUPER GENTLEのアートワークはデザイナーの小田島等さんにお任せしているんですが、ある時小田島さんの運営するギャラリーで内山亜紀先生の展示会があったみたいなんです。
ディレクター・渡邊文武
 小田島くんとラインでやり取りしてる時、彼がふと「内山亜紀さんはどうかな?」って書いてきたんだよね。で、「それだ!!」って二人で勝手に大盛り上がりしちゃって(笑)
玲子
 私はその時初めて名前を聞いたんですが、絵を見て凄く良いなって思ったんです。すぐに漫画も買って読みました。私、さっき言った「水」もそうなんですが、女の子っぽいものとか、少年少女的なものがずっとテーマにあって。小田島さんがSUPER GENTLEに対してそういうイメージを持ってくれたんだなってとても嬉しかった…

本当にぴったりなチョイスですよね。少年少女的なイメージというと、例えば小学校時代が楽しかったとか、良い思い出があるとか?
玲子
自分がどちらかというと、大人の女性というよりは子供っぽい声だからかな?歌いながら自分の声を聞いて曲を作ってると少女の世界観に必然的になる。自分が大人になると、実際に少女だった時より客観的にその純真さや美しさの価値がよく分かる。だからそれを音楽で表現したいと思うようになってるのかも。少女だった時は大人っぽいもの、さっき言った歌謡曲だったりそういうものに憧れていたんですけど。

内山亜紀×小田島等×SUPER GENTLEという、それだけでも素晴らしく価値のあるアルバムだと思います。そして、4月から、DANCING BABYのレコ発に伴うライブが発表されていますね。SUPER GENTLEのライブ、何度か拝見しましたが完成度が凄いことになっている気がします。
玲子
 ライブは、レコーディングもそうだけど美しい音楽として完成度の高いものを目指し続けたいです。それと、ビートのある音楽っていうのは生命力を衝動的に表現するものだと思っているので、それが出来る瞬発力を持っていたいです。私、よく「変わってないね」って言われるんですよ。自分では変わったつもりなんですけど、10年ぶりに観てくれたお客さんから「変わってないね」って言われる。

生命力やフレッシュさを大事にしている玲子さんだから成し得ることかもしれません。
玲子 無邪気なものが好きだし、やりたいですね。今、生きているという感じを大事にしたいと思っています。

RELEASE INFORMATION

2023.03.22 Release
サザナミレーベル
Price: 2,200 (tax in)
Format: CD / Digital

Track List
01. 好きなこと
02. ダンシングベイビー
03. 神様 in da house 
04. 花火(SZK mix)
05. 純真
06. うみのうた
07. Dancing Reprise
08. Festival 2021
09. Paradise 2022 
10. 最後の日

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