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チョン・ジンヒ(Jeon Jin Hee)『Without Anyone Knowing』日本盤CDリリース記念特別インタビュー

チョン・ジンヒ(Jeon Jin Hee) 『Without Anyone Knowing』 日本盤CDリリース記念特別インタビュー
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韓国のピアノ奏者/シンガー・ソングライター、チョン・ジンヒ(Jeon Jin Hee)。2017年に1stフルアルバム『Piano and Voice』でソロ活動を開始すると、呼吸のように自由な音を模索した日記代わりのピアノソロアルバム『Breathing』(2021年)や、3rdスタジオ・アルバム『Without Anyone Knowing』(2023年)によって日本の音楽ファンの間でも大きな注目を集めるようになった。特に坂本龍一を思わせるモノクロームのミニマリズムに身を包んだ弾き語りのフォークアルバム『Without Anyone Knowing』は、まさしく彼女のディスコグラフィーを代表する一枚といえる傑作アルバムだ。今回、ディスクユニオン内のレーベル〈Think! Records〉より『Without Anyone Knowing』の日本盤CDをリリースするにあたり、チョン・ジンヒに詳しく話を聞いた。

Interview by 山本勇樹(Quiet Corner)
序文・編集 by diskunion

――韓国のどの街の出身ですか?

韓国・ソウルで生まれ、いくつかの地域を経て、現在は再びソウルに住んでいます。

――音楽家になるきっかけ、また重要なエピソードがあれば教えてください。

大学を卒業した後、自分が音楽に感じていた美しさや熱をどこかで表現したくて、観客が一人もいないクラブで演奏を始めました。漠然としたスタートでしたが、会場で出会った何名かの観客が私の曲やピアノの音を聴いて涙を流している姿を見て胸の奥から何かが込み上げてきて、もっと良い音楽家になりたいと思った気がします。その時の気持ちと似た感覚で、今まで活動を続けてきました。

――楽器(作曲など)はどのようにして学びましたか?

4歳の頃からピアノを弾いています。家の事情で本格的に専攻したいと思える余裕はありませんでしたが、4歳でピアノに触れて以来、一度もピアノの前から離れたことはなかったと思います。教会や学校など、ピアノがある場所ではいつも自分が座って弾いていました。

正式に音楽を学び始めたのは19歳の時です。大学進学のために学び、大学入学後は韓国で活動されているピアニストのキム・グァンミン(Kim Kwang Min)教授1に4年間師事し、濃密な時間を過ごしました。そうして常にピアノを身近に置いて生きてきたことで、自然と作曲もするようになったのだと思います。

  1. *韓国のピアニスト。韓国初のプログレバンド「東西南北」、80年代の国民的歌手チョ・ヨンピルのバックバンド「偉大な誕生」のメンバーとしても活動してきた。 ↩︎
Jeon Jin Hee『Without Anyone Knowin』THCD666

――あなたの人生において影響を受けた音楽家(または作品)があれば教えてください。

昔はキース・ジャレットやフレッド・ハーシュの影響を強く受けていました。ジャズを学ぶ中で自然に触れましたが、彼らが音楽で生み出すドラマに強く惹かれていました。30歳頃、韓国の美術館でプライベートで小規模に行われた坂本龍一の演奏を非常に近い距離で観る機会がありました。その演奏の姿と音に、全身が凍りつくほどの衝撃を受けたことを覚えています。音と演奏に対する新しい視野が開かれるきっかけでした。ここ数年はクレイロや青葉市子の音楽を擦り切れるほど聴いています。

――『Without Anyone Knowing』に収録された曲はいつ作られたものですか?また普段、作曲活動はどのような環境の中で行われているか教えてください。

曲を長く寝かせておくタイプではありません。できたらほぼすぐに形にしてリリースしています。そのアルバムに収録された曲も、ほとんどがリリースの1〜2年前に作られたものです。作曲は本当に、インスピレーションが湧いたときに行います。何かを無理にやるのがあまり得意ではなくて、音楽も同じなんです。その時の自分がそのまま音に溶け込んでいてほしい、という気持ちもあります。

――『Without Anyone Knowing』(その他の作品も)には、アナログのテイストが濃く、また温もりを感じさせる音作りだと思いました。この特有の音はどのようにして生まれましたか?

アナログにこだわる人間なので、そう聴こえるのかもしれません。時代はどんどん速く変わっていきますが、私はいつもピアノの前で、ボサついた髪のまんまで作る歌や音こそが、自分の音楽らしいと感じています。おそらく、一緒に音楽を作っている仲間たちも、そんな私のことを100パーセント理解してくれている人たちなので、その気持ちがそれぞれの音としてアルバムに刻まれているのだと思います。その想いが集まって、独自のサウンドとして聴こえているのではないでしょうか。そう受け取っていただきとても嬉しいです。

――『Without Anyone Knowing』はあなたのキャリアの中でどのような作品ですか? また過去作品と通じる部分、違う部分があれば教えてください。

『Without Anyone Knowing』 は私にとって3作目のフルアルバムですが、キャリアの中では初めてしっかりと作り上げられたフルアルバムだと考えています。それまでの作品も最善を尽くして作ってきましたが、これまではチョン・ジンヒというミュージシャンがゼロから成長していく過程のようなものだと、ずっと感じていました。

しかし『Without Anyone Knowing』は、向き合う姿勢も、リリース後に感じた気持ちも、それまでとは少し違っていた気がします。自分自身が音楽と真正面から向き合って勝負をしたい。そんな想いで制作しました。完成したアルバムを聴きながら、これまで嫌っていた自分を少しだけ抱きしめてあげられたような気がしました。

Jeon Jin Hee『Without Anyone Knowin』THCD666

――あなたの紡ぐメロディに声が乗ることでぐっと心に響くものを感じます。あなたにとって歌うことはどのような意味をもっていますか?

私にとって歌うということは、いつも少し恥ずかしく感じていますが、同時に避けられないことでもあります。今まで歌い手になろうと決意したことは一度もありませんでしたが、歌を作ることをやめられないのであれば、歌うことも自然と続いていくものだと思っています。かすかな声を心の奥で受け止めてくれる方々には、いつも感謝の気持ちでいっぱいです。

――(対訳された歌詞を読みながら)歌を聴いていると、あなたの人柄を感じるように優しい気持ちになりました。歌詞を書くことはあなたにとってどのような行為ですか?

歌詞を書くということは、私の時代や、私という人間の人生を記録することだと思っています。とても個人的なものだと思っていましたが、アルバムを発表していく中で、自分の人生が多くの人の人生と重なっていることを知りました。たくさんの共感を惜しみなく届けてくれるファンの皆さんのおかげです。

――アレンジャーとしても参加しているチャン・ドゥルレ(Jang Deulre)とウン・ドヒ(eundohee)について教えてください。

お二人とも韓国で活発に活動しているシンガー・ソングライターで、音楽的にも人間的にもとても愛しています。チャン・ドゥルレさんの歌は、百回聴いても百回涙が出ます。魂を込めて作られる彼女の音楽が本当に好きですし、ウン・ドヒさんはとても感覚的な音楽を作る人です。聴いていると、どこか遠くへ連れて行ってくれるような気がして、よく聴いていますね。二人とも私の友人でもあります。

――今回、『Without Anyone Knowing』が初めて日本盤CDとしてリリースされることに対して率直な気持ちを教えてください。

ディスクユニオンから初めて連絡をいただいたとき、本当に大きな幸せを感じました。海の向こうにある日本を代表するレコードショップで、自分の歌が流れる光景を想像して、とても感動しました。その連絡がきっかけでライブを行い、またこうして日本盤CDとしてリリースされるまで、ディスクユニオンを通じて受け取ってきたたくさんの励ましと愛情のおかげで、ここまで来られたのだと思っています。感謝の気持ちでいっぱいです。いよいよ本格的に…とてもワクワクしています。

――あなたの音楽には、何とも言い難い切なさと愛しさが混じり合って、耳を傾けていると安らかな気持ちになったり、時に目頭が熱くなることがあります。これからの私にとっても大切な一枚になりました。

きっと、心から聴いてくださったからだと思います。私も同じ気持ちで音楽を作っていたのだと思います。私にとっても、このインタビューに答える時間はとても大切で、温かい時間でした。ありがとうございます。

RELEASE INFORMATION

Jeon Jin Hee 『Without Anyone Knowing』

Label: Think! Records
Country: Japan
Format: CD
Catalog No.: THCD666
Release Date: March 25, 2026
EAN: 4988044136083

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チョン・ジンヒ(Jeon Jin Hee) 『Without Anyone Knowing』 日本盤CDリリース記念特別インタビュー

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