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高揚感のなかにある深い内省と自問自答 ―Thiiird PLACE 7インチ・シングル『PARTY IS ALIVE』発売記念インタビュー (前編)

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Thiiird Placeがファースト・アルバム『This is Thiiird Place』以来、およそ2年ぶりとなる新曲「PARTY IS ALIVE」を7インチでリリースする。表題曲「PARTY IS ALIVE」はその名の通り“パーティー”を題材としたアップリフティングな楽曲。このバンドのライヴでも今後のハイライトを飾っていくであろう、最高のソウル・ナンバーだ。同時に「PARTY IS ALIVE」は“この世界でパーティーを続けることの意味”と向き合った、極めてシリアスな楽曲でもある。それはBサイドに収録されたゴスペル・ソウル「こころを失う前に」にも言えることで、この7インチには高揚感のなかに深い内省と自問自答が一貫して聴き取れる。そんなシングル「PARTY IS ALIVE」にあてて、今回はThiiird Placeのスガナミユウ、Yuima Enya、井上真也、Cross Yuの4人に話を聞いた。その対話を前後編に分けてお届けしたい。

インタビュー:渡辺裕也

Photo by:natsume

構成:森崎昌太

◇ARTIST:Thiiird Place

◇TITLE:PARTY IS ALIVE / こころを失う前に

◇LABEL:BRASS ROCKERS RECORDS

◇RELEASE DATE:2026年1月21日(水)

◇PRICE:¥2,500 (Tax in)

◇Cat No:BRR-009

——「PARTY IS ALIVE」はパーティー映えする煌びやかな楽曲であるのと同時に、パーティーをすることへの迷いや疑問も込められていますよね。この楽曲が生まれた背景を教えていただけますか。

スガナミユウ

仰る通り、これは“パーティーを続けていくことの意味”を考えていくなかで出来た曲なんです。この何年かでコロナがあったり、パレスチナで虐殺が続いていくなかで、 自分たちはどうやってライヴやパーティーを日常的に続けていけばいいんだろうと。言ってしまえば、音楽というものは衣食住とかの次にくるものであって、そういう意味では必要がないものかもしれない。でも、そういう必要がないものこそ生きることにとっては重要だし、生きる意味の本質の一部は、むしろそこにあると思うんです。だから、そういう場を作っていくためにはどうすればいいんだろうって。

——実際、この曲では“このパーティーは誰かを救えるの”といった自問自答の言葉が何度も繰り返されます。

スガナミユウ

私個人としては、パーティーには別に意味がなくてもいいと思ってるんです。だけど、何気ない日常のパーティーの繰り返しも必ず何かになっているとも思っていて。一晩のパーティーでDJが沢山の曲をかけて、毎晩のその積み重ねが一つの場所に刻まれていくことによって、何かしらのエネルギーが生まれている気がしていて。そのエネルギーをみんなが家に持ち帰って、次の日を生きる糧にしてると思うんですよね。一瞬一瞬の切り取りには別に意味がなくていいんだけど、その積み重ねは必ず何かになっている——私はどこかでそう信じていて、それが社会と接続していけばいいな、みたいな気持ちで書いた曲でもあるんです。

——曲の原型を作ったのはスガナミさんですか?

スガナミユウ

自分がメロディと歌詞を用意して、それをもとにみんなで作りました。最初の段階ではもうちょっとしんみりした感じだったんですけど、マサヤを中心に、みんなが元気な曲に仕上げてくれて。

井上真也

僕はこの曲をユウくんに聴かせてもらった段階で「これはもう絶対に明るい曲にしよう」と思ってました。

スガナミユウ

私が作る曲は、しんみりしがちだからね(笑)。

——具体的にはどんなサウンドを目指したのですか。

井上真也

当初はもうちょっとエレクトロな感じにしようかなと思ってました。でも、最終的にはアース・ウィンド&ファイヤーというか、80’sのディスコ/ブギーみたいな感じになってきて。やっぱりバンドでナマでやるから、こういうところに落ち着くのかなと。どっちにしても絶対にしんみりさせたくないってことだけは、めっちゃ意識してました。

Yuima Enya

一度、リズムをラテン化させようともしたよね?その名残がパーカッションに出てると思う。みんな音楽に詳しい人ばっかりだから、スタジオでも「ここはこんな感じにしたい」みたいな話がずっと出ていて。

スガナミユウ

間奏のコード進行はマサヤがつけ加えてくれたんだよね? そこで曲の印象がかなり変わったというか。

井上真也

あのコードとパーカッションの部分は、MONDO GROSSOとbirdの「LIFE」みたいにしたかったんだよね。で、ホーンのメイン・エンディングに戻ってくるみたいな。

——メンバーがさまざまな要素を混ぜ込んでいった結果として、「PARTY IS ALIVE」はダンサブルなパーティー・ソングに仕上がったと。

井上真也

アイデアは色々でてくるんです。ただ、Thiiird Placeはあれもこれもできるってバンドではなくて、このメンバーでやるなら最終的にこうなるよねっていう。それがいいんですよね。考えすぎなくていいというか。まあ、一応“アフロ・ソウル・ジャズ・バンド”を標榜してるから、迷ったらそこに近づければいいのかなって(笑)。

——歌詞についてはいかがでしたか? ユイマさんは、スガナミさんが書いてきた歌詞をどのように受け止めたのでしょう。

Yuima Enya

音楽的なことはその時に集中して出てくきたものをとにかく出す感じだけど、歌詞に関してはやっぱり「どう歌えばいいんだろう…」みたいな感じだったかな。やっぱり歌う立場としてはいろいろ考えるというか、複雑な立ち位置ではあったかもしれない。

——となると、全体の方向性に関してはスガナミさんがある程度ディレクションを取るのでしょうか?

スガナミユウ

いや、まったく(笑)。この曲は途中で輪唱というか、別メロが入ってくるんですけど、そういうのもユイマがスタジオでパッと作るんですよ。元々そこまでメロディーの変化がない曲だったけど、そこにメンバーが新たな色をつけてくれたり、曲に動きをつけてくれるので、自分はスタジオに曲を持っていった段階で、もうほとんどやることがないんです(笑)。みんなが作ってくれるんで。

Yuima Enya

あれもまた曲を明るくするための一環だよね。ポップさを出そうっていう。でも、歌詞の内容を昇華するのはちょっと時間かかったかな。

井上真也

でも、やっぱり後押しっていうか、バンドをまとめ上げるのはユウ君なんですよ。

スガナミユウ

まとめるというか、アレンジの時はとにかく盛り上げてます。「それ、いいね!」って(笑)。それ以上に自分がするってことはあんまりないんですよ。バンドはみんなで作っていくものなんで。

Yuima Enya

優しいんですよ、みんな。普段出会う人たちのなかでも、特に優しい部類の人たちがThiiird Placeには集まってる。あと、ユウさんは自分で言わないけど、“ユウさんイズム”みたいなのがあるんだよね。で、みんながそれを勝手に感じとっているというか。

井上真也

うんうん、わかる。

——その“ユウさんイズム”というのは?

Yuima Enya

あらゆる人を受け入れようっていう姿勢。バンドで音楽をつくるときも、ユウさんはその姿勢をすごく大事にしている。で、マサヤくんはすごくプロフェッショナリズムが高いと思う。

井上真也

たぶん、一番厳しいよね?

Yuima Enya

そうだね。でも、すごく合わせてくれてるんですよ。それはむっちゃ感じるし、こうしてみんなと会う回数を重ねていく中で、お互いが歩み寄れるようになってきたよね。

スガナミユウ

遠慮がなくなってきてるよね、みんな(笑)。

井上真也

僕はみんながやりたいことをうまく引き出せる場になればいいなと思ってて。それがイビツだったとしても、みんなが「いいね」ってなればそれでいいし、逆に「これはちょっとどうなん?」ってなったら、みんなでまた考えればいい。もしこれが上手い人だけで集まってるようなプロフェッショナルな集団なら「じゃあ、出来ないならクビで」みたいなこともあるのかもしれないけど、バンドはそうじゃないんで。

——そもそも、この13人ものメンバーはどのようにして集まったんですか。

スガナミユウ

基本的にはさっきユイマが言ってた通りですね。優しくて根が良い人たちと一緒にやろうとしたら、こうなったっていう(笑)。せっかく時間を割いて集まるんだから、誰もイヤな思いはしないようにしたい。本当にそれが一番で、あとはそれぞれできることをうまく組み合わせていくっていう。

Cross You

でも、やっぱりその中心にはユウくんがいるんです。僕がこのバンドにサポートで加わったのは2年くらい前からなんですけど、当時から僕は他にもいろいろサポートをやってたので、さらにバンドを増やすつもりはなかったんです。でも、やっぱりユウくんに誘われたのは大きくて。ユウくんのことはGORO GOLOの頃から知っているし、やっぱり彼の持つ言葉に引っ張られたっていうのはありますね。

スガナミユウ

今回の7インチは(Cross) Youくんのレーベル=BRASS ROCKERS RECORDSから出すんです。そもそも7インチを出そうという話になったのも、Cross Youくんがレーベルを新たに始めたことがきっかけだったので、それは今回ものすごく重要でしたね。

Cross You

新たに始動するレーベルの第一弾としてThiiird Placeの7インチを出せることになったのは、僕もすごく嬉しくて。これからも面白いことをやっていきたいと思ってます。

——話を楽曲に戻すと、「PARTY IS ALIVE」には“誰かの痛みの上で今日も踊るの”という歌詞があって。恐らくこれはミュージシャンやDJ、そしてオーディエンスとも共有されている感覚だと思うのですが、これはスガナミさんがLIVE HAUSを運営する中で感じたことでもあるのでしょうか。

スガナミユウ

めっちゃあります。振り返ってみると、コロナ禍で移動が制限されたときもそう。人が集まることの難しさに直面したことによって、集まる場所があることの尊さも改めて感じたり。そういう場所を求めていこうというテーマで始まったのがThiiird Placeなんですけど、また状況が変わっていく中で、自分たちの表現はどうあるべきかってことを考えざるを得なくなったんです。

——具体的にはどんなきっかけがあったのでしょうか。

スガナミユウ

それこそSNSとかを見ていると、アパルトヘイトや虐殺の中で圧倒的な暴力を受けている子供たちの映像がリアルタイムで目に飛び込んでくるじゃないですか。で、それを見てる瞬間も自分は普通に生きてるっていう。そういう感情がぐちゃぐちゃになっちゃうような瞬間が1日に何回も起きているような状況で、自分たちは生活していかなきゃいけないわけで。それこそ自分は東北の出身なんで、3.11の震災以降はそういうことがどんどん日常的になってきたように感じてて。そうやって社会や世界と自分が接続しているような感覚があるから、自然にこういう歌詞が出てきたのかもしれない。

井上真也

僕もユウくんには賛同していて。だからこそバンドに誘ってもらえて、こうして社会活動——僕、バンドは社会活動だと思ってるんで、それに参加できるのが嬉しいんですよね。で、「PARTY IS ALIVE」もそうした活動の一環というか。世界は急に変わらないけど、それでも自分達に何かできることは何かあるのだろうかと考えていく中でできた曲なんで。そういう葛藤みたいなものが、この曲では表現できたと思う。

——「PARTY IS ALIVE」の冒頭には、フィールド・レコーディングで雑踏の会話が収められていて、あれもすごくいい演出ですよね。パーティーと生活が地続きになっていることがあそこで表現されていると感じました。

スガナミユウ

あれはマサヤのアイデアなんだよね?

井上真也

うん。マーヴィン・ゲイの“What’s Going On“ね。よくある手法ではあるけど。

——あれはどこで録ったんですか?

井上真也

ここ(LIVE HAUS)です。ライヴの終了後、BGMがDJからBluetoothスピーカーに切り替わる時に一瞬だけ音がなくなるので、その瞬間に「ちょっと待って!」って。

スガナミユウ

パーティーって、音が途切れる瞬間がないじゃないですか。その時はちょうどceroの髙城晶平さんがDJしてくれてて、ラスト・ソングが終わった瞬間にレコーダーを回したんだよね。

井上真也

そうそう。これを録るために宴会を開こうかって話もあったんですけど、やっぱりここでパーティーをやってる時に録りたいなと。あとから自分で聴き返したときも、その方が絶対に面白いなと思ったし。

スガナミユウ

クラブって大きな音で音楽がかかってるから、音楽が鳴り止んだ瞬間はみんな大声で話してるんじゃないかって話になったんだよね。耳元で叫ぶようにして話してる声が拾えるんじゃないかって(笑)。そういうのも面白いなと思う。なんていうか、思い出だよね。

井上真也

うん、思い出って大事だよ。「これ、ここで録ったんだよな」「ここのアレンジ迷ったんだよなぁ」みたいなことをみんなで集まって何回も聴けるっていうのも、録音物の良さだと思う。


————後編へと続く

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