インタビュー・テキスト : 黒田隆太朗 編集:山口隆弘(OTOTSU 編集担当)
思ようにライヴを行うことが出来ないコロナ禍で、FRONTIER BACKYARDがフレッシュな企画をスタートさせた。その名も「direct package」。海外の人気企画・「タイニー・デスク・ コンサート」をモデルに発想された配信コンテンツで、普段のライブとは趣の異なるライブを披露。そこで録音した音源を、後日CD化して販売するという試みである。好奇心の赴くまま、音楽性を変えながら自由な活動を展開する、彼ららしいアイデアだと思う。
さて、先月にはMimeのボーカル・ひかりを招いた新曲「CRUISING feat. ひかり」をリリースしている。怪しくも魅惑的な夜の都市を描いた1曲で、ひかりの凛々しくも影を感じさせる声が光るコラボである。そんな彼女へのオファーも“今だからこそ”できるものだったとのことで、こうした状況の中でも、彼らは新しい創作を積極的に楽しんでいるのだろう。FRONTIER BACKYARDとMimeのひかりにZOOMを繋ぎ、新曲と「direct package」について語ってもらった。
ー「CRUISING」のゲストにひかりさんを招こうと思った理由はなんですか?

レーベルの担当がサブスクでMimeを発見して、ずっとカッコ良いねって言っていたんです。「CRUISING」は都会的でクールな感じにしたいと思って、ひかりさんとは面識がなかったんですけど、彼女の持つ良い意味ででクールな声が合うんじゃないかと思い、一か八かお願いしてみました。

「CRUISING」は大サビのところが本当に良いんですよ。

ひかりさんの悪そうな歌い方が本当にカッコ良い。

悪そう(笑)。

ひかりさんとは世代も違うので、普段の生活では絶対に出会えない人ですし、今までは対バンした方と一緒に作ることがほとんどだったので、コロナ禍ならではの出会い方でした。
ーひかりさんはFRONTIER BACKYARDに対するイメージはありましたか?

実はお誘いいただいて初めて聴きました。最近はビート感強めのシンセサウンドが印象的な曲を出されていたので、これは私も大好きなサウンドだと思いました。昔の曲ではホーンが入っていたり、ジャズやファンクの要素を取り入れた楽曲もあって、いちリスナーとしても聴いてて楽しかったですね。「CRUISING」は自分も好きな曲調だったので、テンションが上がってすぐに歌を入れて送りました。
ー逆に言うと、歌詞も曲もある程度出来上がったものを送ったということですね。

そうです。ほとんど出来上がっていました。歌い方も指定させていただいたので、一緒に作るというよりは、シンガーとして依頼しました。
ー<メトロポリタン>という歌詞も印象的ですが、リリックで意識したことはありますか?

コロナ禍で外出しにくくなってきたので、夜ドライブに出てたんです。東京って昼と夜で全然景色が違っていて、夜は怪しい雰囲気があるし、こんなところに人が寝ているのかとか考えながら運転すると楽しいんですよね。「CRUISING」は「夜中のドライブ」というイメージで、歌詞は外国の友達に頼んで英語に直してもらいました。

リリックは自分なりに和訳して歌ったんですけど、今上がっているYouTubeで歌詞の字幕が出ていて、それが凄く詩的です。自分にはない発想で書かれているので、そちらも凄く見て欲しいです。
ーFRONTIER BACKYARDが始めたプロジェクト、「direct package」についてもお話を聞けたらと思います。どういった動機から始めたものですか?

コロナ禍でライブが中止になっていく中、自分も最初はしょうがないなと思ってたんですけど、だんだんライブをしたくなってきまして。この歳にもなってまだ自分達がやっていることを見せたいのかよ、とも思ったんですけど(笑)、だったら配信で見てもらおうって思って立ち上げました。「direct package」は海外のタイニー・デスク・ コンサート(アメリカの公共ラジオ放送NPR(National Public Radio)の音楽部門の事務所で開催されているライブ)をモデルにしています。
ーオフィスなどで行っているライブですね。

僕自身ライブも見たことのないアーティストなのに、その映像を見て好きになった音楽もあったりして、こういうライブもいいなと思いました。そこで僕らも爆音ではなく、家でのんびり見れるライブを構築したいと思って、「direct package」を始めたんですよね。
ー1回目は開放感のある雰囲気のレコードショップのような場所を会場にしていましたが、2回目はバーのような空間のクラブで行っていましたね。

いわば仮想現実のようなライブなので、普段できないところでできたらいいなと。それこそタイニー・デスク・ コンサートも事務所でライブをやっていたりするので、僕らも普段活動するライブハウスなどではない場所でやりたいと思いました。初回は静かな雰囲気のライブを家でだらっと見てもらいたくて、「calm」というタイトルにしました。2回目はアッパーな感じで家でも踊れるようなライブを考えて、「move」と名付けています。
ーここ1年ほどで様々な配信ライブが行われてきましたが、FRONTIER BACKYARDは何故「direct package」でのライブをCD化しようと思ったんですか。

いつもやっているライブを、そのまま無観客で配信するライブはいっぱいあると思うんですけど、僕らはこのライブのためにアレンジし直していたので。だったらライブ音源として残していいんじゃないかと思いました。

ーそして2回目のライブではひかりさんがゲストで登場しています。撮られたのはいつ頃ですか?

今年の2月です。三宿Webっていうクラブが閉店になってしまい、どうにかそこでライブが出来ないかとチャンスを探っていて。なんとか空けてもらって「direct package」の会場にさせてもらいました。計画は去年の末くらいから立てていたんですけど、ひかりさんとはそのライブで初めてお会いしました。
ーそれはバンドのおふたりより、ひかりさんの方が緊張しますね(笑)。

そうですよね。僕だったら嫌ですもん(笑)。だからするっと僕らにマッチしたのは凄いねって話をしていて。ひかりさんは相当パンチあります。

実際お会いしたら凄くあたたかい人たちでしたし、1回ミーティングでお話しさせていただいた時、出身が栃木とおっしゃっていたので、ちょっと親近感が沸いていました(笑)。

北関東ノリがあるんです(笑)。実際こういうおっさん達が北関東にいるんですよね、あの人たち妙に明るいなみたいな。
ー北関東バイブスがあるんですね(笑)。

それといつだったかひかりさんが53 Thievesの曲をインスタで上げていたことがあって、僕も凄く好きなアーティストだったので、もしかしたら感覚が似ているかもって思っていました。男女混声のアーティストで、男性と女性が上下を歌っているところが「CRUISING」に似ていたり、あの投稿を見ておお!って思ったんですよね。連絡しちゃいましたもん。

その時メールまでいただきましたね(笑)。私は最近見つけたのですが、あまりまだ知られていない気がするので、まさかそこで一致するとはって感じで、TGMX さん早耳だなと思いました。
ー制作とライブはまた違った難しさがあると思いますが、一緒に歌ってみてどうでしたか?

声が音源と一緒だったので、凄いなって思いました。なかなか歌声が変わらない方って少ないので、本当に技術があるなと。

なので僕のボーカルに関しては、完全にひかりさんの歌唱力に乗っかって歌った感じす。
ー福田さんはパットを叩いていましたね。

基本のビートがあってその上でパットを叩いたんですけど、歌の邪魔をしないように主張するためのサジ加減が難しかったです。若い人たちは上手くドラムセットに取り込んで使っている人も多いので、凄いですよね。僕はもっと勉強しないといけないなって思います。

「CRUISING」はドラムセットでライブをやっても面白そうですよね。

良いですね。ライブはまたしたいです。
ーFRONTIER BACKYARDとMimeで2マンライブが出来たら面白いですね。

わあ、是非是非。

そうなったら嬉しいです。もう僕らは胸を借りる感じですね。Mimeは本当にサウンドがカッコ良くて、ブラックミュージックやAOR、シティポップまで、欲しいところが全て入っている。聴いてて悔しいよね?

悔しいんだ(笑)。Mimeは曲は誰が作っているんですか?

曲ごとにオーナーがいる感じで、それぞれが作っています。メンバーの音楽的なバックグラウンドがバラバラなので、そのおかげでAORっぽかったり、ダブっぽかったり、ヒップホップっぽかったり、曲ごとに分れています。

全員が天才です。

いやいや、そんな。勉強中ですが、私はまだMimeで曲を書けていないので、、! 私のルーツはR&Bなんですけど、いろんな人と音楽を共有していく中で、ひとつのジャンルにこだわり過ぎず、いろんな音楽を聴くようにはなりましたね。バンドとしては80年代っぽいものをそのままやるのではなく、20年代にアップデートしたものを作ろうって言っていて、そこはみんなが意識しているところだと思います。
ーMimeはルーツがしっかりしている上で、自分たちらしい表現を模索しているように思います。

Mimeを聴いていると、僕ら世代が聴いていた音楽の感じを受けるんです。それをリアルタイムでは知らないはずなのに、自然とやっているのが新しいし、焼き直しには聴こえないから。絶妙なところにいるバンドだと思うんですよね。僕は隅に入りすぎちゃうバンドも好きではないし、かと言ってメインストリームをいく感じのバンドもあんまり好きじゃないので(笑)。Mimeがそれを狙ってやっているかはわからないんですけど、凄くカッコ良いです。
ー近年のFRONTIER BACKYARDは、ビートミュージックやブラックミュージックからの影響を強めていますし、そうした背景があってのひかりさんへのお声がけだったのではないかなと思っていました。こうした音楽性の変化は、おふたりのどんな意識から生まれているものですか。

僕らはバンドマン出身なんですけど、今はその発想を取ろうと思っているんですよね。バンドっぽい曲を書くのではなく、トラックメイカーっぽい曲だったり、ワンループで聴かせるような曲を作りたくて、そういう意味でもクラブミュージックに寄っているところはありますね。それで今は僕も福田くんもDAWでの制作を勉強しています。一時ロックを頑張ろうと思っていた時期もあったんですけど、ギターがいなくなってからは難しくなって。今は自由に好きな音楽性を追求していますね。
ーなるほど。

どうやったら海外のサウンドに近づけるのか…僕は洋楽になりたくてその研究をしいる感じですね。なので売れるとか、人気が出るとか、今はそういうことが僕らの会話には出てこない。“これ売れるぜ”ではなく、“これ新しいね”っていう会話をしながら音楽を作っているので、ある意味ファンのことを無視しているんですけど(笑)。
ーミュージシャンとしては健康的な状態ですね。

もちろん多くの人に聴かれた方がいいと思いますし、バンドをやっていく中で売れることが大切な時もあるとは思っているんです。でも、今は数字的なことを気にするよりも、僕らが楽しんで作る音楽を、わかってくれる人がどこかにいてくれたらいいなって気持ちが強いです。

いかに自分達の好きな音楽を作り続けるかの方が大事ですよね。それを良いねって思ってくれる人に届ける方が、私たちにとってもヘルシーですし、モチベーションに繋がるのかなって思います。Mimeもそうですし、自分と近しいミュージシャンたちも、自分のやりたいことを突き詰めているイメージはありますね。
ー福田さんはドラマーとして、バンドの変化をどう感じていますか?

僕とTGMXの音楽性が変わるタイミングが、なんとなくいつも一緒なんです。4、5年前まではファンクの気分があったり、やっぱP-FUNKでしょとか言っていたんですけど、ここ数年は打ち込みだろって感じになっていて。音楽の好みやりたいことのイメージが重なるので、自然と変わっていっている感じはあります。もっとドラムを叩きたいとも思わないので、ここ2、3年はFRONTIERのレコーディングではドラムは叩いていないんです。
ー今後もいろんなコラボをやっていきたい気持ちはありますか?

やっていきたいですね。実際に曲を作るのってどうしても合う、合わないはあるので、まずは僕らがこの人とやりたい!って思うかどうかが大事だとは思っているんですけど。上手くいくなら年齢も性別も、もしかしたら国籍も越えていろんな方とやってみたいです。僕らは今ふたりでの活動をメインでやっているので、いろんな形のコラボができるような気はしていて、様々なアーティストと制作できたら楽しそうだなって思います。
ー音楽活動は、何かしらボーダーを越えていくのがモチベーションになる?_

そうですね。友達と何かをやるのも面白い楽しいし、たとえばラッパーがクルーで音楽を作るのも良いなって思うんです。でも、今回のひかりさんのように、未知の人とやるのは刺激的で面白いですよね。自分自身、こんなものができるんだ!って発見に繋がるのは凄く良いなって思います。

≪アーティストプロフィール≫
FRONTIER BACKYARD (フロンティア・バックヤード)
Profile:
TGMX (Vo)、TDC(Dr)の 2 人が SCAFULL KING 休止中に 2004 年より組んだバンド。 2004 年に 1st アルバム「FRONTIER BACKYARD」発売以降、 6 枚のオリジナルアルバムをリリース。
FUJI ROCK FESTIVAL、RUSH BALL、ROCK IN JAPAN、COUNTDOWN JAPAN、RISING SUN ROCK FESTIVAL、KESEN ROCK FESTIVAL、WALK INN FES!、Baycamp 、AIR JAM など多数の大型 フェスにも出演。2014 年には、CD デビュー10 周年を記念したベストアルバム「BEST SELECTIONS」とリミックスアルバム「 gladness」をリ リース。2015 年には 10 周年の軌跡と新木場スタジオコーストで行われた周年ライブを 収めたDVD「surroundings」をリリースしている。ライブはサポートメンバーを含めた編成で、 2016 年からは 7 人編成で活動をスタート。 同年、タワーレコード限定ミニアルバム「FUN BOY’S YELL」と、「THE GARDEN」、2018 年には、西寺郷太、おかもとえみをフィーチャリングした楽曲含む「Fantastic every single day」をリ リースし、2019 年よりメンバー2 人だけの LIVE 編成をスタートさせるなど精力的に活動中。
FBY Live Schedule
2021年7月4日 六甲山 アスレチックパーク
ROKKO SUN MUSIC 2021
2021年7月11日 横浜FAD
F.A.D25周年シリーズ “210711″
w/avengers in sci-fi
2021年8月7日 福山 Cable
POPLIFE 15th Anniv. RADIO WAVE Vol.142 ~ BARCO 5th & Cable 10th Anniv. ~
w/Noshow/jigga
DJ/POPLIFE CREW
http://www.frontierbackyard.com/pctop.html
https://www.instagram.com/frontier_backyard/
https://twitter.com/FBYofficial
コミュニティーサイト fanicon『backyard』
https://fanicon.net/fancommunities/2514

≪アーティストプロフィール≫
Mime (マイム)
Profile:
昨年2020年の連続配信シングルリリースを経て、今年2021年待望の2ndアルバム「Yin Yang」を2月12日にリリース。
80s’ファンク、ブギー、NeoSoul、R&Bなどを昇華したグルーヴィでタイトなトラックとひかり(vo)の都会的で凛とした歌声は聴くものをMimeの世界に誘う。
また各メンバーはMimeの活動と並行して、ひかりはTokimeki Recordsにボーカル参加、ギター内野はLast Electro、ドラム&トラックメイクのTiMTはPEARL CENTERのメンバーとしても活動。近藤(key)もMichael KanekoやPEARL CENTERなどのサポートメンバーとしてライブ等に参加している。
Mime Live Schedule
Mime 『Yin Yang』Release Party
2021年6月20(日) at 新代田FEVER
・ゲスト:maco marets
開場17:00 開演18:00
会場チケットはSoldout!
配信チケットは絶賛発売中!!
https://eplus.jp/sf/detail/3420390001-P0030001
https://mime-official.tokyo
https://twitter.com/Mime_Tokyo
https://www.instagram.com/mime.official.tokyo
RELEASE INFORMATION

direct package“move”
FRONTIER BACKYARD
2021.07.14 RELEASE
Niw! Records

Yin Yang
Mime
Now on sale
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