2024年5月22日に、約8年ぶりの全国流通アルバム「PLUMP UP」をリリースしたロックバンド『THE STEPHANIES』(ザ・ステファニーズ)。アルバムの発売を記念し、メンバー全員にインタビューを敢行。これまで語られることの少なかったバンドの変遷から、Drop’sメンバーの合流、そして新作「PLUMP UP」の全曲解説まで、たっぷり前後編にわたりお届けします。
インタビュー・編集:緑川ひなの(NOSHI Z LABEL/OTOTSU)
─まずは読者の方に簡単な自己紹介をお願いします。
ギターボーカルのしろです。
THE STEPHANIESのドラム&MC担当みっち~です!
ベースの小田です。赤べこが好きです。
ギターの荒谷です。とってもかわいい猫を飼っています
─全国流通アルバム、発売おめでとうございます!
ありがとうございます。
ありがとうございます!全国流通8年ぶりということで、たくさんの方の手に届いているようで嬉しいです!
─それでは早速、THE STEPHANIESのことを聞いていこうと思います。3ピースのイメージが強いのですが、オリジナルメンバーのしろさん、みっち~さんに、Drop’sから荒谷さん、小田さんが合流して現4人体制になったんですよね。経歴が謎だと言われることが多いですが…そもそもTHE STEPHANIESはいつ、どんなきっかけで結成されたんでしょうか?
メン募ですね。
うん、結成は12年前、2012年だと思います。記念日とか覚えるの苦手なので日にちまではわからないけど…。昔懐かしのmixi「メン募」で”集われた”という感じです。
実は、自主的に「バンドを作ろう!」と思って動き出したわけではないんです。メン募で、結成時の初期のベーシストが私を見つけて、それからみっち~探し出した、というのが正しい経緯かも。
色々あって彼女は1年くらいでTHE STEPHANIESから去ることになったんですけど。今こうしてバンドを続けられているのは無論彼女のおかげでもあるので、めちゃくちゃ感謝してます。
─みっち~はTHE STEPHANIESに入る前まではバンド経験はなかったそうですが。
うん、私はバンド経験はなくて、ドラムはほぼ初心者だった。学生(中学~大学)の時はずっと吹奏楽をやっていたんだけど、卒業するとなかなか機会が無くて…。
バンドだったら気軽に始められるかなと思って(笑)
みっち~が、「ゆずのドラムが好き!」と言ってて。ゆずにはドラムはいないから、当時のベースに「この人(みっち〜)はなんかちょっとよく分からなくて怖いから入れるの止めよう…」と言ってました。
見る目ないよね!(笑)
なので、最初にしろとみっち~が出会っていたら、交わることがなかったかもしれないので、運命って面白いなと思います。
ちなみに、結成時すでに25歳とか、まあまあ大人でした(笑)
そこから本気のバンド活動が始まったわけです。
─本格始動したTHE STEPHANIES、今までの活動を教えてください。
デビューアルバム「Baby, I LOVE YOU」を、8年前にサザナミレーベルから出させてもらいました。その時はかなり乗ってたなーと思います!
スーツスタイルで、50年代のコーラスグループや60年代以降のロックバンドに影響を受けた曲をプレイしていました。とにかく世間に認知されたいと思って必死でしたね。
その頃はいろんなオーディションを受けたり、年間100本以上ライブをしていたし、全員が本当にバンド中心の生活で、とにかくずっと一緒にいた。
でも、結成時にまあまあ大人だったこともあって、もう30歳になっていて。年齢の壁みたいなものが立ちはだかって現実を突きつけられたり。
「乗っている」流れを感じることもありましたが、今後どうするか、というのも考え始めた時期だったと思います。「Baby, I LOVE YOU」以降、流通盤を出す機会はなかったんですけど、自主でシングルを出したりはしてました。
─そして、悩んでいる時期にコロナ禍もあったと。
とにかくライブ本数を重ねることが当たり前だったので止まることが怖くて仕方なかったです。コロナ禍の時も最初の頃は、宅録でレコーディングしてCDを作ったり。
でも生活も変わるじゃないですか。コロナになってからは特に。私はラーメン屋を頑張らなきゃいけなくなったりして、一旦止まらざるを得なくなった時期がありました。
※みっち~は小田急相模原にてラーメン店「Sagamihara欅 HANARE」店長としても活躍中
そうですね。実質上の活動休止期間だと思います。でも、コロナ云々というよりは、それ以前から多分メンバー全員考えていたんですよね。THE STEPHANIESを今後どうしていくのかということ。
それがたまたまコロナ禍と重なったっていうのが私の印象ですね。絶対にメジャーに行きたい、有名になりたい、っていう思いだけで突っ走ってきた20代から、どうやったら生涯音楽を、THE STEPHANIESを続けていけるのかって、極端だけどそういう考えにシフトした時期が私にはありました。
ライブが出来ない、レコーディングどころか曲を作ることもままならない時間でした。
ただ、この時間があったから今の曲の多くが生まれたと思います。
─その後、前ベーシストの脱退を経て、Drop’sから荒谷さん、小田さんが合流しました。出会いのきっかけは何だったんですか?
元々対バンさせていただいたご縁がありました。
ただ、その前からずっとDrop’sさんが好きで、各ライブハウスで対バンしたいバンドを聞かれたらDrop’s、フラワーカンパニーズと答えるくらい。
ちょうどDrop’sの活動休止の告知をした後くらいに、しろさんから私宛に今度ごはんいきましょ!的なDMが届いて。対バンや、一緒にシャンパンをあけた仲ではありましたが、個人的にやりとりはした事なかったので、急に連絡がきてびっくりした記憶はありますね。
私も一方的にTHE STEPHANIESのメンバー脱退のお知らせは見ていたので、もしやベースを探してらっしゃる…??と察したのですが、(あれ、じゃあ私ベースじゃないけどな。もしかして人間違えてる?それか「小田さんに声掛けたいけどなんか話しかけ辛いから一旦荒谷さん挟んでおこうかな」っていう橋渡し役か…)と思いながら、ごはんに向かいました。(笑)
結果私と小田と一緒にスタジオ入って欲しい、という話だったのでまさかの!?ってなりました!(笑)
しろが「2人を誘いたい」と言ってきた時、めちゃくちゃ驚きましたね。
驚いたっていうのは、二人はプロだし私たちとやってくれるはずないし!というのも少しだけあった(笑)
THE STEPHANIESは元々3ピースだったので、普通ならベースだけを入れることを考えると思うけど、2人一緒がいいと言いました。
それには自然に、確かにそうだなって、思っちゃったんですよね。
私は荒谷から「THE STEPHANIESのしろさんから、一緒にスタジオ入ってみないかって誘われた」って言われて。Drop’sが活動休止して、もし自分が何か役に立てるのであれば嬉しいなって気持ちでスタジオに行きましたね。
しろさん、みっち~さんに会うのは2年ぶりくらいだったけど、最後に新宿ロフトで対バンした時の打ち上げが強烈に楽しかった記憶があったので(何を話したのかは全く覚えてないけど)、人見知りの私でもあまり不安には思ってなかったです(笑)
すんごいドキドキしながら初めて4人でスタジオ入った時、これがまた4人なのに3人でキツキツくらいのめちゃくちゃ狭いスタジオでぎゅうぎゅうで、爆音で。私はとにかく一生懸命叩きましたけど(笑)
コロナ禍になってからバンドで音を出すという機会すら減ってしまってた中、初めての4人でスタジオにぎゅうぎゅうに入って、「じゃあこの曲やってみます…?」ってよそよそしいながらもデカい音出したら楽しくて仕方なくて(笑)
今でも覚えているのが、2人(荒谷、小田)は演奏が始まった瞬間に世界に入るんですよ。姿勢も顔つきも動きも全てが演奏する体勢に入って、震えました。かっこよすぎて。
それまで暗闇の中にいたTHE STEPHANIESに、遠くの出口のほうから光が差し込んでる絵が見えた感じでした。すごい!一緒にやったらどうなるんだろう!っていう、好奇心と不安が入り混じる感覚で。でも叩いててめちゃくちゃ気持ちよくて、何度もしろと目が合ったのも覚えてる(笑)
2人が割と即答でやってくれると言ってくれたのも嬉しかったです。どうしてやろうと思ってくれたのか聞きたい。
高校生の時からずっと続けてきたDrop’sが活動休止することになり「自分は本当に音楽が好きなのだろうか」とか考えちゃってた時期がかなり長かったんです。でも、そのスタジオ入った日から「やっぱり好きだわ」って強く思えるようになりました。誘ってくれたしろさん、みっち~さんには感謝しかないです。
そういえば、Drop’sがまだ上京前に東京でライブがあった際に、何のツテもない中ご挨拶と写真を撮らせていただきました。とても丁寧に挨拶してくださって、その写真がいまだにお互いスマホに入っています。律儀な方達です。
─そんな中、現体制になると同時期にしろさんの岩手移住もありました。まさにこれから、というタイミングだったと思いますが、どういう経緯だったのでしょうか
コロナ禍で起きたさまざまな出来事と時間は、自分やTHE STEPHANIESの今までとこれからを考えるきっかけになりました。その中でTHE STEPHANIESをこのまま終わらせたくないという気持ちと、これからたくさんの曲を作る上でよりフラットに気持ちを表現する場所として、生まれ育った岩手に移住したい気持ちが残りました。まだ動き出してもいないのにとても困惑する提案だったと思います。
提案というか、ほぼ決定事項だったよね。
受け入れてもらえなかったらどうなっていたのか、全く想像できません。大きな困惑はもちろんありましたが、メンバーみんな受け入れてくれました。始動前にこんな提案を受け入れてくれた荒谷ちゃん、小田ちゃんには本当に感謝していますし、気持ちを尊重してくれたみっち~、スタッフひなのちゃんにもとても感謝しています。
長年共にしてきたメンバーが脱退して、みっち~さんはラーメン屋も忙しくなって、しろさんも岩手に戻ることを決意して、普通だったらこのまま活動終了してもおかしくないのに、私と荒谷を誘ってバンドを続けようとしている。このバイタリティすごすぎない!?って荒谷と2人でよく話してました(笑)
私と荒谷は自分のバンドの活動を休止することを選んだ直後で、今後音楽続けるかどうかも分からないという状況だったので、しろさんみっち~さんの気持ちに触発されてというか、奮い立たせてもらった部分がとても大きいです。
─しろさんが岩手に拠点を移してから、新生・THE STEPHANIESが本格始動、新体制1作目として「MISCH-MASCH」(ヨミ:ミッシュマッシュ)ができましたね。
4人になって最初に「Teenage Crunch」に取り掛かりました。
この曲は元の3ピースの時から何回もライブでやってました。でもずっとアレンジが定まらなくて、レコーディングはしてなかった。
いろんなアレンジを試して、今となってはもうどんな感じだったかも思い出すことが難しいんですけど(笑)
私はしろがこの曲をすごく大切にしているのを知ってたので、どうしても名曲にしたかったんです。ずっと考え続けてたんだけど、3人の時には答えが出なくて。4人でやるならいっそソウルフルにできないかなって、提案したんです。AIさんのハピネスみたいな曲調で。
それが結構ハマって、割とすぐ完成しましたね。
その次が完全新曲で「欲望」を作り出したんですけどこれは難しかったー!(笑)以前までのTHE STEPHANIESにないテイストだったので、引き出しも全然なくて本当に困っていた…。
でも荒谷さんが細かく色々と提案してくれました。あの曲があったから、それ以降のドラムプレイにもすごく影響を与えていて、本当に感謝しているし、自分自身も諦めなくてよかったと思ってる。
それ以降のMISCH-MASCHの曲については本当にサクサクサクッと仕上げていった印象。最初の2曲で4人での曲作りのコツは掴んだって感じだったかな。
私は3ピースから4ピースになって、ギター1本の頃の方が良かった~と思われたくないというプレッシャーを勝手に抱えており(笑)
「Teenage Crunch」「LUCY!LUCY!」は元々ライブでもやってた曲ということだったので、ギターかっこいいんだぞ、と思ってもらえるようリアレンジ頑張った思い出です。新体制1枚目として色んな面を魅せられた作品だと思ってます。
とにかく曲を作ること、メンバーでアレンジしていく作業が楽しい作品でした。
2,3曲ずつ製作、レコーディングをしていったのでメンバーの色んな引き出しを見せてもらうのにワクワクしたり、まだコミュニケーションがぎこちない中で懸命に作りました。
岩手⇔東京の遠隔での作業も多く、メンバーに支えてもらう部分が大きいのですが、その中でしか出てこないアレンジがあったり、文字通りまぜこぜな一枚になったと思います。
─そして「MISCH-MASCH」から約1年半、今作のリリースに至ったと。
1年に1枚は作品出したいよね〜という軽い気持ちからですね!
そのおかげでこのような多忙な作品作りをすることになっているんですけど、やっぱり楽しいんだと思います。4人だと本当に色んなことができる。色んな曲ができるから、多分楽しくて、しろも種をポンポンポンポン産んでくれるので。そしてそれをね、絶対に芽を出させるんですよ荒谷さんが(笑)
一つも捨てない。愛がすごくて。だからなんやかんや、こうして継続的にリリースにこぎつけたっていう感じなんですかね。
楽曲製作がしたくてたまらなかったので、新しい曲を作るのは自然な流れでした。
「MISCH-MASCH」で開いた新しい引き出しを更に探る作業というか、ここまでしたらどうなる?こうプレイしたらどういう反応する?みたいな楽しみがメンバーみんなにある気がします。
引き続きメンバーに甘えている部分は多いのですが、健やかに曲作りをさせてもらっています。
─ありがとうございました!後半では「PLUMP UP」全曲について深堀していきます。
RELEASE INFO
LIVE INFO
「PLUMP UP」レコ発ワンマンライブ
2024年6月2日(日)
会場:渋谷B.Y.G
開場/開演:17時/18時
チケット前売:3500円
ご予約受付(お名前、人数お送りください)
https://the-stephanies.jimdofree.com/contact/
PROFILE
THE STEPHANIESはオリジナルメンバーのSHIRO(Vo/Gt)、MITCHY(Dr)に加え、2022 年よりDrop’sのメンバーである荒谷朋美(Gt)と小田満美子(Ba)が共同制作・サブメンバーとして加入し現在の4人体制となる。
ボーカルのSHIROは岩手を拠点とし、他3人のメンバーは関東拠点の遠距離バンドとして活動中。
2022年12月には現体制初となる自主制作アルバム「MISCH-MASCH」を会場限定で発売。
2024年5月22日に約8年ぶりの全国流通盤となるアルバム「PLUMP UP」をリリース。
精力的な作品の発表とともに、東京を中心にライブ活動を行っている。
X(Twitter)https://twitter.com/THE_STEPHANIES
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公式HP https://the-stephanies.jimdofree.com/