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ジャズやヒップホップ、オルタナティブ・ミュージックなどを越境しながら、洗練された都会的な街の気持ちの良い夜の空気や、そこで暮らす人々の温かい息吹を感じとれる素晴らしいアルバム『スイート・ナイツ』。音楽大国、南アフリカ発のミュージシャン・コレクティヴ、The Charles Géne Suite-インタビュー

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Text by 板谷曜子 Yoko Itaya(mitokon)
Edit by  宮本剛志 Takeshi Miyamoto / 山口隆弘 Takahiro Yamaguchi(OTOTSU)

 アフリカ大陸の最南、南アフリカ共和国はとても豊かな音楽文化がある国だ。南アフリカ音楽ファンとして日々シーンを追いかけている筆者としては、新しい表現が生まれるのを何度も目撃し、それが過去から現在までずっと続いている大河のようなものであることを発見するので、とても面白いのだ。その面白さに興味を持つ方が年代を問わず増えてきていることを肌で感じている今日この頃だ。
 80年代にはマラービやクウェラ、ムバカンガ、レゲエ、アフロ・ポップ、アフリカン・ゴスペルなどがいわゆるワールド・ミュージックとして注目された。Hugh Masekelaを始めとする巨匠から現在活躍する新世代のアーティストまで、ジャズ大国としての南アフリカに注目しているファンも多いかもしれない。バブルガム、クワイト、バカルディ・ハウス、シャンガーン・エレクトロ、GQOMなど、南アフリカ独自のジャンルに注目する音楽ファンもいるだろう。クラブ/ダンス・ミュージック界では南アフリカのアフロ・ハウスやアフロテックなどの魅力を知る方も多いだろうし、2008年にUKのWARP RECORDSからリリースされたDJ Mujavaの「Township Funk」は今でも現場で愛され続けている名曲だ。現在はディープ・ハウスとバカルディ・ハウスやクワイトなどが組み合わさり進化したダンス・ミュージック、Amapianoがアフリカ大陸を飛び越え世界中で台頭しつつある。そして、まだ一般にはあまり認識されていないかもしれないが、南アフリカにはネオ・ソウル、R&B、ヒップホップなどについても成熟したシーンがある。南アフリカはトラディショナル・ミュージックと欧米のダンス・ミュージックやポピュラー・ミュージックが融合したユニークで革新的な音楽を生み出し続ける土壌を持つ国なのだ。
 そんな音楽大国、南アフリカの主要都市ヨハネスブルグを拠点として活動するネオ・ソウル・コレクティブ、The Charles Géne Suiteのデビュー・アルバム「Suite Nites」の世界初のフィジカルCDがParaphernalia Recordsよりリリースされた。20年来の友人であるNjabulo “ILLA N” PhekaniとNoah Bambergerを中心に、シンガー・ソングライターのLaliboiやRāms、ラッパーのMANGALISO ASIやSam Turpin、南アR&Bを代表するシンガーLanga Mavuso、ジャズ・ミュージシャンのMuhammad Dawjee、ソウェトのバンドUrban Villageの創始者Lerato Lichabaなど、南アフリカのユニークで才能あるアーティストたちが参加し、セッションや制作を経て作り上げられた作品である。また、シンガー・ソングライターのMPHO the GVNやE ^ R T H、Låpsley、プロデューサーのTony Supreme、ドラマー/コンポーザーのMckNastyなどUKを拠点に活動するアーティストたちや、”Nkosi Radical”という実に南アらしい別名義で参加しているアーティストがいるのも発見できる。ジャズやヒップホップ、オルタナティブ・ミュージックなどを越境しながら、洗練された都会的な街の気持ちの良い夜の空気や、そこで暮らす人々の温かい息吹を感じとれる素晴らしいアルバムだ。
 この度のリリースに伴い行われたメール・インタビューで、アルバムの成り立ち、音楽や人間への向き合い方、南アフリカの音楽シーンの問題点まで、彼らはとても真摯にインタビューに答えてくれた。南アフリカのどんな音楽に興味がある人でも是非読んでみてほしい。そして、このインタビューを読んでから改めてアルバムを聴いてみてほしい。様々な音楽を柔軟に吸収し、ジャンルを越境しながら、グルーヴを共有できる仲間たちと支え合いながらヨハネスブルグで生きている彼らの姿をありありと感じることができるかもしれない。

チャールズ・ジーン・スイート『スイート・ナイツ』
2023年1月11日発売
Paraphernalia Records
PAPH-6
CD
ライナーノーツ: 板谷曜子(mitokon)

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