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fox capture plan×TRI4TH (伊藤隆郎 / 織田祐亮) Anniversary Talk Session

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 長きにわたって同じシーンの中で切磋琢磨してきた二つのバンドの航路が、再び交わる時が来た。結成15周年のTRI4THは、豪華ゲスト満載でチャレンジ精神あふれる最新作『GIFT』で新境地を開拓した。結成10周年のfox capture planは、揺るぎない王道を電子楽器やストリングスなどで華やかに色付けした記念作『XRONICLE』で、飽くなき冒険心を見せてくれた。そんな二組が、“QUATTRO MIRAGE 2020 to 2021”10th Anniversary Specialとして、10月28日に渋谷クラブクアトロのステージ上で相まみえる。記念すべき一夜を前に、これまでの交友関係について、最新アルバムについて、ライブについて、TRI4THから伊藤隆郎と織田祐亮、fox capture planから岸本亮、カワイヒデヒロ、井上司の5名が語り合うトーク・セッションが実現。常にチャンレジャーであり続ける男たちの秘めた熱い思い、ぜひ受け取ってほしい。

インタビュー・テキスト : 宮本英夫 撮影:山川哲矢 編集:山口隆弘(OTOTSU 編集担当)

――今日は、10年選手と15年選手の対談ということになります。

岸本

世代的にも近くて、昔から知っているんですよね。

伊藤

俺たちがPlaywrightレーベルにいたのが2017年まで。その頃はイベントでもよく一緒になったし。

井上

もっと前、フォックスの初期に一緒にツアーも回りました。あれで一気に仲良くなった気がする。

岸本

『BRIDGE』(2013年)を出した時ですね。でも俺とカワイはもっと昔からTRI4THを知ってるんですよ。関谷さんが入る前、ベースレス時代から見てます。

伊藤

フォックスを結成する前に、JABBERLOOPと一緒にツアーを回ったりしてたからね。

織田

メルテンくん、サポートしてくれたことがある。デ・ラ・ソウルのレコーディングで。

伊藤

そうそう。デ・ラ・ソウルのリミックス(「Picnic feat.DE LA SOUL-TRI4TH Remix-」/ 2011年)をやった時に、初期ピアニストが脱退してたんで、サポートしてくれたのがメルテンくんだった。須永辰緒さんのレコーディングも、名義はSunaga t Experienceだけど、やってるメンバーはTRI4THウィズ岸本くんとか、そういうプロジェクトはけっこう多かった。

岸本

TRI4THと俺と、JiLL-Decoy assosiationのtowadaさんだったり、orange pekoeの(藤本)一馬さんだったり。

織田

そのへんの人たちは、渋谷PLUGで出会わせてもらった感じ。なつかしい。

岸本

辰緒さんの「夜JAZZ」が、舞浜のイクスピアリでやってた頃とかですよね。TRI4THが出演者に抜擢されて、そこから一気にドカンと行った。香取慎吾さん主演のミュージカル(「TALK LIKE SINGING」/ 2009年)にも出て、俺、見に行きましたけど。

織田

ありがとうございます(笑)。

伊藤

でもJABBERLOOPは僕らより前にそういうシーンでやってたし、世代は同じだけど先輩という感じで見てましたね。SOIL&“PIMP”SESSIONS、quasimodeが活躍してて、そこにJABBERLOOPもいて、僕らはそのあとに出てきた感じ。

岸本

JABBERLOOPや、カワイがやってたimmigrant’s Bossa bandは、indigo jam unitやquasimodeと一緒ぐらいの時に出たような。TRI4THはCalmera、bohemianvoodooとかとデビューが同じ時期で、よく一緒にやってた気がする。

伊藤

いなくなったバンドもあるし、トレンドも変わっていく中でずっとやり続けて、こうしてまた一緒にやる機会があるのは最高だよね。

岸本

同世代の仲いいバンドが、だいたいみんな続けてるのは励みになるというか、自分も頑張ろうという感じになる。いなかったらすごい不安。

伊藤

俺らもそう。あんまり会ってなくても、フォックスが「コンフィデンスマンJP」の劇伴をやってるニュースとか、調べようとしなくても入って来るし、そういうのがいい刺激になるんですよね。「俺らもやらなきゃ」みたいな。

織田

励みになりますね。

岸本

逆に言うと、やめる必要もないんですよね。個人でもいろいろできるから、コロナでバンド活動ができないからやめる、という理由もないから。時間ができたらできたで、できることはたくさんあるから。

井上

それに特化してるわけじゃないので。それ以外の活動もみんなやってるから。

伊藤

俺も、バンド活動ができないから止まっちゃうのが嫌で、ドラム一人でライブやったりしてるけど。岸本くんがPOLYPLUSをやったり、司ちゃんもそうだし、いろんなところでフレキシブルに出して行けるのが、インストを軸にやってるバンドの良さなのかな?と思うよね。

岸本

それがバンドのレベルアップにもつながるし、ブランディングにもつながると思うんですよ。作曲家として活躍してるベーシスト、サポートで売れっ子のドラマーとか、そういう人が集まってるほうが、イメージ的にもすごいバンドだと思われそうだし(笑)。

伊藤

個々の活動が活発になるほど、バンドにフィードバックされて面白いことにつながってると思うので。同じことの繰り返しだと飽きちゃうから。

岸本

『GIFT』を聴いて、作品に対するマインドが俺らと近い気がしたんですよ。5年前のTRI4THからは想像できない作風だし、俺らも、5年前の作風を焼き直しても仕方ないとすごく思うし、そういうライブをやりたかったらその時代の曲をやればいいし。新作を出す時は常に新しいアプローチを、というマインドは近い気がする。TRI4THがPlaywrightを離れた時ぐらいは、もしかして音楽的な距離はあったのかなという気もするんですけど、今は目指す方向が似ているというか、一番近づいてるのかな?という感じがしますね。

伊藤

カテゴリーとしてはジャズだけど、その中でいろいろ、「ジャズと呼ばれるからには」と考えながらやってきたけど、今となってはそういうことを考えなくても、聴く人によればジャズなんだろうし、どう思われてもいいというのはあるかな。

岸本

ネガティブな意味ではなく、そっちに戻りたければいつでも戻れるので、今はまだ冒険、挑戦していきたいですね。結局、「3人がこういうものが好き」というものを正直に出しているだけなので、どう転んでも自分たちらしさというものは出てしまうから、新しいことをやることをそんなに恐れてないというか。

井上

どんなに挑戦したものでも、音を鳴らしちゃえば自分たちのものになるから。

岸本

TRI4THもそこは一緒だと思いますけどね。

伊藤

そうだね。攻め続けてないと、感度の高い人には届かないんじゃないかなと思うので。もっと大きくなっていくために、もっとすそ野を広くしたいし、そこでジャズとかインストとかはあんまり関係ない気がする。ジャンルでくくりだすと、シーンがシュリンクしていく感じが俺はすごくあって、そうなるのが嫌だから、あんまり言いたくないなと思う。

岸本

今はサブスクとかで、自分の好きなプレイリストを手軽に作れるようになってるし。

カワイ

「これが好きなら、これも好きですよね」みたいに勧められるのも、今ならではなのかな?と。昔はCD屋さんのスタッフの人が書いたレコメンドを読んで、試聴したりしてたけど、今は自分で簡単に選べる時代になったから、そういう意味では、隆郎さんが言ったように、選ぶ人に刺さる何かを発信し続けるというのはすごく大事だなと思います。

岸本

これからの2020年代は、もっとシームレスになるんじゃないですかね。ジャンル感が。ゼロ年代はポストロックっぽいものと、クラブジャズっぽいものは、そんなに一緒になることはなかったと思うけど、10年代はその垣根がなくなって、20年代になってより新しいムーブメントが生まれそうな気がしてます。

――10周年の10枚目『XRONICLE』は、どんなアルバムを作ろうと思ったんですか?

岸本

9枚目(『NEBULA』)が、がっつりコンセプトアルバムだったので。10枚目はバラエティ豊かで華やかで、みたいなキーワードはあったかな。

カワイ

トリオだからトリオにこだわるわけでもなく、いろんな楽器を入れて好き放題やったらどう?と。

岸本

7枚目の『CAPTURISM』というアルバムで、ピアノトリオとしてのこだわりを一回捨ててるんですよ。そこからは、曲調も幅を広げて行ってます。

伊藤

フォックスはすごくペースが速いけど、ストックがあるの?

井上

最初の頃はあったけど、最近は…。

岸本

今年出した2枚は、普段よりはコンセプト強めで作ったので。ただ曲はけっこうぎりぎり。

井上

めちゃくちゃぎりぎり(笑)。8枚目は、その前に2年ぐらい出してなかったから、配信シングルとかも集めたアルバムだけど、9、10枚目は本当に直前だった。

岸本

言い出したのは谷口ディレクターなんですよ。「10周年で10枚ってきれいなんじゃない?」って言い出して。

伊藤

言いそう(笑)。

井上

最初は、「10周年はひと月に1枚アルバム出そう」とか言ってた。

伊藤

俺らも、「10周年で10曲で1000円で出せ」って言われた(笑)。谷口さん、そういうの好きだよね。

岸本

そういうきっかけではあるんですけど、逆にコロナじゃなくて、普通にツアーもできる状態だったら厳しかったかもしれない。ステイホームの時間があるからこそ、可能だったなとは思います。

伊藤

俺らも15周年で『GIFT』というアルバムを出したけど、コロナで時間があるからこそ「この人とやってみたい」という発想になった
というか、そうじゃなかったらこんなにゲストを呼んでなかったかもしれない。チバユウスケ(The Birthday)さんも、Kan Sanoくんも、Shingo Suzuki(Ovall)さんもそう。「Ovallが持ってる黒いグルーヴを教えてもらおう」みたいな感じ。今までヒップホップ的なものはそこまでやってこなくて、憧れはあるけど遠いものだと感じてたけど、好きならやっちゃえばいいんじゃないの?と。

岸本

スネアのチューニングからそっちに寄せてて、いい意味で隆郎さんっぽくないところが面白い。年月を重ねると、人間変わるんやなと思った。

伊藤

大人になったかな(笑)。

岸本

割合的にも、ヒップホップ・テンポの曲が多い気がします。

織田

それもやっぱりコロナ禍で、自然とそういうBPMが増えて行った気がする。

伊藤

どうやって聴いたら楽しいのかな?と考えると、今の状況的には、揺れてる感じ、ノッてる感じが合ってるのかな?と。

カワイ

激しいタテノリをやっても、お客さんが動けないし、楽しみ切れないだろうなという気持ちは確かにありますね。

伊藤

心の中で叫んでくれ!という考え方もあるけど、それって自分本位だなとも思うし、本来の楽しみ方ができないんだったら、リスニングもライブも、今の時代の中の楽しみ方を探すべきだし、自然なことだと思うので。しばらくはそういう感じなのかな。

岸本

そこは一緒かもしれない。

井上

別に話し合って、激しいのを減らそうと言ったわけではないけど、自然とそうなってますね。

伊藤

それはアルバムを聴いてて感じるし、シンパシーを覚えるなと。昔はロックバンドとも対バンしてたけど、今は減ってるし、似た感じの空気感の人とやることが多くなって、フォックスとツーマンやりたいなと思ったのもそういうことだったし。ライブ、楽しみですよ。

岸本

練習せな(笑)。新曲をどれぐらい投入するか。

井上

アルバム出して最初のライブだから。

伊藤

俺らもそう。『GIFT』の曲を、ちゃんとやるのはそこが初めて。

――フォックスとTRI4THのお客さんって、かぶってるんですかね。

伊藤

かぶってないと思う。かぶってないけど、Playwrightにいたし、TRI4THのことを知ってるお客さんはフォックスを知ってるし、逆もそうだと思うから。ヤバイな、フォックスのファンにちゃんと楽しんでもらえるようにしないと。

織田

3年前ぐらいに、札幌で一緒にやったじゃないですか。しかも二つのステージで、すげぇ距離離れてるのに一緒にセッションしてくれって言われて。見た目と音の時差がすごくて、めっちゃ難しかった(笑)。

伊藤

あれ、むちゃくちゃなオーダーだったよな(笑)。

織田

「チュニジアの夜」をやりましたね。

――クアトロで、セッションとかやったりしますか。

伊藤

何かやれたらいいですね。考えましょう。

岸本

「チュニジア」やるか(笑)。

カワイ

全員ステージに乗れるかな。

岸本

ドラムを交代でやれば、行けるんじゃない?

――ライブ、楽しみにしています。最後にひとことずつ、お互いのバンドに向けてエールの言葉をもらえますか。

織田

フォックスが常に僕らの目線にいるんですよ。フォックスがいるから我々も頑張ろうと思うし、雑誌の表紙に載ってたら「いいなあ」と思うし(笑)。モチベーションになってます。

岸本

ありがとうございます。織田さんにそう言っていただけると。

織田

曲の作り方とか、聞きたいこともいっぱいあるんだけど。お酒が飲めるようになったら、またゆっくり話しましょう。

岸本

今日は、ライブが終わって打ち上げで熱い話になった時みたいな、普段集まった時にしそうな話を自然体でさせてもらって、良かったなと思うのと、時を重ねてもそのへんは変わらないなということが確認できて良かったです。クアトロのライブがすごく楽しみです。

井上

ずっとTRI4THはフォックスにとって、近くて大きい存在なので、今回クアトロを一緒にやれるのが楽しみです。TRI4THを見るのは久しぶりで、今どうなってるのか?というのがお客さんとしても普通に楽しみだし、同じプレイヤーとしてどう吹くか、どう叩くかという興味もあるし、その日どういう面白いことを一緒にやれるか、今考え中ですけど、楽しい夜になると思うので、みなさん来てください。

カワイ

フォックスを結成する前から、ミュージシャン仲間として一緒にライブをしてきたし、そういうものも含めて、お互いに今も活動ができているのがうれしいなと思います。クアトロはすごく楽しみだし、これからも一緒にやっていけるものがあるんじゃないかなと思うので、よろしくお願いします。

伊藤

こちらこそ。フォックスを結成する前から、岸本くんやルイージくんとはミュージシャンの友達だし、常に刺激的な音楽を発信し続けて、俺らも触発されて続けてきたんですね。フォックスは10年走ってきて、俺らも15年やってきて、でもそこがゴールじゃなくてもっと進もうというアティテュードに感銘を受けるし、俺らもまだまだ20年30年と行きたいなと思うし、そうやってお互いが進んでいくんだろうなというのが、今日話してまたわかったし、頼もしいなと思います。ライブも久しぶりに一緒にやるし、すげぇ化学反応が生まれると思うので、ぜひ楽しみにしてもらえたらと思います。またどんどん、一緒にやりましょう。

岸本

はい、喜んで。

“QUATTRO MIRAGE 2020 to 2021″10th Anniversary Special
TRI4TH × fox capture plan

2021.10.28(thu) 渋谷クラブクアトロ
前売 4,800(税込/整理番号付) ・P:203-466 / L:73442
17:45 開場 / 18:30 開演
INFO:CLUB QUATTRO https://www.club-quattro.com/shibuya/
https://www.club-quattro.com/shibuya/schedule/detail.php?id=12572

fox capture plan
XRONICLE

2021.10.20 RELEASE
PWT-90
価格 : 3,000円+税

【収録曲】01. The Dawn Coming 02. Akashic Xronicles 03. Nexus 04. DRIVIN’ 05. Jazz me tender 06. Time / Break 07. Evolution of science 08. Ritual Dance 09. thank you 10. fox straight ahead

TRI4TH 『GIFT』

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