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NYで活躍するピアニスト/コンポーザー加藤真亜沙が6年ぶりのアルバム『Solúna』を引っ提げコットンクラブで来日公演を開催!数量限定のアナログ盤も発売決定

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レコーディングメンバーである小川慶太、Moto Fukushimaが参加する初の公演

第63回グラミー賞で2部門にノミネートされたレミー・ル・ブーフのアルバム『Assembly of Shadows』にピアニストとして参加。2009年以来、ニューヨークを拠点に演奏・作曲活動を展開する加藤真亜沙がこの8月16日、東京・コットンクラブにて「MARTHA KATO Solúna」公演を開催する。
これまでも日本有数のミュージシャンを集めて行われてきた彼女の公演だが、今回は力作セカンド・アルバム『Solúna』のレコーディングメンバーでもあるドラマーの小川慶太、ベーシストのMoto Fukushimaも同行してのステージ。アルバム収録楽曲の、さらに進化・発展した姿を、クラブならではの至近距離で体感できるのは間違いないところだろう。
また『Solúna』のCD発売1周年を記念して、新規ジャケット・デザインによるアナログ盤が9月20日に発売されることも決定した。ますます注目が高まる加藤真亜沙の最新インタビューをお届けしたい。(インタビュー: 原田和典)

—–  8月16日のコットンクラブ公演「MARTHA KATO Solúna」の開催が迫ってきましたね。
加藤真亜沙  私が音楽家として一番心がけていることはライブで演奏することです。お客さんの前で演奏する特別な感じというか、嘘がつけない感じが好きなんですよ。コットンクラブへの登場は今回が3回目ですが、今回はアルバム『Solúna』のレコーディングメンバーでもある小川慶太くんとMoto Fukushimaくんを交えてライブを実現できることが見どころだと思います。いま、『Solúna』の楽曲を中心にセットリストを考えているところですが、7人編成の楽曲に加えて、2人とのトリオでも演奏する予定です。

—–  YouTubeで公開されたトリオのライブ映像も圧倒的でした(「JAZZ AUDITORIA ONLINE 2021」)。
加藤  慶太くんやMotoくんはとにかく引き出しが豊かなミュージシャンです。一緒に演奏していると、インスピレーションをもらうことがとても多いですね。

JAZZ AUDITORIA ONLINE 2021

—-  『Solúna』というアルバム・タイトルの由来は何ですか?
加藤  太陽(Sól)と月(luna)を合わせて『Solúna』にしました。

—– 二面性を表現なさった?
加藤  そこまでは考えませんでしたが、アルバムの流れとして、最初のほうに太陽の神様をイメージした「Sól」や「Ishonsho Abe」があり、そこから「Kinmok-Sailor / キンモクセイラー」の後半とか「Uragami」のようなちょっと夜っぽいイメージの曲に繋がっていく、そういう一冊の本のようなストーリーになっています。

—–  前作『Tales from The Trees / アンモーンの樹』より一層、リズム面が多彩になった印象を受けました。
加藤  ギリシャ出身のベーシストのペトロス・クランパニスと親しくなってミドル・イースタン系のリズムに関心が高まったり、いろんな要素を取り込んでみたいとは思いました。私個人はそれらの音楽の専門家ではありませんが、これをいろんなミュージシャンに放り投げた時に、どういうケミストリーが起きるのかという楽しみはありますね。

—–  「Ishonsho Abe」に関しては、幻想的なミュージックビデオも公開されています。制作のきっかけについて教えていただけますか。
加藤  ディレクター/プロデューサーのHaruna Azumiさんとの出会いが大きいです。彼女は大変な音楽ファンで、よく私のライブにも来てくれるのですが、本業はフィルムディレクターで、ドキュメンタリーのショートフィルムも結構撮っています。彼女に「ミュージックビデオを作りたい」と話したら、即座に「やりましょう」ということになりました。ただ映像の内容に関しては、基本的にお任せしました。私は彼女のことを信頼しているし、彼女は私の人柄も音楽も知っているし、その彼女がベストだと思うチョイスなら絶対間違いないと思ったんです。結果的にMVの枠を飛び越えたような作品ができて、彼女と映像チームにはとても感謝しています。

「Ishonsho Abe」ミュージックビデオ

—–  この「Ishonsho Abe」におけるトランペットとフルートのやりとりの後ろで鳴っているトロンボーンの響きや、「Kinmok-Sailor / キンモクセイラー」のピアノ・ソロの出てくる後に厚みのあるボーカルが出てくるところなど、聴いていて、とても耳が楽しくなりました。たとえば「Kinmok-Sailor / キンモクセイラー」のアレンジの発想はどういったところから来ているのでしょうか?
加藤  遊びながら出てきたアイデアという感じですかね。「Kinmok-Sailor / キンモクセイラー」の後半に声が入ってくるところは私とサラ・エリザベス・チャールズで分担しています。あのパートは最後まで、結構どうしようか悩んでいた場所なんです。誰のソロにしようかと考えながら、家でボーカルを重ねて録って遊んでいたときに、「ここ、ボーカルでいいかもな」と思って。さらにゴスペル・クワイア的な雰囲気を出そうと思いついて、10トラックぐらい重ねました。私が6人ぐらいいて、サラが5人。前のアルバム(『Tales from The Trees / アンモーンの樹』)ではそんなに歌っていなかったのですが、今回の『Solúna』では、ボイスを多く使いました。

—–  確かにボイスの生かし方は、『Solúna』の大きな特色だと思います。
加藤  自分で歌うようになったのは、ラージ・アンサンブル用に書いた曲をトリオのライブで演奏する時に、手が足りないから歌ってしまおうと思ったのがきっかけです。その当時、よく聴いていたのがグレッチェン・パーラートの音楽で、彼女がベース・ラインやボーカル・ラインを歌っていて、「こういうのもありだな。ここを私なりに発展させたら面白いんじゃないかな」と思って、実験的に始めました。ライブを続けていくうちに、だんだん楽しくなってきて、今では自分のバンドサウンドの大事な一部分を担っています。

—–  これまで、特に研究した作曲家やアレンジャーはいらっしゃいますか?
加藤  特に誰ということはありませんが・・・・14年前にニューヨークに来た時は、ピアニストとしてトラディショナルなジャズを習得することを目標にしていたと思います。でもニューヨークの周りの友達は「現在進行形のジャズ・シーンで熱い人」を追いかけていて、私も刺激されるようになりました。それまでオスカー・ピーターソン、バド・パウエル、ウィントン・ケリーのような世界に親しんでいましたが、そこに例えばカート・ローゼンウィンケルとかマリア・シュナイダーとか、そういう世界が存在すると認識したんです。私は子供のころからクラシックピアノと作曲をやってきて、高校三年生の時にジャズに転向したバックグラウンドを持っているんですが、マリア・シュナイダーの音楽を聴くと「ジャズとクラシックの両方を持っていていいんだよ」みたいなプレゼンテーションをしていて、それがすごく新鮮で。「スウィングしてなきゃジャズじゃない」じゃなくて、「現在進行形で動いている音楽そのものがジャズなんだ」という考え方に変わっていきました。ロバート・グラスパーのようにヒップホップを取り入れたり、チェンバー・ミュージックが混ざったようなジャズのビッグバンドもあるし、ワールド・ミュージックを取り込んだ人たちとかもいるし、ジャズというものが「囲われているものではない」と実感しました。ニューヨークは特に枠を飛び越えて自分の音楽を追求しているミュージシャンが多いですし、「人々の心に響くものなら何でもありなのだ」と思います。

—–  加藤さんのアンサンブルは基本的には7人ですか?
加藤  7人だったり8人だったりという感じです。みんなの個性を引き出せて、自由でもいられるんだけど決まるところは決まってという、小編成とビッグバンドの両方の良いところを出せる編成かなと思っています。

—–  いつ頃からラージ・アンサンブルで演奏を始めたのでしょうか?
加藤  ニュースクール大学で学んでいた時ですから、2012年頃ですね。入学当初は、私的には「ピアニストならピアノ・トリオでしょう」みたいな固定観念もあったのですが、まわりにラージ・アンサンブルの曲を書く人がいっぱいいて。たとえばティグラン・ハマシアンと共演しているドラマーのアーサー・ナーテクとか。彼も素晴らしい曲を書いていて、「こんなことをする人もいるんだ、こんなことをしてもいいんだ」ということがトリガー(引き金)になりました。

—–  ニュースクールでは、ケヴィン・ヘイズやアーロン・ゴールドバーグにも師事したときいています。
加藤  ケヴィンは「インプロヴィゼーションをしていくなかで、ミュージシャン間でどうコミュニケーションをとってゆくか」ということをよく話しました。「“リスニング(聴くこと)”と“リアクティング(反応すること)”は違う。聴いたことを消化したうえで、自分が何を発言するかが大切だ」という言葉も覚えています。アーロンからはジャズ・レジェンドたちのアーティキュレーションについて学びました。「アドリブ・フレーズには、そのミュージシャンの人生が詰まっている。単に音を追いかけて同じように音符をコピーするだけでは、トランスクリプションは完全ではない。音色、アクセントやゴーストノート、どれくらいスウィングしているか、レイドバックしているか、オントップで弾いているか、そういうアーティキュレーションも含めてコピーできて初めてトランスクリプションとなる」ということを言われましたね。

—–  レジェンドといえば、ジュリアード音楽院ではケニー・バロンの教えを受けたそうですね。
加藤  ニュースクールの後ですね。自分の音楽性がなんとなく出来つつある時期だったのもあってか、ケニーからは「君に教えられることは見当たらないんだけれど、どうすればいい? とりあえず一緒に演奏しないか」と言われ、レッスン時間はずっと彼とピアノデュオをしていました。私はジャズを始めた頃からケニー・バロンをよく聴いていたので、レコードで親しんでいたあの音色を真横で聴くことができたのはとても感慨深かったです。

『Solúna』LPジャケット

—–  そして、9月20日には『Solúna』のアナログ盤が発売されます。ジャケット・デザインも一変されていて、CDのほうが“太陽の下”という感じなら、LPのほうは“夕方”という感じです。
加藤  アナログ盤のジャケットは、まったくCDとデザインを変えてみました。また、画家である父に描いてもらった「ウラガミ神社」の絵を封入しています。アルバムの中に「Uragami」という曲が収録されているのですが、ウラガミというのは私が作った架空の神様のことで、裏紙とか裏口とか、9回の裏などにひっそりと宿る“裏神様(うらがみさま)”に捧げて作った曲です。それを“裏紙”風にして入れてみました。アナログ盤ならではのパッケージデザインになっていますし、アメリカでもレコードの売り上げがCDを上回ったというニュースがありましたから、ぜひアナログ盤でも楽しんでいただけたらと思います。

目次

公演情報

2023.8.16(水) MARTHA KATO Solúna
@COTTON CLUB
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/martha-kato/
世界的な評価を受ける才人ピアニスト/コンポーザー
ゲストとともに繰り広げる独創的な新時代ジャズ
第63回グラミー賞で2部門にノミネートされたレミー・ル・ブーフのアルバム『Assembly of Shadows』に参加。ピアニスト/コンポーザーの加藤真亜沙が1年ぶりに登場する。2009年に渡米し、ジュリアード音楽院に奨学生として入学後、ケニー・バロンに師事。在学中からNYを拠点に演奏活動を展開し、ASCAPの作曲コンペティションでも数々の賞を獲得、自身のアルバム『Tales from The Trees / アンモーンの樹』、『Solúna』も高い評価を受けた。今回の公演には日本で活躍するトップ・ミュージシャンと共に、『Solúna』のレコーディングメンバーである小川慶太とMoto Fukushima(House of Waters)のふたりがNYより参加決定。色彩感と透明感あふれるサウンドで新時代のジャズを体現する。


MARTHA KATO Solúna
加藤真亜沙

2023 8.16 wed.
[1st.show] open 5:00pm / start 6:00pm
[2nd.show] open 7:30pm / start 8:30pm

MEMBER
加藤真亜沙 (p,vo)
広瀬未来 (tp,flh)
西口明宏 (ts)
土井徳浩 (fl,cl,ss,bcl)
駒野逸美 (tb)
Moto Fukushima (b)
小川慶太 (ds,per)

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