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カナダのスラッシュ・メタル四天王の一角: レイザーが、実に25年振りとなる最新スタジオ・アルバム『サイクル・オブ・コンテンプト』をリリース! 総帥デイヴ・カルロとの長編インタビューを敢行!

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ヴォイヴォド、サクリファイスらと共に、長年に渡りカナディアン・スラッシュ・メタル・シーンをリードしてきたレイザーが、25年振り(!)となるニュー・アルバム『サイクル・オブ・コンテンプト』をリリースする。80年代には日本盤もリリースされ、これまでに2度の来日も果たしていることからも分かる通り、ここ日本でもスラッシュ・メタル・マニアから高い評価を受けてきた彼ら。だが一方で、その歩みについて、日本語で詳細に語られたことはなかったのではないか。ということで、ギタリストでリーダーのデイヴ・カルロに色々と話を聞いてみた。とにかく喋りまくりのカルロ。気づいたらインタビューは1万字を悠に超える分量に。

An exclusive interview with RAZOR / Dave Carlo
Interviewed by: Mirai Kawashima (SIGH)

インタビュー・校正: 川嶋未来 (SIGH)


-25年振りのアルバムが発売になります。なぜ25年もの歳月を要したのでしょう。

デイヴ・カルロ (以下DC): まず、もともと俺は1992年にレイザーを解散し、引退したんだ。というのも、俺たちのプレイしていたスタイルの音楽は、80年代ほどの人気がなくなっていて、代わりにデス・メタルや、ストーン・テンプル・パイロッツやパール・ジャムのようなオルタナティヴな音楽が人気になっていた。それで、「誰も俺たちのことなんて気にも留めない」と思って、引退したのさ。知っていると思うけど、97年にレイザーはアルバムを一枚出している。だけど、その時にレイザーとして活動をしていたわけではないんだ。あれを作ったのは、92年の時点であれらの曲を書き上げていて、『Open Hostility』に続くアルバムになるはずだったのだけど、結局バンドを止めてしまったので、レコーディングされなかった。97年にシンガーのボブが、それらの曲を録音しないかと言ってきてね。彼は曲も気に入っていたし、歌詞も書いていて、さらにディールも取れると。それで、レイザーを復活させるわけではなく、ただそれらの曲を録音しようと。アルバムは作ったものの、その時点でも俺はレイザーを復活させるつもりはなかった。97年の時点でも、誰もスラッシュ・メタルに興味なんてなくて、ただボブと自分たちのコレクションのためにアルバムを作ったんだ。2002-03年頃になると、インターネットもハイスピードになったせいで、みんながレイザーを再発見するようになった。音楽がダウンロードできるようになったからね。それで突然レイザーについて色々と聞かれるようになり、ショウのオファーも来るようになった。最初は俺も断っていたんだ。それほど大したことだと思わなかったし。だけど、人気はさらに高まって、より良いオファーも来るようになって、「ちょっと待てよ、インターネットが新たなファン、若いファンを連れて来ているんじゃないか」と思ってね。09-10年くらいになると、もうちょっと真面目に受け止めてみよう、レイザーをまたやってみようと思い始めた。場所によっては、80年代よりも人気があるんじゃないかと思って。それでまたショウをやり始めた。日本にも行ったよ。確か11年だったかな。やがてみんながニュー・アルバムを聴きたいと思っていることにも気づいて、数年考えた結果、16年に新しいアルバムを作ろうと決めたんだ。もともとは17年にアルバムを録音するつもりだったけれど、色々あって遅れてしまった。ところで、答えは物凄く長くなりそうだけど、問題はない? 日本はもう夜だろう?

-いえ、私の方は問題ありません。

DC: オーケー。17年に南米のツアーをやったんだ。とてもキツい旅でね。5日間で5回のショウ。しかもすべて違う国。毎回飛行機での移動で本当に疲れ切ってしまい、みんな体調を崩してしまったんだ。年も年だからね。特に俺は酷くて、顔面の半分が麻痺してしまったんだよ。ベル麻痺というやつさ。さらにその後、帯状発疹にかかった。あれはとても痛いんだ。で、結局17年にアルバムを作ることはできなかった。18年にまた日本に行って、戻って来てから少し休みを置いた。そして俺は6週間でアルバムを書き上げた。それからまたいくつかショウをやって、ドラマーを替えて、でも結局また元のドラマーに戻して、だけどまだアルバムはレコーディングしたくなかったんだ。誰がドラマーになるかはっきりしなかったから。ドラマーも決まり、やっとレコーディングしようと思ったら、今度はパンデミックさ。20年の最初にちょうどレコーディングを始めたんだけどね。それでまた遅れてしまって、やっと1年前にみんなで集まって、アルバムを仕上げることができたのさ。

-今回リラプスからのリリースです。リラプスとの契約はどのように決まったのでしょう。

DC: レイザーの大ファンがいるんだよ。彼は手にレイザーのロゴのタトゥーを入れているほどのファンで、13年頃彼から連絡があって、レイザーの過去のアルバムをリラプスから再発しないかと。アメリカのレコード会社からリリースするのは良いアイデアだと思ってね。アメリカは良い出発点だから。仕事をしてみたら、とてもやりやすくてね。『Violent Restitution』、『Shotgun Justice』、『Open Hostility』を再発して、それでニュー・アルバムの話もしたのさ。

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-ニュー・アルバム『サイクル・オブ・コンテンプト』について教えてください。特に過去のアルバムと比べた場合、どのような作品だと言えるでしょう。

DC: とてもレイザーらしいアルバムさ。過去のアルバムの中に入れてもまったく違和感がない。だけど、サウンドの面ではモダンなものになっていると思う。だけど、やり過ぎてはいない。オーヴァー・プロデュースにはしたくなかったからね。ロウでヘヴィでアグレッシヴ。やたらとオールドスクール、オールドスクールと言いたがる人たちがいるけれど、俺は85年みたいなサウンドにするつもりはない。彼らの気持ちはわかるけどね。バカバカしいだろ、もう40年も経っていて、テクノロジーも進化しているのだから、俺はそれを利用するよ。すでに1曲公開しているのだけど、一部のバカどもが、敢えてバカどもと呼ばせてもらうけど、そいつらが「ドラムマシンを使ってる」なんて言ってやがるんだ。そんなもの使ってねーよ。あれは俺たちのドラマー、ライダー・ジョンソンさ。ああいうことを言われると、本当に腹が立つ。くだらないウソを広めやがって。本当に洗練された耳を持っていれば、あれがドラムマシンではないことがわかるはず。

-ダンコ・ジョーンズ、ロブ・ウルビターニらがゲスト参加しています。

DC: サクリファイスのロブとはとても仲が良くてね。40年近く知っているんだ。84年のレイザーのショウで出会って。一緒にショウもたくさんやったし、80年代には一緒にツアーもした。だから、彼に参加してもらったら素晴らしいだろうと思って。ダンコ・ジョーンズは、ずっとレイザーをサポートしてくれている。彼はとても人気があるからね。レイザーのことを色々と褒めてくれて、とても助かっているよ。彼のことが大好きだから、ぜひゲスト参加してもらいたかったんだ。素晴らしいヴォーカルを入れてくれたよ。

-やはりゲスト参加しているマイク・カルロというのは息子さんでしょうか。

DC: いや、俺の兄貴だよ。3歳年上でギタリストなんだ。素晴らしいソロを入れてくれた。俺とは音楽の好みが少々違っていて、ハードロックが好きだけど、俺ほどヘヴィじゃない。AC/DCやレッド・ツェッペリンなんかが好きなんだ。ブルースとか。彼もずっとギターを弾いてきているから、ぜひアルバムに参加してもらいたかったんだ。

-同じくゲスト参加しているブラッド・ギブという人物についても教えてもらえますか。

DC: 彼はバンドの友達なんだ。ラジオ局のマネージャーで、ボブと仲が良い。彼もレイザーをサポートしてくれている人間のひとりで、ぜひバック・ヴォーカルに参加してもらいたかった。大好きな人たちに参加してもらいたかったんだよ。だから、オリジナルのドラマー、マイク・エンブロにもバック・ヴォーカルをやってもらったよ。

-タイトルの『サイクル・オブ・コンテプト』にはどのような意味が込められているのでしょう。

DC: 俺たちも年をとってきて、人生において人々は、同じ問題に何度も直面するということに気づいた。レイザーのメンバーだけでなく、誰しもがね。サイクルなんだよ。良い状況になったと思ったら、またタフな問題がやって来る。それが人間というもので、誰しもが経験すること。‘コンテンプト’が意味するところは、俺たちはみな、繰り返し起こる問題にフラストレーションを抱え、怒り、失望しているということ。レイザーにとって、不正とか正義というのはとても大きなテーマなんだ。公平でないと思うことについて戦うということ。カヴァー・アートワークは、さまざまなリアクションを呼んでいるよ。気に入ってくれる人もいるし、そうでない人もいる。気に入らない人は、何が気に入らないのか言ってくれないけれど。多くの人は気に入っているみたいだけどね。とてもオールドスクールだろ。ああいう女性が出てくるカヴァーは、最近あまり見かけない。ああいう女性を登場させると、女性蔑視だと叩かれることを恐れてね。だけど、あのカヴァーの意味するところは、真ん中にいる男が自分のシェア以上のものを奪おうとしているということ。金も女性も必要以上に奪い、そして体重も必要以上に重い。そして『Shotgun Justice』のキャラクターが、俺のギターでそいつの頭を叩き落としている。そいつが気に入らずにね。真ん中の男は貪欲のシンボル。だけど、成功すること自体が悪いんじゃない。資本主義自体は間違っていない。西洋の国々、日本も資本主義で成り立っているよね。それに則ってビジネスをやることは間違いじゃないんだ。だけど、問題は、日本はどうかわからないけれど、アメリカでは一部の人が富を独占し、多くの人が何も持てなくなっている。格差は広がっているんだ。一生かかっても使いきれないほどのお金を持つ人がいる一方、路上で物乞いをしなくてはいけない人がいる。

-歌詞の内容は、全体的に欲望や不正についてということでしょうか。

DC: ほとんどはね。だけど、俺たちはエンターテイナーでもあるから、いつでもシリアスである必要はない。ユーモアのある曲もあるよ。今回は3人が歌詞を書いた。俺が6曲、シンガーのボブが2-3曲、ベースのマイクが3曲。マイクが書く曲は、いつも破滅、世界の終わりみたいな内容なんだ。破壊とかアルマゲドンとか。彼は80年代からそういう曲を書いていて、“Instant Death”“Evil Invaders”“City of Damnation”とかね。今回は“フレイムズ・オブ・ヘイトレッド”やタイトルトラックがマイクの手によるもの。俺の歌詞はさっき言ったみたいな正義とか不正について。ボブの歌詞は、たいてい俺のに近い。搾取されている人のこととか。

-そもそもどのようにレイザーは結成されたのでしょう。

DC: レイザー以前にもたくさんのバンドをやっていて、当時俺はベース・プレイヤーだったんだ。だけど、レイザーをやるにあたり、マイクもベーシストだったので、俺はギタリストに転向した。レイザーの直前にやっていたバンドはポイズンで、もちろんあのポイズンとは関係がないよ(笑)。あれよりも先で、もっとずっとヘヴィなバンドだった。AC/DCやローズ・タトゥーみたいなスタイルをやっていたんだ。マイクが新しいバンドをやるということで、俺も一緒にやることにして、というのも、ポイズンのメンバーたちはプロのミュージシャンになるつもりはなくて、ただバンドをやって、あとは学校にいって他の職業につくつもりだったから。俺とマイクは音楽でやっていくつもりだったからね。それが1983年のこと。それでヘヴィでハードエッジなバンドにしようと。レコード・ディールを待つのではなく、自分たちでレコードを作ろうと考えた。というのも、色々なバンドと話したのだけど、彼らはデモをレコード会社に送っていて、だけど、それは大量に送られてくるデモの中のひとつにしかすぎない。俺たちは、レコード会社に自分たちの作品が売れるということを証明したかったんだよ。だから俺たちは『Armed and Dangerous』を自主制作して、これはアルバムではなく22分のEPなのだけど、これで自分たちの作品が売れるということを示したのさ。実際セールスは良くて、レーベルからのオファーも来た。最初に来た良さげなオファーを受けてしまったのだけど、もっとよく考えれば良かったかもしれない。アメリカのレーベルとサインするべきだったと思うんだ。実際はカナダのレーベルと契約してしまったのだけど、彼らはアメリカのレーベルほどコネクションを持っていなかった。そのせいで、ツアーのチャンスなども少なかったのだと思う。

-バンド名をレイザーとしたのはなぜですか。

DC: 記憶が正しければ、70以上の候補があったはず。1983年に俺とベースのマイク、ドラムのマイクと部屋に集まって、ヘヴィだと思う名前のリストを作ったんだ。こっちの方がいい、いや、こっちの方がいいと、候補をどんどんと消していって、最終的に2-3まで絞った。それで結局レイザーに決まったんだよ。

-結成当時はどんなバンドからインスピレーションを受けていたのでしょう。

DC: 当時一番大きな影響を受けていたのはモーターヘッド、初期のレイヴン、最初の2枚のアルバムね、それから当時出たばかりだったエキサイターのファースト・アルバム。この3バンドからの影響が大きかったな。

-『Armed and Dangerous』は後の作品に比べると、スラッシュ色が薄いというか、もっとヘヴィメタルよりでしたよね。

DC: その通りだね。

-その後スピードアップしていくきっかけは何だったのでしょう。

DC: とても良い質問だね。だけど、答えはとてもシンプル。きっかけはスレイヤーさ。1984年、レイザーはスレイヤーと一緒にプレイしたんだ。レイザーは、当時カナダで最もヘヴィなバンドのひとつだと考えられていて、その時スレイヤーが『Haunting the Chapel』のツアーでやって来たんだ。それで、一緒にプレイするヘヴィなバンドが必要だということで、レイザーがやることになった。スレイヤーに会って、控室も共有して。当時のスレイヤーは本当にヘヴィだった。おそらく最高の時期だよね。『Hell Awaits』や『Reign in Blood』以前のスレイヤーさ。スレイヤーに触れたことは、俺にとって啓示のようなものだった。本当にヘヴィで。サウンドチェックもショウも見て、これまで見た中で最高のバンドだと思った。サウンドチェックでは会場内に俺しかいなくて、すぐ目の前で彼らが『Hell Awaits』の曲をプレイしていた。まだアルバムが出る前の話さ。1984年だからね。“Hell Awaits”や“Kill Again”、“Hardening of the Arteries”なんかをプレイしていたのを覚えている。素晴らしい思い出だよ。そうやってレイザーは影響を受けたんだ。俺たちも“City of Damnation”“March of Death”“Escape the Fire”みたいな曲をやり始めた。スレイヤーみたいなグルーヴの曲をね。だけど、彼らと違ったのは、俺たちはブラック・メタルではなかったという点。サタニックなものではなく、破壊やヘッドバンギング、パーティなんかについて歌っていたから。

-あなたたちは85-88年のわずか4年間で、5枚ものアルバムをリリースしています。85年は2枚アルバムを出していますよね。これほどのペースで作品を作っていたのはなぜなのでしょう。

DC: ペースが早すぎだよ。理由は100%、強欲なレコード会社さ。とても興味深い内容だから、きちんと説明しよう。自分たちで『Armed and Dangerous』を自費でプレスして、これがとてもよく売れたんだ。トロントのレコード屋に行って、とりあえずこのレコードを置いてくれ、お金は売れたら払ってくれれば良いからって。それからお店でかけてもらうためのアルバムも1枚ただで渡して。そんなことをしているうちに、ディストリビューターから連絡が来るようになって、ヨーロッパのファンも欲しがっていると。それで一気に50-100枚が売れるようになってね。そしてアティック・レコードからアプローチがあって、サインをしたんだ。俺たちは84年の時点ですでにニュー・アルバム用の曲を完全に書き上げていて、『Escape the Fire』という11-12曲すべて新曲のアルバムになるはずだった。つまり『Armed and Dangerous』とはダブりが無しのね。ところがアティックは、「それはできない。『Armed and Dangerous』がよく売れているのは知っている。レイザーのファースト・アルバムには『Armed and Dangerous』からの曲も入れるべきだ」って言い出したんだ。それで、4曲を入れ替えるハメになった。すべて金のためさ。アティックはメタルのレーベルじゃなかったからね。ジャズやタンゴも手がけていたから、レイザーのことなんて特に気にもかけていなかったのさ。つまり『Executioner’s Song』は、『Armed and Dangerous』と『Escape the Fire』の曲を混ぜ合わせたアルバムだったんだ。そして次に彼らは、『Armed and Dangerous』や『Escape the Fire』でボツになった曲を使ってセカンド・アルバムを作ろうとしたんだ。これには本当にムカついたよ。俺としてはボツになった曲を使ってセカンド・アルバムなんて作りたくない。最悪のアイデアさ。金のことしか頭にないんだ。仕方がないので、俺は彼らにお願いをしたのさ。急いで曲を書いて、急いでレコーディングをするから待ってくれ、大きな予算もいらないと。結局『Evil Invaders』はわずか3日間でレコーディングされた。2日で録音して、1日でミックス。だから『Evil Invaders』の演奏にはラフなところがある。間違いを修正する時間がなかったからね。そういうわけで、『Evil Invaders』は重圧の中で、急いで書き上げたアルバムなんだ。それでまた『Evil Invaders』がわりと売れたものだから、奴らはまた古い曲をサード・アルバムとして出すと言い出しやがった。ありえないだろう? 古い曲をサード・アルバムとして出したら、まったく進歩していないどころか退化していることになってしまう。それでまた奴らに懇願しなくてはならなかった。本当に頭に来たよ。それで『Malicious Intent』を書いてね。だけど、その頃ドラムのマイク・エンブロが個人的なことや健康上での問題を抱えていてね。ドラムを叩くのも苦労していたんだ。それでプロデューサーのウォルター・ツウォルに、彼は良い人間なんだけど、あれは間違いだった。『Malicious Intent』のドラムが良くないのは、ハイハットを叩いている回数が十分ではないからさ。それはウォルターがマイクにハイハットを叩く回数を半分にしろと言ったからなんだ。その方がずっと簡単だからね。だけど、それだと明らかにパワーを欠いてしまう。俺たちはまだ若くて、愚かにもプロデューサーの言うことを聞いてしまったんだ。明らかに間違いだった。彼の言うことは聞くべきではなかった。そのせいで、あのアルバムは本来あるべきパワーが無くなってしまったんだよ。だけど、それはマイクのせいじゃない。マイクのことを酷いドラマーだと批判した人もいたけれど、それはフェアじゃないよ。彼はプロデューサーの言うことを聞いただけだし、実際彼は前の2枚のアルバムのように、ハイハットを倍叩くこともできたのだから。そんなわけで、1年の間に3枚のアルバムも作ったのさ。85年の4月に『Executioner’s Song』、85年の10月に『Evil Invaders』、86年の4月に『Malicious Intent』。古い曲をリリースすると脅されて、こういうことになってしまったんだ。だけど、そのことは公にできなかった。レーベルを表立って攻撃すれば、ドロップされてしまうかもしれないからね。そうなったらキャリアの終わりだった訳だし。

-『Custom Killing』は11分の曲が2曲入っているなど、異色の作品になっています。これはなぜだったのでしょう。

DC: サード・アルバム『Malicious Intent』と次の『Custom Killing』の違いは、ヴォーカリストのステイスのせいさ。彼はレイザーの方向性が気に入っていなくて、もっとヴォーカリストとしての技量を見せつけたがっていたんだ。つまり、スクリームだけでなく、歌いたがっていたんだ。だけど残念ながら、これは彼にも言ったのだけど、みんなが彼を気に入っているのは、彼がスクリームをするからなのさ。彼の歌ではなく、スクリームが気に入っていたんだ。だから、「人気が欲しいなら、スクリームをするべきだ」と伝えたんだけどね。だけど、彼は気に入らず、いつも自分の意見が十分に反映されないことを不満に思っていた。歌詞は書かせていたけれどね。彼の歌詞は、何というか詩的で、ダイレクトな内容でない。キングだ、クイーンだ、騎士だ、甲冑だ、なんていうもので、彼の書く内容は、英語でいうところの‘cryptic’なものだった。つまり、何を言っているのかわからないということ(笑)。そういう歌詞を書くバンドも多いからね。彼のスタイルを批判するつもりはないけれど、とても非現実的なものだった。何について歌っているのか分からないこともしばしばあったよ。マイクや俺の歌詞は、何についてかすぐに分かるからね。まあ俺の初期の歌詞も「頭を振れ!」なんていう、あまり優れたものではなかったけれど(笑)。それはともかく、『Custom Killing』は、俺が曲を書いてはいるのだけど、ステイスの注文を聞いて、構成などを決めていったんだ。俺は通常自分ひとりで曲を書くんだ。他の人からのインプットは欲しくない。それが俺のスタイルだから。だけどあの時ステイスは、俺と一緒に部屋にいて、曲を書きたがった。彼は“Last Rites”や“Shootout”“Snake Eyes”“Going Under”などの歌詞を書いて、曲は彼と一緒に同じ部屋で書いたんだ。彼はとても曲に満足していたけれど、俺は気に入らなかった(笑)。彼は「レイザーは世界で最もビッグなバンドではない。つまり君のやり方よりも良い方法があるかもしれないということ。今回は俺のやり方を試してみてはどうか」と言っていてね。一理あると思って試したのだけど、当時あのアルバムの評判はあまり良くなかった。今はもっと評価されているけれどね。当時は「何なんだ、このゴミは?」みたいに言われたよ。あのアルバムを欲しがる人なんていないと思ったし、まさか再発されるとも思わなかったのだけど。そうそう、あのアルバムでは彼にロゴも変えさせたんだ。あれも彼のアイデアで、彼の友達がデザインしたんだよ。「いいだろう、どうせならロゴも変えて、どうなるか見てみよう」と思ってね。『Custom Killing』の良い点は、あのアルバムのおかげで『Violent Restitution』が生まれたというところさ。『Violent Restitution』では、すべて俺のやり方でやった。ステイスには「君のやり方は試した。今度は俺のやり方でやらせてもらう」って言ってね。100%俺のやり方でね。ファーストや『Evil Invaders』ですら、100%俺のやり方ではなかった。ほとんど俺のやり方だけど、他のメンバーからの貢献もあった。だけど、『Violent Restitution』では、誰の意見も聞かなかった。『Custom Killing』の件で頭に来ていたからね。それで「失敗したら、俺を責めてくれ」と言ってね。でも結局、あのアルバムが一番売れたレイザーのアルバムさ。

-その後ステイスはバンドを抜けてしまいます。

DC: それは彼が『Violent Restitution』を気に入らなかったからさ。彼はとてもあのアルバムを嫌っていたよ。酷いアルバムだと思っていて、実際俺にもそう言っていた。あまりにヘヴィすぎるし、パンクっぽすぎるし、歌詞も嫌いだと。でも、彼はバンドを辞めたわけじゃないんだ。確かに彼はハッピーではなかったけれど、辞めたわけじゃない。人には辞めたと言っているようだけれど。真相を話すよ。彼と数ヶ月ほど連絡がつかなくなってね。ある日、サクリファイスのマネージャーから電話が来たんだ。「ヘイ、何でステイスはインファーナル・マジェスティと一緒にやってるんだ?」って。インファーナル・マジェスティは知ってる?

-もちろん知っています。

DC: 俺はあんまり知らないバンドなのだけど。「何でステイスがインファーナル・マジェスティで歌っているんだ」と聞かれたのだけど、もちろんそんなことは知らなかった。レイザーを辞めるとも言われていなかったしね。それで俺はステイスに電話をする代わりに、ボブに連絡したんだ。ステイスにはウンザリしていたから。『Violent Restitution』を気に入っていなかったから、歌詞もロクに覚えていなくて、ライヴでは適当に歌っていたし。その時のテープもたくさん残っているよ。ボブのバンド、SFHは1988年にレイザーのオープニングをやって、デモ・テープももらっていて、彼の声、人間性がとても気に入っていたから、彼に電話をかけたんだ。彼は突然のオファーに驚いていて、1-2日答えを待ってくれと。結局数日後、加入させて欲しいと連絡がきた。その後ステイスは、ボブがレイザーに加入したことを聞きつけて、電話をかけてきたんだ。「新しいシンガーを入れたんだって?」って。だから俺は「ああ、君はインファーナル・マジェスティのヴォーカルになったんだろ?」と言うと、「いやいや、彼らとはちょっとジャムをやっただけだ。でも彼らのやっていることは気に入らなかった」と。だけど、サクリファイスのマネージャー: レイ・ウォラスによると、実際はステイスはインファーナル・マジェスティに加入したものの、他のメンバーと人間的に衝突したらしいんだ。ステイスが主導権を握ろうとしてね。つまり、そういう問題がなければ、彼は間違いなくインファーナル・マジェスティに加入していたのさ。俺にバレないようにインファーナル・マジェスティと一緒にやってみて、上手く行けばレイザーを辞めて、そうでなければレイザーに戻る。それが彼の計画だったんだよ。彼ははっきりレイザーに戻りたいと言ったわけではなかったけれどね。それで俺は言ったんだ。「君は俺のスタイルが好きじゃないだろう。ヘヴィすぎるからね。だからこういうスタイルが好きなシンガーを入れたんだ」って。別に敵同士という訳ではなかったけれど、違う道を進むことにしたのさ。少なくとも俺はそう思っていた。20年間ね。ところが14年、彼はカナダのウェブサイトのインタビューを受けて、俺の悪口を言いまくったんだ。本当にビックリしたよ。まだ友人で、ただ音楽的な部分で不一致があっただけだと思っていたから。後から刺された気分さ。だから、俺も反撃したのさ。かなり意地悪なことも言ったけれど、一切のウソはなく、100%真実だけを語った。一方の彼はインタビューを受けて、ウソを言った。とても不愉快だったよ。内輪の話をするのはバンドのためにならないと思っていたから、俺は何も言ってこなかったけれど、彼が公にしたのだからね。よく「シープドッグがバンドに戻ってくることはないのか?」なんて聞いてくる人もいるけど、ありえないよ。レイザーのことを何もわかっていないのさ。それにボブは34年間も在籍してるんだぜ? そういうことを言うのはボブへの侮辱だよ。ステイスの歌が好きだというのは構わない。俺自身も彼の歌は好きだよ。そうじゃなきゃ、バンドに入れはしなかった。それに彼は『Violent Restitution』でも良い仕事をしたし。彼はアルバムを気に入らなかったけど、金を払ったからね。良い仕事をしたんだ。US$1,800を払ったんだ。今となっては大した金額ではないかもしれないけど、当時としてはそれなりのものさ。俺も同じ金額を受け取って、俺は彼よりももっとずっと多くの仕事をしたけれど。彼はインタビューでは一銭ももらえなかったなんて言っているけど、冗談じゃない。俺は今でも彼に支払ったUS$1,800のチェックを持ってる。だからその写真を撮って、彼にメールしたんだ。何ならこれをインターネット上にアップしようかって。彼は俺だけでなく、他のメンバーについても色々言っているよ。

-80年代を振り返ってみて、一番のお気に入りのレイザーのアルバムとなると、どれでしょう。

DC: 80年代、つまりオリジナルのレイザーの時期ということであれば、俺のお気に入りは『Violent Restitution』。その次が『Shotgun Justice』かな。

-オールタイムのお気に入りのメタル・アルバムを3枚教えてください。

DC: 少し考えさせてくれ。難しい質問だから。素晴らしいメタルのアルバムはたくさんあるからね。そうだな、まず間違いないのはスレイヤーの『Hell Awaits』。それからスレイヤーの『Reign in Blood』。スレイヤーが2枚続いてしまって申し訳ないけど、この2枚はトップのメタル・アルバムさ。3枚目を選ぶのは不可能だから、お気に入りのアルバムをいくつか挙げるよ。モーターヘッドの『Ace of Spades』。素晴らしいアルバムさ。メタリカの『Kill ‘Em All』も大好き。レイヴンの『Wiped Out』も。素晴らしいアルバムだね。俺は年をとっているから、70年代の作品、AC/DCの『Highway to Hell』が出た時は本当に良いアルバムだと思ったね。79年当時はブッ飛ばされるくらいヘヴィだったんだ。『Back in Black』も大好きだった。今では彼らもビッグだけど、当時はアンダーグラウンドだったんだよ。『Let There Be Rock』からAC/DCを追いかけていて、まだみんながAC/DCを発見する前のことさ。ちなみに最初に聴いたバンドはキッスだった。俺は58歳だからね。長いことこういう音楽を聴いているんだ。

-では最後に日本のレイザー・ファンにメッセージをお願いします。

DC: これは真実だと誓うよ。俺は自分の国、カナダが大好きだ。だけど、地球上で一番好きな国となると日本なんだ。日本以上の国に行ったことはない。もちろん、日本にも特有の問題があることはわかっている。日本について語るYouTuberをフォローしているから、色々な問題について知っているよ。元首相の事件は酷かったよね。あんなことが日本で起こるのかと、恐ろしくなったよ。信じられなかった。日本人の生き方には正しいものが多いと思うんだ。働きすぎみたいな問題はあるのだろうけど、日本にはリスペクトというカルチャーがある。他の国々も見習うべきものさ。レイザーはリスペクトを重んじるバンドだ。俺たちを呼んでくれたプロモーターも、長髪でGジャンにたくさんのパッチをつけていたけれど、ホテルの従業員も警官も、きちんと彼に頭を下げていた。これがリスペクトだよ。世界にはこういうリスペクトが必要なんだ。テレビをつけるとニュース番組をやっていて、アナウンサーはニュースを読む前におじぎをする。リスペクトさ。とても感動したよ。だから日本が好きなんだ。日本へのメッセージは、ぜひまた日本に行って、ファンのためにプレイをしたい。日本中でプレイしたいんだ。大阪も大好きだけれど、東京や他の都市でもプレイしたい。他にもレイザーというバンドがいるみたいだけど、テクノとかダンス・バンドみたいのがね、だけど俺たちこそが本物のレイザーなのさ。君たちが大好きだ。ニュー・アルバムを買って、楽しんでもらいえるといいな。日本のファンのためにプレイするのが、俺の喜びなんだと知って欲しい。だから『大阪最高』というライヴ盤も出したんだ。もちろん大阪だけじゃない。日本すべてが最高なのさ。


RELEASE INFORMATION

RAZOR / CYCLE OF CONTEMPT
CD: DYMC-6086

ヴォイヴォド/アナイアレイター/サクリファイスと共にカナダ4大スラッシュ・メタル・バンドの一角と目される超ベテラン。1983年にデイヴ・カルロを中心に結成、デビューEP『Armed And Dangerous』(1984)~1st『Executioner’s Song』(1985)~『Evil Invaders』(1985)と畳みかけるリリースで一気にカナダ・シーンの最前線に躍り出た。1992年の解散までに7枚のアルバムをリリース、1997年に1枚スタジオ作を発表後、21世紀に入りライヴ活動を再開。2度の来日公演を含むワールド・ツアーは各箇所で熱狂を呼んだ。再結成以降の順調な活動の中でメンバー自らも数年前から言及していた音源発表だが、遂に新作アルバムが完成。実に25年振りとなる復活作は往年のキレを持ったリフとサウンドが全編を占める。スラッシュ・メタル/スピード・メタルの王道を進む仕上がりであり、これまでのファンの期待を決して裏切らない。

Webstore: https://diwproducts.net/?category_id=62c6d94ea06d5c4dd929e479

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