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situasion 『4th ONE MAN LIVE 【GATTAI】』ライブレポート

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TEXT by 松尾駿介(Lonesome record / エクストロメ)
Photo by 町田千秋 @HLG2524
Edit by 山口隆弘(OTOTSU編集部)


situasion 『4th ONE MAN LIVE 【GATTAI】』

2022年12月5日、月曜日、曇りのち雨。
川崎CLUB CITTA’にて、西野愛望、羽柴愛実、増田葵奈、小川すず、蒼井輝菜、杏優から成る今月で活動開始2周年を迎える6人組アイドルグループsituasion(シチュアシオン)の4th ONE MAN LIVE 【GATTAI】が開催された。

彼女たちは今年3度に渡るワンマンライブを開催。6月に新宿BLAZEにて3rd ONE MAN LIVE 【全少女運動】、9月に渋谷Spotify O-EASTにてFREE ONE MAN LIVE【invitasion】、そして12月に川崎CLUB CITTA’にて4th ONE MAN LIVE 【GATTAI】を迎えた。

“僕以外じゃ君を幸せにできない!”

2022年の幕開けと共に公開された「THE YEAR」で高らかに 宣言した彼女たちの1年は、想像を遥かに超える目まぐるしく怒涛のものだっただろう。

3月にそれまで配信でリリースを重ねていた楽曲を余すところなく収録したコンピレーションアルバム『THE YEAR』をリリース。さらにそこには収録されていない『EVENT HORIZON』シリーズを1月から3ヶ月連続リリース、間髪入れず5月に『全少女運動』を配信リリース。6月から『革命三部作 ~パルメニデスに逆らって~』を3ヶ月連続リリース。11月には今回の【GATTAI】公演の布石となる『amputasion』をフィジカル+配信でリリース。そして今回のワンマンで披露された『GATTAI』の2曲をこの公演でお披露目、翌日には配信を開始した。

そんなリリース状況に加え、ワンマン公演と並行してライブに次ぐライブ、Ringwanderungとの2 MAN TOUR『NEW ERA TOUR』敢行、夏場はTOKYO IDOL FESTIVAL 2022をはじめとしたフェスへ各所で出演。その勢いを損なうことなく11月には『amputasion』のリリースしたのち、新たに定期公演も始まった。そして4th ONE MAN LIVE 【GATTAI】の開催。こうして書き起こしているだけで眩暈がしてくるほどの情報量・・・だが、この公演が終わる頃に改めて彼女たちのバイタリティの高さを思い知ることになる。

今回、この場を借りて文字で残す機会を頂いたので、彼女たちが駆け抜けた1年の集大成の日を、余すところなくここに記録として残していく。


19:05、定刻を少し過ぎた頃、緞帳が上がり、ステージに設置された箱型のセットが目に入る。そして早速今回のタイトルでもある『GATTAI』を表現するイメージ映像が流れ始めた。ピンクの背景に首/腕/腰/足が切り離された人形と、フライヤーにもなっている組み立て式のフィギュアのような絵が映し出され、最後に“2057”という意味深な文字を映し、そのまま1曲目のイントロがフェードインしてくる。インストのダンスナンバー「embryo」。白と黒の迷彩風ロングコート衣装のメンバーが登場したのだが、なにやら違和感を覚える。2階で見させてもらっていたことと、照明の具合で顔がはっきり見えないこともあってはっきりと気付くまで少し時間を要したが、どうやら登場したのはFAKE SITUASION。一心不乱に1曲まるっと踊りアウトロで袖に捌けると場内からもどよめきが聞こえてきた。そのまま『amputasion』より「THIEW」が流れステージ後方に設置されたGATTAIボックスにいつのまにか入ったメンバーがスポットで照らされ登場しさらにどよめきと拍手が起こる。

リリースイベントを通して順番に披露されてきた『amputasion』の楽曲は、グループ曲としてリリースされているが各メンバーのソロ曲となっており、歌うメンバー以外はこれまでは踊りで加わり表現されてきたのだが、今回はボックスに入ったメンバーがそのままボックスの中で1人ずつ歌いながら収録曲順通りに披露されていく。

situasionの楽曲は、これまでの曲はほぼ全て磯野涼 × ヨロコビのペアで制作されてきているのだが、この『amputasion』では四市田雲豹 × ヨロコビの新しい組み合わせて挑んでいる。それも功を奏しより各メンバーの特徴が感じられる圧倒的なソロ性が際立った仕上がりとなっているのだが、今回の演出での披露により、さらにこの作品の異質さと布石としての役割がはっきりと表現されていたのではないだろうか。

ボックスの中での限られた空間でのパフォーマンスは、楽曲にともないメンバーそれぞれに個性が滲み出ていた。「THIEW」「NEOGAR」「DER」「ENERG」「BELU」「RUPPLE」と順番に披露され、6人がボックスの中へ収まり、再びピンクの背景にGATTAIの文字が映し出され、今回の表題となる新曲「GATTAI」のイントロが鳴る。人形のように固まっていた6人がボックスを跨いでステージ前方へ進む。アーバンかつソウルフルでムーディーな空気感をまとったトラックに、キャッチーかつメロウなメロディー。歌詞や先程から流れているイメージ映像から猟奇的なニュアンスを感じるところもあるが、楽曲としてはグループにとって新たなアンセムになるであろう仕上がり。そして、ここで気付いた。どこかで聞いた音、それも特殊な音色が曲の中でいくつも鳴っている。そう、『amputasion』の各曲で使われている音が随所に散りばめられ構成されているのだ。切断、そして合体。点と点が線になる瞬間。まさに鳥肌もの。その発想とそれを具現化するヨロコビPの手腕、さらにそれを表現するメンバーのポテンシャル、半端ではない。こういう遊び心と本気の仕掛けこそが、彼女たちが既存のアイドル像に囚われず各所で噂が噂を呼ぶ大きなポイントなのだ。

『GATTAI』と名付けられたタイトルへの伏線回収を完了し第1セクション終了と共に「PUNK DOLL」のビートが鳴り響き第二セクションへ突入する。小川すずの“ちょっと無理”という歌い出しからインパクト絶大のsituasionならではの遊び心が散りばめられた、今年リリースした楽曲の中でも人気の高いミドルテンポのダンスナンバー。“ただ拳掲げろ”のフレーズとフロアの共鳴が印象深い人気の初期曲「STRIKE UP」、和とEDMが融合したえげつないリズムビートが交差する「YAMATOYA BEATS」 「樹海紀行」と続き、第一セクションで作った空気を自らぶち壊してさらに独自の世界観に引きずり込む。

「I WAS BORN IDOL」で“WE ARE IDOL”、“I was born to be with you”、アイドルとして生まれたことを高らかに歌い上げ第2セクションは幕を閉じ、再びピンク背景のGATTAIイメージ映像が映し出された。徐々にピンクがモノクロへと変わっていき、セリフも徐々に不穏を帯びたものへと変化し怪しさを増し第3セクションへ。

『革命三部作 ~パルメニデスに逆らって~』より「第三部 秘色の夜明け」。EDMとインダストリアルの要素が融合したハイブリッドな楽曲と、中盤の転調からの杏優が歌い上げるパートの印象がとても強い一曲。この曲、是非歌詞にも注目してみてほしい。この曲はこの一連の切断→合体の流れが始まる直近でリリースされているのだが、“別々に”、“それぞれに”、“ばらばらに” などのフレーズが入っており、この時点で切断→合体への序章となっている。この曲のリリース時点でこの一連の流れに気付いていた人、是非考察班として話をしてみたい。終盤の畳み掛けるパートからそのまま『全少女運動』よりバンドサウンドのドラムビートで始まる「三つの教典」へ。そして本日のハイライトと言える代表曲の一つ「JAPANESE HORROR STORY」へ雪崩込む。他の曲に比べると長尺で構成されている曲だが、絶妙な展開と振り付けに歌と見どころが多く普段のライブでも人気の高い曲だが、この日はそれまでの流れも合わさり明らかに場内の空気が変わったのを感じた。終盤の転調からメンバーが走りながら円を描くタイミングでステージから迫り出した花道へ向かうとフロアの視線がすべて中央へ向く。さらに転調し羽柴愛美が歌い上げるソロパートでは、振り付けも相まってまるで少女たちを崇め讃えるかのような美しい景色が広がった。この時点で公演時間は1時間を超え、16曲を披露しているにも関わらず、ここからさらにメンバーの動きのキレが上がって行く。

メランコリックなメロディーが真っ青な空間でより鮮やかに鳴り響く「青のダリア」、「EVENT HORIZON→→」、そしてデビュー作の1曲目を飾る「What the fuck is this situasion」と続き、短いインタールードを挟んで本編最終セクションへ向かう。ここまで実に19曲。映像こそ挟んでいるもののここまでMCも煽りもなし。普段のライブでも基本的には最後の曲が終わるまでMCがないことは日常だろうが、すでに1時間20分が経っていることを考えると、恐ろしいまでの集中力である。ここまででもかなり充実した内容だと思うが、まだまだ披露されていない曲も多く、最終セクションはさらに怒涛のセットリストとなる。

「anti anti roman」からスタートし、イントロで思わず歓声が上がる「フライデーナイトは君と」、そしてグループ最大のヒットナンバー「1988」へと続く。羽柴愛美と蒼井輝菜の向かい合わせでエアギターする姿がいつもより大きく見え、曲が進むにつれメンバー全員が無敵モードに入ったかのような動きを魅せる。長身でステージでの映えが印象的な増田葵奈の動きのキレはさらに増しラスサビの前のソロパートでは一際大きく美しく存在感を際立たせて魅せた。それぞれが高めあい、6人で魅せるステージがより大きくCLUB CITTA’という舞台の大きさに合ってきている感覚を覚えた。

“六で輝く青春です”、“あー私ってばぶっ壊れてます”、“とにかく私を選びなさい!”、“多少はましな人生になんのさ”、“私達ぶっ壊れてます”というキラーワード満載の『六季の会』が終わり、ここまでほぼ曲間なしで次の曲のイントロが鳴っていたがほんの数秒の間ができた。完全にここでフロアは気を抜いただろう。そしてクライマックスへ。「僕らはこれを運命と呼ぶ」のカウントが入った瞬間、再びフロアが歓喜に包まれた。デビュー作の最後に収録されているこの曲をラストに持ってくることの意味、2年間ひたすらに走り続けてきた彼女達が今ここで歌うことの意味。西野愛望が叫んだ、“みんなが好きだー!”という一言にここまでMCなしだった代わりにありったけの愛と感謝が込められていたのではないだろうか。アウトロの余韻を待つことなくメンバーはそのまま袖へ下がって行く。本編24曲、1時間40分、MCなし、フロアに向けた煽りも一切なし。徹底したsituasionの世界観を貫き通した。

手拍子に答えステージに戻ったメンバーの顔にはこの日1番の満面の笑みが溢れていた。

来場への感謝、新衣装、この日初披露となった「GATTAI」の配信開始、そして5月にグループ主催のフェス【VALUE PARADE】の開催、集合写真撮影、とお知らせを足速に済ませアンコールへ。

杏優の“正すのか、正さないのか、いや、正せよ状況!”に導かれ自己紹介曲でもある「正せよ状況」、そして2022年の彼女達の始まりの曲「THE YEAR」。冒頭で書いた通り、怒涛の一年の集大成である本公演を締めくくるにふさわしい2曲だった。曲の最後で6人が横並びになり正座して一礼して終わるこの曲で、あの場にいた誰しもが今日のボリュームと充実感でこれで終わりだと思っただろう。どう考えても。だが、ただじゃ終わらないのがsituasionなのである。メンバーは下がらないどころか板付きで構えている。そこまでの多幸感に溢れた空気が一変し、緑の怪しげな照明に包まれ本日お披露目のもう一曲の新曲「gattai」のイントロが鳴る。「GATTAI」と「gattai」、陽と陰、対になる2つで一つの楽曲。大文字と同様に小文字でも『amputasion』で使われているサウンドが散りばめられ、“NEXT” “ヒトトナリ”といワードと怪しげな儀式を思わせるメロディー、situasionが持つダークで重厚な魅力が詰まった曲に仕上がっていた。ノイズ音と共にメンバー膝から崩れ暗転、エンドロールが映し出されてそのままメンバーは退場し終演を迎えた。

ピッタリ120分。わちゃわちゃしたムードも余興はなし、完全にsituasionならではの空間に染め上げた。「gattai」での“NEXT”というワード、エンドロールの最後に表示された、“おわり❤”という文字を見る限り、これで一連のGATTAI計画は完結したと言っていいだろう。そして、グループの指標でもある、【音楽が鳴り、会場が一つになった瞬間のエネルギーを原動力に、何にも支配されない圧倒的な「状況」が構築される。】この完成形がほんの少し見えてきたのではないだろうか。

彼女たちが向かう次なるステージはどこなのか、次なるテーマは何なのか、少なくとも既存のアイドルという枠にとらわれることはないであろうし、situasionという一つのコンテンツが生み出す次なる状況への期待が高まる。

2022.12.05 川崎 CLUB CITTA’
situasion 4th ONE MAN LIVE 【GATTAI】

セットリスト

  1. embryo
  2. THIEW
  3. NEOGAR
  4. DER
  5. ENERG
  6. BELU
  7. RUPPLE
  8. GATTAI
  9. PUNK DOLL
  10. STRIKE UP
  11. YAMATOYA BEATS
  12. 樹海紀行
  13. I WAS BORN IDOL
  14. 秘色の夜明け
  15. 3つの教典
  16. JAPANESE HORROR STORY
  17. 青のダリア
  18. EVENT HORIZON→→
  19. What the fuck is this situasion
  20. anti anti roman
  21. フライデーナイトは君と
  22. 1988
  23. 六季の会
  24. 僕らはこれを運命と呼ぶ

Encore

  1. 正せよ状況
  2. THE YEAR
  3. gattai

●Release Information

Live Information

2022年
●12/30 川崎 CLUB CITTA’  2nd anniversary 「SITUASIONISTA」

2023年
●1/7 大阪 梅田CLUB QUATTRO ONE MAN SHOW「SPLATTER THE FUCKING NEW YEAR!!」
●5/14 渋谷 Spotify O-EAST situasion presents festival 「VALUE PARADE」
※and more LIVE and more …

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