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ハードコアレジェンド達によるバンド「D・O・T」が、彼らを旧くから知る人物達とのインタビューで最新作『BOKU NO TOMODACHI』を様々な角度から紐解き、語る。
~ライター・遠藤妙子~

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D・O・Tの6年ぶりの4作目のフルアルバム『BOKU NO TOMODACHI』、いよいよ本日2023年6月7日リリース!平和を希求した前作『Birds Eye View』は、空を飛ぶ鳥の視線で社会や人間を描いた。今作はそのタイトル通り、あなたの近くにいる人のことかもしれないし、あなた自身のことかもしれない。人と人、一人一人と向き合って作った曲だからリアルでシンプルでストレート。同時にそれらを超えていく想像力を与えてくれるし、普遍性あるメッセージが伝わってくる。人は一人一人みんな違う。だから決して一人ではない。争いや差別などなくしていこう。

あぶらだこのベーシストHIROSHI、ex.あぶらだこ、LIP CREAM、LAUGHIN’NOSEのドラマーMARU、そしてex.THE NURSEのヴォーカリストNEKO。ハードコア・レジェンド達は自身の経験を土台にしつつ、まだ見ぬ境地に突き進む。『BOKU NO  TOMODACHI』はベースとドラム。そして歌だけで、オリジナリティ溢れる世界を作り出した。

ジャケットも最高なので、ぜひ、CDを手にしてほしい。

なお、HIROSHIさんが4月に脳卒中を発症、療養中のため、インタビューはMARUさんとNEKOさん2人に行なった。読んでいただければわかるように、HIROSHIさんの想いに溢れた本作、HIROSHIさんからのメッセージも最後に掲載しています!

インタビュー・テキスト:遠藤妙子
編集:汐澤(OTOTSU編集部)


——ある意味、思い切った作品ですよね。

NEKO:あ、そうですね。思い切ってますね(笑)。

——以前、the原爆オナニーズのTAYLOWさんにインタビューしたとき、「パンクロックはシンプルだからこそ最も想像力が広がる音楽」って言っていて、その言葉が浮かんできました。

NEKO:わ、それは嬉しいです。ありがとうございます。

——ベース、ドラム、ヴォーカル。それだけのシンプルな編成なんだけど想像力を搔き立てられる。これまでゲストでギターはいたけれど結成当初からギターレスなわけで…、

MARU:最初は俺とHIROSHI、二人の様子をみていたHIROSHIの弟が途中からギターで入ってくれて2~3本?のライブ、LOFTでのウラスジとか渋谷ネストとかでやりました。

——あ、そうなんですか!

MARU:その後もギターがいたりいなかったり。正式メンバーではなくゲストとしていろいろな人に弾いてもらって。

NEKO:モモリンはライブだけじゃなく音源でも弾いてくれて。

MARU:モモリンはゲストからちょっと踏み込んでもらって。

NEKO:2ndアルバム『a hardcore date with neko』ではモモリンにギター弾いてもらってるし。ただ関わり方として、ベースとドラムがあって、そこにギターが乗ってるっていう。ドラムとベースがやっぱり基本なんです。

——この編成にこだわりが?

MARU:ギタリストが言うには、「ベースにあそこまでやられたら」って(笑)。

——確かに。楽器の編成にこだわりがあるというより、HIROSHIさんのベースだからこそで。HIROSHIさんのベース、MARUさんのドラム、そしてNEKOさんのヴォーカルだからこその編成で。

NEKO:そうです。大事なのは編成ではなく「人」ですよね。

MARU:この3人だから出てくる面白さがあるんですよ。

——今までの作品ではHIROSHIさんとMARUさんがギターを弾いている曲もありました。でも今回は楽器はベースとドラムだけ。

NEKO:そうなんです。ギターはまったく弾いてなくて。

MARU:まず3人でできることにこだわったんです。

NEKO:こだわったし、それが自然なことだったし。「ベースとドラムでいいんじゃない?」「そうだね、そうしよう」って自然に。

MARU:そのぶんコーラスに重きを置いて。俺達の肉声で(笑)。

——凄い歌ってますもんね。MARUさんもHIROSHIさんも。

NEKO:凄い歌ってますよね(笑)。

MARU:普段のスタジオでも思いついたら声を出して、誰かが声を出したら、誰かがまた声を出したり。その場で影響しあって、呼応されていく感じで。

——最少編成だからこそアイディアが沸いてくるんでしょうね。

NEKO:そうだと思います。

——音も歌詞もストレートですよね。

NEKO:前作もそうだと思うんですけど、もっとストレートですね。

——前作は俯瞰からの視点で。

NEKO:そうです。タイトルが『Birds Eye View』で空から見てる感じ。

——今作はもっと近くにいる人のことなんじゃないかって、クラスメートだったり隣の家の人だったり…、

NEKO:そう、そうです。今作の歌詞には実体があるんですよ。

MARU:うん、face to faceっていう感じですよね。メンバー間で向き合って、、。

——face to face、まさに!前作は戦争反対であったり平和への希求がテーマにあったと思いますが、今作は1曲目の「CHILD WARNING」の「皆んな違って 皆んないいね 違っているから 皆んな素敵」という歌詞、それがテーマにあると思います。

NEKO:そうです。どの曲にもその思いはあります。ホント、人間って皆んな違ってるから素敵なんですよ。

——その思いは、それぞれの仕事だったり生活から出てきたんでしょうか?

NEKO:まず今回、毎回そうなんですけど、HIROSHI君が曲をどんどん作ってきたんです。それを追いかけるように私とMARUちゃんが、歌詞を作ったりドラムを考えたり。

MARU:HIROSHIは前作を終えてからずっと曲作ってましたからね。

NEKO:HIROSHI君の中で、曲と同時にテーマも決まってたんです。「共生」っていう。「障害」って言葉は使いたくないんですが(以下「障がい」)、障がいのある人に対して、こう、見ないようにしたり、差別的な感情や行為をなくしていきたい。共生していきたい。あらゆる差別に反対というテーマがHIROSHI君の中でハッキリしていたんです。

——差別に関して社会の状況は酷いですし。

NEKO:そうですよね。私たちも問題意識は強く持っているつもりです。ただ歌詞が出てきたのは実体験からが大きいです。HIROSHI君も私も、そういう子ども達に接する機会が多くなって。

MARU:HIROSHIの職業がそっちに移行したっていうのもあるのかな。

NEKO:HIROSHI君は長いことサラリーマンをやってたんですけど去年に辞めて介護の資格をとって。同行支援と介護という自分がやりたかった仕事をやり出して。昔からそういう仕事をやりたかったそうです。

——NEKOさんはエジプト舞踊の教師でもあり鍼灸師でもある。

NEKO:鍼灸マッサージの資格と共に機能訓練指導員(リハビリの専門)という資格があるので、通所介護施設で脳卒中後遺症方やパーキンソン病の方の個別リハビリや体操指導をしたり、あと東京都の盲ろう者(眼と耳の不自由な方)の方の通訳・介助の資格を活かして仕事をさせていただいたり。あと自分にも眼の難病があることがわかったり……。ダンスの仕事のほうでも、自閉症の方や発達障がいの方に呼ばれて踊ったこともあります。中でも大きな影響を受けたのは…、うちの近くに養護施設があるんですけど、何年か前に「一緒にご飯食べる人募集」ってあって行ってみたんです。ご飯食べて子ども達と触れ合って。そしたら、「隣の施設には知的障がいを持つ子ども達がいる。そこが人手不足なのでお手伝いできませんか?」って。行くようになって、かけがえのない時間を過ごさせていただきました。学ぶことばっかりで。

——MARUさんも鍼灸師としてずっと仕事をされています。患者さん、と言っていいのかな。

MARU:人によりますね。脳出血を発症した後、定期的にケアするためにみえる方、癌で闘病中の方などのケア。様々な背景を持った方々のストレスケア。

NEKO:HIROSHI君が医療系バンドだなって言ってたね(笑)。HIROSHI君が持ってきたテーマはすぐに共感できて。テーマや伝えたいことがあったので、歌詞もストレートになったんです。

——今の職業に就いて経験したことによって、考え方は変わりましたか?

MARU:自分は鍼灸師はそこそこ長いですからね。考え方が変わったかどうかを意識したことはなくて…。でもやっぱり、必要とされること、人が必要だと思ってくれることに気持ちが向くようになりました。昔は人のことなんか考えてなかったのに(笑)。今は人が幸せになってくれたら自分も幸せ、そういう価値観になってます。昔の自分に聞かせたい(笑)。音楽に関しても、お客さんが喜んでくれたらこっちも嬉しい!って思いますしね。

——MARUさん、ライブでメチャメチャ楽しそうですもんね!(笑)

MARU:自然にそうなるんですね。80sのハードコアやってた頃は歯を食いしばってやってたけど(笑)。

——今は激しいドラミングでも笑顔が多い(笑)。

MARU:それは嬉しいです。お客さんが喜んでくれて、バンドにフィードバックして。実際、ライブでいい空気が循環していく感じが凄くするんですよ。

——D・O・Tのライブはヘヴィで激しい面も勿論あるけど、優しさがあるしあったかいんですよね。

NEKO:ありがたいことにそう言われることが多くて。友人がライブに来てくれて「みんなニコニコして楽しそうで。幸せそうだった」って言ってくれて。嬉しいですね。

——NEKOさんの存在感や声。ハードコア的な激しさがあるんだけど包容力もあって。同時に子どもの声のように響き渡るんですよ。

NEKO:叫べば叫ぶほど子どもみたいな声になっちゃうんです(笑)。

——真っ直ぐなのにいろんな表情があるし、いろんなことを想像させられる。曲も、タイトルチューン「BOKU NO TOMODACHI」はポップだけど、明るいだけじゃなく暗さが混在していて。明るいのか暗いのかわからなくなる感じが好きです(笑)。

NEKO:どっちなんだいっていうね(笑)。

——希望や未来を感じさせつつ、切なさや哀しさ、葛藤もあって。「SPRING HAS COME」の「もういいかい?まだだよ」って歌詞も、春になって外に出て行くんだって思ったら、最後まで「もういいかい?まだだよ」。

NEKO:まだ外に出ていないんですよね。今じゃないな、もうちょっと時間がかかるかなって。「SPRING HAS COME」の作詞はHIROSHI君で、自閉症の子がモチーフになっているんです。私もそういう子と接しているのでとてもわかります。ただ、私にはこういう歌詞は書けないなぁ。

MARU:その曲に関してはHIROSHIの人となりが出てるよね。繰り返し出てくる「もういいかい?まだだよ」の流れ。もうね、ミルフィーユのような層がね。

NEKO:そうそう。感情の層ね。

MARU:層、そう(笑)。行ったり来たりして折り重なっていく。そんな気持ちの流れ。まさにHIROSHIだなって。

NEKO:私だったらそういう言葉、そういう歌詞は出てこない。

MARU:絶対出ない(笑)。ボーイズ・マインドなんだよね

——実はHIROSHIさん自身が投影されてる。

MARU:そうだと思うな。

NEKO:次の曲、「HEART OF GOLD」は私の歌詞なんですけど、この曲は、手を繋ぐって行為に凄く時間がかかった子がいるんですよ。その子は誰とも手を繋げない。物とかもすぐに投げちゃう。たぶん手を繋ぎたいんです。でも繋いだことないから反射的に拒否しちゃう。それが何ヶ月か経ったら繋げたんですよ!一つのことでも簡単ではない、簡単にできる人ばかりではないんですよ。でもね、時間をかけたら手を繋げたし、半年ぐらいかかって一緒にブランコも乗れたんです。お母さんもびっくりしてました。その子は喋らないんですけど、歌うと真似するんですよ。私が作った歌を歌ってくれてリピートしてくれた。会話は成り立たないけど歌ってくれる。もう、感動しちゃいますよね。「HEART OF GOLD」はその子を思って歌詞を書きました。

——音楽って、こう、突破口になりますよね。

NEKO:なります。凄いです。治療の現場で、認知症の方で最近のことは覚えてなくても歌は覚えてるんですよね。背中をマッサージしながら歌うと、後に続いて歌ってくれる。さらに先を歌ったり。この歌の二番も知ってるんですね!ってびっくりしちゃう。そういう経験を、ここ数年で何度もして。改めて音楽の力も実感してます。

MARU:緊張した心を柔らかくするとか、閉じてる心を開くとか。

——「TIC TIC TIC」はどういうところから?

NEKO:これはチック症という、多動や思ってもみない言葉をバーっと言っちゃったりする症状が出てしまう子がいて。私たちも癖で身体を動かしたり、チック症みたいなとこあるよねって、そういうとこからできた曲で。

MARU:貧乏ゆすりしたりね。病気の症状は細分化されてるわけで、全くの健常者かといえばそうでもなくて、おかしなとこは誰でもあると思うんです。だからそれを「おかしなこと」として捉えるのは、それこそおかしいことだなと。

NEKO:障がいってグラデーションで、ここからは障がい者って区切りがあるのも変な話で。誰でも何かしら障がいがあって、個性の一つだと思うんです。

——そう思います。ただ、自分の症状は病気だと知ったほうが安心する人もいるだろうし、病気じゃなく個性だって思うほうが前向きになる人もいるだろろうし。

NEKO:そうですね。考え方は一人一人違いますよね。一括りせずに、一人一人と向き合うことが一番大事だと思います。

——あぁ、そうですね。まさしく今作のテーマでもありますよね。で、「TIC TIC TIC」は、そういう症状を持つ人がいるってことを知らなければ、もしかしたらダンスが止まらないっていう、音楽やダンスの自由さを歌った曲ってとれるかもしれない。

NEKO:あぁ、なるほど。言葉の表面だけならそういう解釈もできますよね。それはいいと思うんです。いろいろな解釈は嬉しいです。私が思ったことと同じような解釈をしてくれたら嬉しいですけど、そういう経験をしていない人、そういうことを知らない人にも届くのが音楽の素晴らしさなので。「TIC TIC TIC」をずっとダンスの曲だと思ってくれていてもいいし、ある時、気づいてくれてもいいし。もしかしたらいろんな解釈ができるように、説明的ではないシンプルな歌詞にしているのかもしれないです、無意識のうちに。

——その分、インタビューではこうして話してくれるのは嬉しいです。

NEKO:やっぱり歌詞ができた背景は知ってほしいし、こういう子ども達がいるってことを知ってほしい。そういう実感を伴った歌詞であることも知ってほしいですしね。実感が伴っていないと歌えないですから。

——次の「LIAR」はすぐに口ずさんでしまうメロディかと思いきや、思わぬ展開をしていく。

NEKO:ウソつきの「LIAR」と竪琴の「Leier/Lyre」をかけてるんです。Leierは20世紀の初めにドイツで誕生した竪琴のような楽器で、とても綺麗な音で。HIROSHI君がLIARって噓つきって言葉をテーマにくれて、Leierだ!って空から降ってきたように浮かんで。それで私が歌詞を書いて。HIROSHI君は、竪琴?関係ないじゃんとか言ってたけど、やっていくうちに上手いこと融合しました。あ、Leierを演奏して入れたわけではないです、Leierの音は入ってないです。

——「LIAR」の歌詞も、嘘を言っていても実はそれは真実なんだという…?

NEKO:虚言というか、そういう症状が出てしまう子を思った歌詞です。でも嘘だなんて言えないですよね、その子には真実なんだし。その症状は、関係ないことを言ってしまったり同じことを繰り返すことが多いんですね。言葉の意味より響きだけで話す人もいて。

MARU:ノンバーバル。非言語的なコミュニケーションで。

NEKO:たぶん自分をわかってくれってことじゃないんですよ。ただ響きが楽しくて、それがコミュニケーションのツールになってる。そういう言葉の使い方があったんだ!って。

——なんか、音楽的ですね。

NEKO:そうなんですよ。いつ会っても「今何時?」って聞く子がいて、時間が知りたいわけじゃないんですよ。「今何時?」って響きと、「何時だよ」って返ってくる、それが楽しくて何度も何度も。といっても正解なんてわからないんで、ホント勉強です。

——後半のモノ凄いHIROSHIさんのベースも、その話を聞くとより説得力がありますね。

NEKO:凄いですよね。

MARU:ある種、無心なんだと思うよ。いろいろ考えつつ無心で弾いてる。

——その感覚ってやっぱりハードコアからも…

NEKO:そうかもしれないです。ナチュラルハイみたいな。

MARU:ハードコアって速いし激しいから何も考えられないんですよ。

NEKO:全身全霊なんで他のことが一切入らないんですよね。

——俺を見ろ・私を見ろっていう自意識が、実はない。

MARU:そうそう。自意識が強そうな音楽だけど、実はそんなこと意識してられない。

NEKO:見るほうもやる方も魂のみっていう。そういうとこが、ハードコアを好きな理由だったのかなって。

MARU:エゴを飛び越えたとこにあるっていうね。

——その感覚は今も変わりませんか?

MARU:楽曲ありきですよね。「LIAR」のグッと落ちるリズムも好きだしね。埋めるんじゃなくて空ける。そこに充実感のある空気を作っていくことが理想だし目指してますね。ゴムのように伸びる感じとか。ドラムだけでもいろいろな表現ができますから。あぶらだこの頃は、チマチマ刻んでられるか、全部オカズ入れちゃえ!って感じだったけど、今はベーシックな8ビートでも音と音の間の、音のないところでのスリルや緊迫感に魅力を感じてます。

——当時から変化していっても、やっぱり共有してきた音楽があるのはいいですよね。

MARU:それはホントにそうです。

——だからD・O・Tの音はいわゆるオルタナとは違って、それ以前のニューウェイヴであったり、勿論ハードコアの初期の感じであったり。

MARU:FUGAZIとかね。

——そうそう!時代を共有して原点をわかり合えて、唯一無二になっていってるなと。

NEKO:D・O・T自体が長いですしね。私が加入したのも2011年の秋ですから。D・O・Tとしての歴史も長くなってる。

——今作は子ども達との出会いからできた曲が多いですが、「I’M FROM ANCIENT」は、NEKOさんが思っていることをそのまま歌ってるなと。

NEKO:確かにそのまんまですね。みんなで踊って楽しくなろうってね。出会った人、経験、これまでのことが集約できました。HIROSHI君が曲を持ってきて、凄くカッコイイ曲なので最後まで歌詞が思いつかなかった。結局一番シンプルな気持ちが出てきちゃいました。「ANCIENT」って言葉はHIROSHI君のアイディアなんです。東田直樹さんという、私もHIROSHI君も大好きな作家で詩人の方がいて、自閉症で発達障がいなんです。東田さんはYouTubeでも発信をしていて、「僕は古代人なんだよ」って。彼の「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」って本には影響を受けています。東田さんの本などから私は、人間にとって必要で大事なものを古代人は持っている。人間は自然の一部で、連綿と古代から続いている命の上に立っているってことを、現代の人は忘れているんじゃないかって思ったんです。そういうことも、この曲のきっかけになっています。

——今作はストレートだしリアルだし、同時に想像力が広がるし普遍的なメッセージもある。最後の曲、「回転木馬」はまさに現実が永遠になっていくような。

NEKO:HIROSHI君の歌詞で、自分がいなくなっても連綿と続いていく命がある。希望の曲だと思います。

——かつてNEKOさんはエジプト舞踊を習得するためエジプトに行かれて、なんか繋がってるんじゃないかなと。

NEKO:通じると思います。1stアルバム『Desert Of Tomorrow』の「I・B・M」という曲に「in sha allah」ってアラビア語が出てくるんですが、「神の思し召しのままに」って意味なんです。エジプトの人は待ち合わせの約束をする時も、「in sha allah (神の思し召しのままに)」って言うんですよ。未来は神のみが知るという様な意味で。行くつもりだけど、未来は何があるかわからないし、ある意味行けたら行くよ的な……(笑)。そして何かあって、遅れたり行けなくても「Ma aresshu(気にするな)」えっ⁉︎そっちがそれ言うの⁇みたいな〜。なんていうか、とても大らかですよね(笑)。こちらも気が楽になることも多いです。価値観や常識は人それぞれで……。

——あと「僕」って歌ってる曲があります。NEKOさんが「僕」と歌うのは、性別など関係ないってことでしょうか?

NEKO:あ、それはHIROSHI君が歌詞を作った曲だからです。そのまま歌った、それだけです(笑)。でもそうとっていただくのはありがたいです。性別とか国籍とか人種とか年齢とか、大事なのはそんな属性などではないですからね。

——そしてジャケットと歌詞カードも最高です。この絵は誰が?

NEKO:HIROSHI君が絵を描いたんです。こういうコンセプトっていうのは私からも言って、そしたらいいの描いてくれて。もう、想像以上にいいよね。

MARU:うん。凄く気に入ってます。

NEKO:緑の地球と太陽と。いろんな、本当にいろんな人。動物も。みんな楽しそうで。紙ジャケにして。

——最高です。HIROSHIさんが復帰するまでライブはどうなるんでしょう?

MARU:やります。

NEKO:今作は録音は別々に録っているとこが多いので、HIROSHI君のベースの音をライブで使うことができるなと。ステージには私とMARUちゃんの2人だけど、HIROSHI君の音を重ねて。で、HIROSHI君の等身大のパネルを作ろうかと(笑)。

——最高!(笑)

MARU:いろいろ準備しなきゃね(笑)。何よりHIROSHIに元気になってもらって。

——それまでみんなアルバムを聴きこんで。では最後に。

NEKO:歌詞も曲もシンプルなのはダイレクトに伝えたいがゆえなんです。同時にシンプルだからこそ、言葉の意味とか深みとか背景にあるものとか、何重にも感じられるものがあると思います。表面的なとこで理解してもらっても嬉しいし、細かいことをいろいろ考えていただいてもありがたいし。人は一人一人みんな違うので、それぞれ自由に聴いて、できれば長く聴いていただいて、育っていくようなアルバムになっていけば、とても嬉しく思います。


≪現在療養中のメンバーHIROSHIにもメールでのインタビューに答えてもらったので、その内容をご紹介しよう。≫

——「CHILD WARNING」の歌詞にあるように「皆んな違って 皆んないいね 違っているから 皆んな素敵」が今作のテーマだと思います。HIROSHIさんは最初からテーマを描いていたそうで、そのテーマのきっかけを。 

 HIROSHI:テーマは障がいのある人でも「みんな一緒だよ!」ってこと。障がい者じゃなくてもいろんな人がいるんだよ。「CHILD WARNING」のタイトルは先にできていて、歌詞は後から、NEKOが思う様な歌詞にしたけど、ピッタリだったと思う。

——音はメンバー3人のみ。しかもギターを弾くこともなく、ベース、ドラム、ボーカルだけにした理由は? 

 HIROSHI:前作3枚はトリオなんだけど、ギターを入れていた経緯があるんだよ。本作は絶対ギターを入れないで録音しようとした。あとギターを入れないとどうなるかという興味があった。3人で演奏した通り、何もかもありのままにお見せしたかったんだ。ロックバンドっていうのは必ず4人編成であるべきものじゃないんだよ。ギターがいなくてもいいんだよ。

——「LIAR」の最後のベース、最高です!どういう発想? 

HIROSHI:一部か二部どちらが先にできたか忘れたけど……。二部はなんとなくルーパで遊んでいたいたんだけど、レコーディングの時になると、このフレーズの後にはこのフレーズだと、結構考え込みながら、作ったよ。

——CDのジャケットはHIROSHIさんが描いたそうで。HIROSHIさんの想いが伝わってきます。

HIROSHI:ジャケットだって自分達で作ってもいいんだよ。


インタビュー:遠藤妙子(ライター)

ライブハウスでガッツリ活動するバンドを中心に執筆するライター。

DOLL、diskunion発行followupの後、bollocks、rooftopなどに掲載。

▼WEB掲載の記事まとめ

https://gottogetaway5963.seesaa.net/

▼Twitter

https://twitter.com/TaekoEndo


Release Information

BOKU NO TOMODACHI
D・O・T

2023.06.07 RELEASE
ANKH records


D・O・T / BOKU NO TOMODACHI (Official Music Video)


【D・O・T】

2009年、初期あぶらだこのリズム隊であるHIROSHIとMARUの2人により結成。その後2011年、世界初の女性ハードコア・パンクバンドとして80年代に活動したTHE NURSEのNEKOを新ヴォーカリストとして迎え、現在のメンバーで本格的に始動。

Twitter:https://twitter.com/DOT_official3

▼各界からのコメント前編

▼各界からのコメント後編

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