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THE FOOLSやZZZooなどのメンバーとして活動してきたサックス奏者の若林一也が自らの活動の中心となるリーダー・バンド、igloo(イグルー)結成までのいきさつ、ソロとしての経歴、1stアルバムについて、今後の展望、を語る ≪PART1≫

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THE FOOLSやZZZooなどのメンバーとして活動してきたサックス奏者の若林一也。NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の音楽に参加するなど、ソロとしても活動してきた彼は、2022年11月に自らの活動の中心となるリーダー・バンド、igloo(イグルー)を結成した。若林の他、田島拓(g)、岡部琢磨(b)、KAZI(dr)からなるメンバーのうち、KAZIはZZZooで若林と活動を共にしており、カナダのイヌイットが作る雪の家を意味するバンド名はZZZooの中心人物であるヤマジカズヒデが命名。そのファースト・アルバム『PARASITE SYSTEM』は、森川誠一郎(Z.O.A.、血と雫、ZZZooなど)のレーベルであるGrand Fish/Labから今年3月9日にリリースされている。
 今回ファースト・アルバムの音源がサブスクでも配信されることになったiglooについて、森川の立ち会いのもと、若林一也にさまざまなジャンルを越境しつつ、軸足を据えた活動を行おうとしている抱負を語ってもらった。

取材・文:志田歩

写真:秋山典子
編集:汐澤(OTOTSU編集部)


―「舞いあがれ!」の音楽にはどういういきさつで参加することになったのですか?

 以前「魚座どうし」という映画の音楽を担当したことがあるのですが、その時お話いただいたプロダクションからお誘いいただいたんです。ソプラノ、アルト、テナーのサックスをレコーディングに持っていって、1曲につきアルトとテナーを使う曲があったりして、劇中歌のうち8曲、13パートを演奏しました。作曲の富貴晴美さんとはレコーディングの時に初めてお会いしました。

富貴晴美さんはクラシックからロック、ジャズまで幅広くやっているようですが、若林さんも大学ではクラシックを学ぶところからキャリアをスタートさせていますね。

そういう意味ではキャリア的にシンパシーあります。今僕がやっているジャンルっていうのは、インストでもロックだと自分では思っているんですけど。音の出し方とか響きの出し方っていうのは、ジャズの方よりもクラシックの響きの延長線上にあるんですよね。「魚座どうし」をやった時に、本番はアルバート・アイラーみたいなウワーッ!! ていうのを吹く作戦だったんですけど、プロダクションの人から「クラシックもやってきたんだからバッハをやってみないか」という打診があって、バッハも練習してました。「舞いあがれ!」は全部クラシックの奏法じゃないとダメ。クラシックの出し方っていうのはすごい久しぶりに出した感じ。あらかじめ譜面もらって、それを練習して。アドリブっていうことは一切なくて、クラシックだと四分音符にスタッカートが一個ついてるだけでも、曲によって解釈が変わるんですよ。パーンなのかパンなのかみたいな。そういうニュアンスとか微妙なニュアンスの違いとかをやるっていうのもすごく面白かったですね。そういうのは久しぶりに感じました。

iglooのメンバーは、どういういきさつで決まっていったのですか?

コロナ禍でミュージシャンとして新しいことをやってみようみたいな考えがいろいろ出てきて、その中で僕は映像を作って、ライヴでそれを流しながらサックスを吹くみたいなのをやってたんです。そういうことを試行錯誤してるうちに、ソロよりもバンドでやりたいなっていう気持ちになって、その中でZZZooで一緒にやってるKAZIさんのドラムが衝撃的だった。パルスのようにひたすらビートを刻み続けるっていうドラムっていうのに、すごくぐっときて。
 例えば演奏する時に常に僕のサックスで乗らせるだけじゃなくて、めちゃくちゃリズムから離れた表現もしたいなと思ってて、そういう時にKAZIさんが刻んでくると、すごく対比というか、リズムがあってお客さんが踊れてる中で、僕が自由にできるっていう。そういうとこから考え始めて。
 ギターの田島拓、拓ちゃんは、実は僕がTHE FOOLSに入るちょっと前の2015年ぐらいに自分でリーダー・バンドとかやってた時からの仲間。ある時セッションに行ったら、スタンダードのジャズ・セッションの中で、バキバキにかき鳴らしてすっごい衝動的なプレイする人がいて、かっこいいなと思って話聞いたら、バークリー(音楽大学)帰りのギタリストだった。バークリーではスガダイローさんとか、渋さ知らズにも参加している高橋保行さんってトロンボーンの方がいて、その人たちと一緒に尖った感じだったらしいです。僕がTHE FOOLSに入ってからしばらくは離れてたんですけど、またリーダー・バンドをやるってなったら一緒にやりたいなと思って声をかけました。

ベースの岡部琢磨さんとはどんなつながりがあったのですか?

以前、渋さ知らズのファンテイルっていうギタリストと岡部さんとで何かやろうって言ってた時があるんです。実は岡部さん家にはスタジオがあって、その時期はそこで結構練習していたんですよね。

この4人でのライヴは結構前からやっていたようですね。

江古田BUDDYで【WE MIGHT BE WRONG】っていうタイトルの僕の映像のプロジェクトのイヴェントをやっていたんです。メンバーは一緒で、最初は一昨年の8月。その次12月にやって、その次が5月。それからヤマジさんに名付けてもらってiglooっていうバンドの結成ライヴをやったのが、2022年11月15日の下北沢CLUB Que。その時の対バンが僕は印象的で、Queが用意してくれたんですけど、中尾憲太郎さんと吉田達也さんのデュオ。あとオータコージさんっていうドラマーの方と田中邦和さんっていうサックスの方とレピッシュのtatsuさんとの3マンでやったんですけど、どのバンドもすごく熱くて、そこからiglooが正式に始まりました。

レコ発ライヴでは森川誠一郎さんがゲスト・ヴォーカルだったそうですが、インスト・バンドのライヴにゲストでヴォーカルが入るのは珍しいですよね。

森川さんと最初に出会ったのは2017年の【KAPPUNK】 (=パンク系ライヴ・イヴェント)の時だったんですけど、その後の2018年12月にZZZoo(ヤマジカズヒデ/森川誠一郎/田畑満/若林一也/ DEN)を結成した。今回のアルバムに入っている「BEAT SCIENCE」は実はZZZooのために書いた曲なんです。ただZZZooで曲名は女性の名前という決まりがあるので、ZZZooのアルバムでは「Lamia」っていう曲名で、ヤマジさんが歌詞を書いて森川さんの歌も入ってる。でもZZZooではライヴで一回もやったことなかったので、iglooのレコ発の時に森川さんに歌ってもらいました。他にもアルバムの中の「CrissCross」とあとZZZooの「Joan」って曲も僕の作曲だったので、その3曲を森川さんに歌ってもらったんです。

ではここからはファースト・アルバム『PARASITE SYSTEM』についておうかがいしていきましょう。収録されている曲はいつごろ書いたものですか?

実は今回のアルバムでiglooのために書いた曲っていうのは1曲もないんです。今までの自分がやってきた曲をまとめちゃって出し切りたい、このメンバーだったら出し切れるって。だからちょっとだけ自分の今の感覚と違うってところもあるんですけど、今までやってきた曲を全部やろうということなんですよね。

どのような方法で作曲するのですか? サックスでメロディからとか?

いやいやいや。作曲はパソコンとキーボードで。例えばドラムパターンのループを作って、ベースを作って、キーボードでテーマを作ってとか。あとKAZIさんと2人だけでスタジオに入って、KAZIさんにどういうビートパターンが好きかとか、こういうビート叩けますかみたいな打ち合わせをしつつ、それを録るんですよ。大掛かりじゃないですけど、自分のインターフェースとマイクで録って、例えばBPMが180だったら180で叩いてもらって、家に持ち帰ってきてドラムのループを作って、そこからアイデアを広げていく、みたいな。

ドラムのKAZIさんとのコミュニケーションから曲が育っていくみたいな感じですか。

それが一つで、あと僕が自分で全部作ることもあります。例えばロジック(Logic Pro=DTM用の音楽制作ソフト)に入っているドラムパターン、そこでベース作って上を乗せていくパターンがもう一つ。あとは例えばサックスを吹いてフリースタイルでこういうフレーズを吹きたいなっていうのを吹いて、キーボードで弾いてみて、ハーモニーとか付けてみて、それでベースはどうしよう、ドラムはどうしようって考えて、それはKAZIさんが作る場合と、自分一人で全部作る場合がある、みたいな感じですね。僕のアプローチでは、アイデアが出てこない時は、キーボードでずっと弾いてて。ミディキーボードでパソコンに繋いで音色とか色々変えられるので、それで出たアイデアとかもあります。最近のだと、これだったらどういうビートパターンになるかなっていうような。

即興とかジャム・セッションではなく、自宅で組み立てていくのですね。

セッションしてみようよっていうような感じだと、曲ができないっていうか、ただのジャムで終わっちゃうみたいな。やっぱりヴォーカルがあるかインストかって僕は大きいと思ってます。ヴォーカルがあると、節を歌うと曲になっていくっていうのがあるんですけど。結局何が曲かっていうと、僕の中ではテーマがしっかり提示されてるかっていうところが大きくて、ジャムとテーマっていうのは全く別。ジャムしながらテーマは生まれないという、そういう感覚があって。

テーマを見つけるのが大事っていうことですね。

そのテーマっていうのは僕の感覚だと、例えば夜一人で何も聞かなくて頭でイメージする。ベースラインとドラムができてたとしたら、それを頭の中でどういう節とかメロディが聞こえてくるかとか。聞こえてきたら、それをそうっとキーボードと合ってるかみたいな。なんでかって言うと、キーボード触った瞬間にキーボードの音楽になっちゃうから。

なるほど。自分の頭の中にあるものをなるべく純粋な形で出して、それをテーマに結びつけて発展させる。今回のファースト・アルバムの収録曲は、そういうテーマとしてピックアップしてきたものなのですね。ではそのようにしてできた曲は、どういう形でメンバーに提示するんですか。

ファースト・アルバムの時は、拓ちゃんはジャズ・イディオムの人なので全部譜面を渡してたんですよ。全部譜面で書きましたし、こういう感じでやってましたって前にやってた音源を送って、そこから広がる何かみたいな感じでやってきました。けれど次のアルバムを作るにあたっては、もう何回かスタジオに入っているんですけど、デモ音源を送って聞いてもらったり、大まかなコード進行は書いたりするんですけど、譜面というよりは体に入れてみたいな、そういう形でやろうかなっていうふうに進めています。

レコーディングは4人で一斉に?

ドラムとかベースからとかじゃなくて、もう全部セーノで、ですね。重ねたのはギター1個だけかな。ファースト・アルバムは本当に去年の9月に1日で全部録ったんですよ。スタジオは須藤俊明さんに紹介していただいたスタジオで、清瀬にあるスタジオ地球でやりました。

スタジオ・ライヴみたいなものですね。

そうですね。スタジオ・ライヴで出来上がったものをやってみたいな感じ。その後にエンジニアをお願いした須藤さんの家に僕が通って、サックスはどうだ、ドラムはどうだみたいなやり取りしてミックスしていきました。

須藤さんとはどのように知り合ったんですか。

僕が最初にお会いしたのは奇形児にゲスト参加した時。須藤さんは奇形児のドラムを叩いてて、初めて会った時は全然喋んない無口な人だったんですけど、その後しばらくしてヤマジさんと須藤さんとウエケン(上田ケンジ)さんっていうプロデューサーもされている方と3月のバンドというバンドやって、そこから仲良くなったんです。

マスタリングの中村宗一郎さんは?

森川さん経由でお願いしました。

アルバムを森川さんのレーベルから出すいきさつは?

レコーディングした音源を「こういう感じで進行してます」みたいな感じで森川さんにお渡ししてたんです。その流れの中で出していただいて、すごいありがたかったです!

森川誠一郎:やっぱりワカ(若林)はリーダー・バンド作って、一つのバンドでやってた方が、いろんなバンドでセッションで入るよりいいんじゃないかなって僕もずっと思っていたので。

ジャケットに写っている若林さんは、目線を隠したお尋ね者っぽい雰囲気に加え、赤い背景の色が扇情的で、なんかゲバラを連想しちゃいました。

森川さんとジャケットの打ち合わせをする中で、「僕のリーダー・バンドだから僕の顔を出した方がいい」みたいなお話をいただいて、普通に出すんじゃ面白くないなと思ってレイアウトとか自分で考えたんです。色はもともとこの赤い背景付きで、森川さんから送っていただいたんです。

-Part 2- へ続く
(2023年6月22日・浅草にて)

-Part 2-

Release Infomation

BEAT SCIENCE
igloo

 2023.07.05 RELEASE
Grand Fish/Lab


THE FOOLS、ZZZooのメンバーであり、映画『魚座どうし』の音楽担当、Borisが2022年に発表したアルバム『Heavy Rocks』へのゲスト参加など多岐にわたって活動しNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』にも参加しているサックス奏者、若林一也が率いる4人組インストゥルメンタルバンド「igloo」が3月に発売した1stアルバム『PARASITE SYSTEM』の配信を開始。今作は、若林が作曲したオリジナル楽曲全8曲を収録。ジャズ、ロック、ファンク、サイケデリックなど、あらゆるジャンルを横断したカテゴライズ不可能な音楽が詰め込まれている。レコーディングとミックスは須藤俊明氏、マスタリングを中村宗一郎氏(Peace Music)によるもの。その中から先行配信第1弾!


≪SNSアカウント≫

●igloo Twitter

@igloo_19100

●若林一也 Twitter

@waka_sax

●igloo Instagram

@igloo_19100


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