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ぎがもえか、『all ok』リリース記念!スペシャルエッセイ「ファンタジーを吸い込む」

GigaMoeka_Apohto
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ぎがもえかの1st full Album『all ok』が、2023年10月25日に発売された。記念すべき作品の完成を祝して、OTOTSUではぎが本人による書きおろしのスペシャルエッセイを公開。ぜひ、アルバムを聴きながら、ゆっくりお楽しみいただきたい。

文:ぎがもえか
編集:清水千聖 (OTOTSU編集部)


ファンタジーを吸い込む

異様とも言えた猛暑の記憶が薄れてくるほどには涼しくなり、
道を歩けばやさしい金木犀の香りがふんわりと風に運ばれてくる。

秋になり、わたしは依然として、ゲームに熱中している。

依然として…というのはわたしの中にしかない認識なので説明させてほしい。

ことの始まりは夏だった。

自身のファーストアルバムのリリース準備にじりじりと追われる日々だった。
決して忙しくないスケジュールのはずなのに、なんだか愛用しているノートには
「あれをやること」「これを終わらせておくこと、明日までに!」といった走り書きで日々埋め尽くされていた。その端に、偶に「楽しんで頑張って」と書いてあったりして、
自分で見返しても笑ってしまう。

そんな中、音楽のことから頭を離せるような趣味(べつに、音楽のことを考えることが苦だったということはないのだが…)が、自分にはないことに気づいた。

本屋さんを巡って本を集め読書する…喫茶店で休日を過ごす…長時間散歩をすること…
どれも好きなことだけれど、絶妙に音楽のスイッチが入りやすい。でもやはり、だらだらとやることに追われるのではなく、切り替えがほしい。

そんな話を夫にしている中で挙がったのが、ゲームだった。

ゲームとわたしの縁というものは遠く、小学生の頃にはわが家に3DS、ポケモンのソフトなどがあり、2歳年上の姉と一緒に使っていたのだが、ポケモンを捕まえたりバトルしたりするセンスが余りにも乏しく、自分が触るとせっかく姉が進めてくれたストーリーを巻き戻ししてしまうな…ということに気づき、触らなくなった。

友人と集まってやるマリオカートは楽しいのだが、わたしだけ何度も逆走してしまうことがあり、「あなた、逆行ってますよ!」という看板が点滅する。
どうして自分でもそうなるのかが謎だった。
ゲームをやるよりも、姉がテレビゲームをすいすいと進めるのを横でじっと見ているのが好きで、記憶が深い。

さっそく夫と、買い物のついでにヤマダ電機のゲームコーナーへ出向いた。ゲームコーナーに足を踏み入れる機会がまずなかったので、ワクワクした。
任天堂switch Liteを選ぶ。
ソフトは…久しぶりだし、穏やかなピクミンにする?と思っていたけれど、目立つように置かれていた「星のカービィ ディスカバリー」を手に取った。
パッケージに描かれていたエフィリン(いつもカービィのそばを飛んでいて冒険を導く、水色で耳の大きなキャラクター)が可愛いな、という理由でカービィを選んだ。
合計すると決して安い値段ではなかったので、しっかり楽しむぞー大事に使うぞ、と鼻息荒く購入した。

帰宅し、夜ごはんを食べ、夫に見守られながらカービィを始める。

が、が、画面が美しい…凄い… というか…可愛すぎる……!!涙

まず、画面が、映像が、ものすごく綺麗で深くて美しいことに驚きを隠せなかった。
ゲームって、今こんなことになってるん…?!時代の技術にひっくり返りそうだった。

とにかく細かいのである。海の深い部分、木の茂っている部分の裏側、スーパーマーケットが舞台のステージのくすんだ窓ガラス…
木が茂っていて、その先がどのように深いのか、葉っぱは何色でどういう動きで揺れる
のか、そういった隅々まで意識が行き届いていることに気づく。

ゲームを考える人というのは、その世界がどうなっているのか、どうなったら面白いか、美しく見られるか、そういった想像力で溢れている人たちなのだろうな…と思った。頭が上がらない。どういったものに影響を受けるのだろう。映画をよく観たりするのだろうか。あるいは日常生活や都心の景色にアンテナを張っているのだろうか。考えれば考えるほど素晴らしい。

そして、可愛い。カービィがとにかく可愛いのである。涙

わたしが買ったディスカバリーでは、様々なものを吸い込んで、カービィがその姿形に変身して冒険を進める。三角コーン、自動販売機、車、水道管…
「え、これ吸い込むの?!カービィ大丈夫?」と心配してしまうほどには、何でも吸い込む。
switchには写真を撮る機能があり、ゲーム中の一コマを、いわばスクリーンショットできる機能があるのだが、なにか吸い込むたびにその機能を使わずにはいられなかった。

すっかりカービィが大好きになってしまったわたしは、カービィや仲間たちのぬいぐるみを買って部屋に並べたり、ステッカーをスマホケースに挟んだり、ポーチを愛用したりしている。子どもの頃から存在を知っていたが、自分がこんなにカービィを好きになる日が来るとは。。

そういったわけで、わたしの”趣味を作ろう作戦”は、カービィのおかげで見事に大成功したのであった。しばらくして「星のカービィ デラックス」も購入したわたしは、カービィの冒険を進めることですこし忙しい。

ちなみに夫はゼルダの伝説を購入し、ものすごい集中力を発揮しながら冒険に励んでいる。
わたしは日頃、夫の穏やかな顔ばかり見ていて、怒った姿は一度も見たことないのだが、ゲームをしている時の夫は眉間にしわを寄せて真剣そのもの。音楽に集中している時とはまた違う、出会って初めて見た顔なのであった。

ゲームをやること、カービィになったような気分でファンタジーの世界を思いっきり吸い込むことは、自分の感性を大きく揺さぶってくれた。
細かい部分にまで神経を届かせて、たくさんの想像力でもってゲームを作る人に感動する。何かを創り出すというのは、自分の持ちうる感性や想像力を余すことなく活かすことから始まるのだろうな。

あ、また音楽の脳に繋がりそうだ。

RELEASE INFORMATION

all ok
ぎがもえ

2023.10.25 Release
部室 / 八百万

Format: CD / Digital
Price: 2,500yen (tax in)

Track List
01 pray to
02 破る
03 海にいる
04 彼に寄り添って
05 満月の時は
06 横に縦に
07 温いブランコ
08 春が欲しい
09 陽にあたる
10 舟を漕ぐ feat.いしはまゆう

GigaMoeka_Apohto

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