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平戸祐介のフルアルバム『HIGHER & HIGHER』。本人自ら参加したリズムセクション3名へのインタビューを敢行。OTOTSUスペシャル鼎談

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平戸祐介が待望のフルアルバム『HIGHER & HIGHER』をリリースした。本作は、平戸以外のミュージシャンが全て30代以下で、新世代の起用も際立っている。この記事では平戸自身が聞き手となり、リズム・セクションを担った3名へのインタヴューを敢行。Gecko&Tokage Paradeの中山拓哉(ba)、SANABAGUN.の澤村一平(Dr)、そして「INVISIBLE」と「It got to be FUNKY」の2曲に参加した石川勇人(Per)に話を聞いた。

文・構成:島 晃一
編集:山口隆弘(OTOTSU 編集部)

『HIGHER & HIGHER』Trailer

僕が求めていることに敏感に反応して、適格に表現してくれたので心強かった

平戸

中山さんは、前作の『TOWER OF TOUCH』から参加していただいてますが、今作はいかがでしたか?

中山

前作とはテーマや世界観がまったく違うことに驚きました。1つのアルバムを通してコンセプトがしっかりしているので、今作も楽しく弾けました。

平戸

中山さんはリハでも貪欲な姿勢ですよね。僕が求めていることに敏感に反応して、適格に表現してくれたので心強かったです。

中山

自分のアンテナでなにをキャッチしてどうやってベースの音を出すか、どうすれば自分らしさを出せるか常に考えていました。

前作『TOWER OF TOUCH』

澤村さんが参加してくれなかったら、このアルバムの構想はなかったんです。特に、この手の音楽は醸し出すリズムが大事だから

平戸

今作から参加した澤村さんはどうでしたか?

澤村

平戸さんにお会いしたことがなかったので、「怖い人だったらどうしよう」って最初はビビってました(笑)。でも、「こういう音楽を作りたくて澤村くんを誘ったんだよ」と言っていただいて。そういう熱くて優しい人柄が印象的でした。

平戸

SANABAGUN.はもちろんだけど、Last Electroの世界観も聴いて、「あ、この人やばい」って思いました。澤村さんが参加してくれなかったら、このアルバムの構想はなかったんです。特に、この手の音楽は醸し出すリズムが大事だから。続いて、石川さんはいかがでしたか? 

Last Electro『I’m Yours Tonight』

リズムの隙間が埋まるともっとグルーヴィーになるかなと思って、石川さんにお声がけしました。

石川

リハーサルもレコーディングもサクサク進んだから、平戸さんとお会いした時間はトータルで4、5時間くらいだったんです(笑)。それなのに、濃密な時間を過ごした感じがします。

平戸

そういえば、澤村さんと石川さんは大学時代からのお知り合いなんですよね?

石川

大学のビッグバンドで一緒でした。ドラムが澤村くんで、パーカッションが僕。だから今回と一緒ですよね。

澤村

違うのは、当時は石川がバンマスだったんですよ。なので、石川が全部をまとめてくれて、僕は怒られながらもやってました(笑)。

石川

否定したいところですけど、割と怒ってましたね(笑)。大学時代の澤村くんはちょっと不真面目だったのかな(笑)。もちろん、今はそんなことないですよ。仲のいい青春時代を過ごした間柄ですね。

平戸

会うのは何年ぶりでしたか?

澤村

卒業してからも何回か会ってはいました。でも、こうして一緒に音を出したのは7、8年ぶりくらいです。
平戸さんに、「何曲かパーカッションを入れたい楽曲あるんだけど、せっかくなら澤村くんがやりやすい人を選んだ方がいい」って言っていただきました。石川とはビッグバンドで一緒に練習してきたし、プレイも人柄も信頼できるので声をかけました。

平戸

「It got to be FUNKY」は最初キーボード、ベース、ドラムだけでした。でも、「何か足りないよね、何か欲しいよね」って三人で話しながら悩んでいたんです。あるとき、リズムの隙間が埋まるともっとグルーヴィーになるかなと思って、石川さんにお声がけしました。

石川

あの曲はやりがいがありました。

平戸

70年代風のゴリゴリのファンクを、石川さんが好きなのかなっていう不安もあったんですよ。失礼かもしれないけど、ご自身のバンドchickapadeは、ジャズの室内楽というか、クラシックの要素を感じさせるジャズだから。でも、スタジオに入られる前からウキウキしてる感じが伝わってきました(笑)。レコーディングでは、小物楽器をどこに入れたほうがいいかとか、すごく考えてくださった。

chickapade 『mist』
石川

ありがとうございます。本当に楽しかったです。

平戸

中山さんは、石川さんのパーカッションとベースを合わせてみていかがでした?

中山

縦のノリというか、自分で掴めてなかった細かい部分や不安な部分があったんですよ。それにパーカッションが入ることで、その合間を埋めるような立体感がプラスされました。いざ完成した音を聴いたら素晴らしかったです。

平戸

Gecko&Tokage Paradeにはパーカッションがいないですもんね。いろんな意味で新鮮だったんじゃないですか?

中山

楽しかったですね。曲に厚みを持たせていく過程を、間近で感じられました。

Gecko&Tokage Parade『clockwork』

音楽は歳と経験を重ねるごとに円熟味が増すというか、成長していくもの

平戸

石川さんは、幼少のころからサッカーをやっていたんですよね。音楽にシフトした理由はなんですか?

石川

サッカーは本気でやっていて、街のクラブチームにも通っていました。でも、中学生のときに、好きな選手が30歳くらいで引退しちゃって。かなりショックだったんです。並行してドラムもかじっていたので、2つを天秤にかけた。それで、死ぬまで同じことをしたいと思って音楽を選びました。

平戸

スポーツって、ある程度の年齢になると引退の文字が見えてきますもんね。

石川

現役として一生続けるのはなかなか厳しいものなので。

バンドに籍を置いている皆さんが個人活動をするときは、バランスも大事

平戸

音楽は歳と経験を重ねるごとに円熟味が増すというか、成長していくものですしね。それでお聞きしたかったのですが、バンド活動を続けていく上で大変なことはありますか? 

澤村

SANABAGUN.だと僕が一応リーダーなんですけど、大変ですね(笑)。雑務とかもありますし。メンバーが8人もいて、それぞれ我が強いですし、そのときにやりたいことや好きなものが違うので、まとめるのも難しいです。あとは、ライブで毎回お決まりの曲をやっていくなかで、みんなのモチベーションを常に高く保つこと、いい人間関係を続けていくことが一番大変だと思います。

石川

特にジャズは即興音楽ですし、その場で作っていくものですよね。でも、そのバンドの曲をやっていくたびに決まりごとができてしまう。やるたびに自然とそうなるのは、よくもあり悪くもあります。でも、今回は4、5時間くらいしか音を合わせていないメンバーで、よくわかっていないこともあるのに、アルバムを一枚作れた。それはそれでよかったですし、新鮮でした。

平戸

今回僕のアルバムに参加していただいたのは、いわゆる個人活動になりますよね。バンドに籍を置いている皆さんが個人活動をするときは、バランスも大事なのかなと思います。最後に、まだ決まってないんですけど、『HIgher & Higher』ツアーの意気込みを聞かせていただけますか?

中山

皆さんとのライヴで、自分の存在感やベースの面白みを、コンセプトを設けつつクリエイティブに作り上げたいです。

石川

いろいろな事情があって、僕だけレコーディングは別録りでした。なので、ようやく一緒に音を出せる。最高に楽しみです。

澤村

平戸さんと中山くんと初めてリハーサルに入ってから2年くらい経ちましたが、コロナ禍で全然ライヴもできてないし、リハ自体もライヴリハじゃなくて制作リハがメインだったんです。ツアー回ってライヴを重ねていきたいですし、そうすると、曲の解釈も高まって進化していくと思います。それはもうシンプルに楽しみです。

『HIGHER & HIGHER』に参加した他のアーティストのインタヴューは、ディスクユニオンの購入特典に収録。「Evil Vibrations」のカヴァーを歌った笠原瑠斗と上野紗英、「INVISIBLE」のヴォーカルを担当した来海と作詞のタカヒロ モリヤマに、平戸祐介が話を聞いている。

RELEASE INFORMATION

HIGHER & HIGHER
平戸祐介
2022.03.23 RELEASE
AT HOME SOUND

多方面で活躍を見せる日本を代表するジャズピアニスト、平戸祐介 の新プロジェクト、待望のフルアルバム。

前作 『TOWER OF TOUCH (AHS-015)』 で披露された職人芸とも言える、ジャズ~クロスオーヴァー~ファンクを巧みに融合させたサウンドを踏襲しつつも、本作では全体を通してポップ性をより追求した作品となった。
先行7inchシングルにも収録のSoul/R&Bシンガー、笠原瑠斗 と 上野紗英 をフィーチャーした MIGHTY RYEDERS 「Evil Vibrations」 のカヴァーに加え、福岡が生んだ若き女性シンガー “来海” を迎えたオリジナル楽曲 「INVISIBLE」 も本作のトピックの一つ。
「Kaleidoscope」「Shades of Blu」「It got to be FUNKY」など、平戸の根底に流れるブラックミュージックへの敬意溢れるダンサブルな12曲が並ぶ。

Information
HP:http://yusukehirado.net/
twitter: https://twitter.com/hiradospree
Instagram:https://www.instagram.com/yusuke.hirado_fillmoremusic/

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