FRONTIER BACKYARDがコロナ禍に始めた企画「direct package」。一つのテーマを設けて無観客ライブを行いその模様をYouTubeで公開、音源をライブ盤CDとして発売する一連のシリーズも今回で3回目。“Rhythm”をテーマにした第3弾では、“えみそん”こと、おかもとえみがゲストボーカルとして参加した。3人で披露したのはもちろん「Change」。2018年にリリースされたアルバム『Fantastic every single day』に収録されているコラボ曲である。今回の収録は、およそ3年ぶりの共演だったとのこと。久々の再会を記念して、収録時のことを振り返ってもらった。
インタビュー・テキスト : 蜂須賀ちなみ 撮影:橋本塁 編集:山口隆弘(OTOTSU 編集担当)
この前は差し入れありがとうございました。差し入れをいただいたことで、2ヶ月ぶりにお酒を飲んだんですよ。
そうなんだ。えみそん大変だったからね(※今年8月に新型コロナウイルスに感染し入院)。その後体調は大丈夫?
はい。大丈夫です。
お互いまだまだ気をつけていかないとね~。
――おかもとさんは、FRONTIER BACKYARDが2018年にリリースした楽曲「Change」にゲストボーカルとして参加されましたが、そもそもの接点はどこからなんですか?
最初はサービスエリアですね。僕らはフレンズの面々も知っていたし、もちろんえみそんのことも、面識はなかったけど知っていた状態で。ある日サービスエリアでたまたま会って、ご挨拶させていただいたんです。多分そこからだよね?
そうでしたね。そのあと、田上さんにはフレンズのイベント(「フレンズのフレンズ大集合! 〜日比谷野音でコラボ祭」2018年4月14日)でトランペットを演奏してもらって。めっちゃカッコよかったです。
いやいや。カッコいいのはえみそんの方だよ。僕は元々えみそんのことを「カッコいいボーカリストだなあ」と思っていて。もちろんかわいらしい声を出すこともできるんだけど、真っ青で冷たいような、クールな雰囲気も出すことができるんですよね。「Change」はTuxedo(アメリカのディスコ/ファンクユニット)のようなイメージで作ったんですよ。えみそんのボーカルが持つクールな雰囲気がアーバンな曲調に会うんじゃないかと思って、当時お誘いして。
私はフレンズだけではなくソロ活動もやっているんですけど、いろいと表現してきたなかで、ソロで表現してきたようなクールな部分に注目してくれたのはフロンティアだけで。私、サービスエリアでお会いするまでは、フロンティアに対して「怖い人たち」というイメージを持っていたんですよ。
TGMX、TDC:(笑)
だけどサービスエリアで会ったときに、いい人のオーラみたいなものをめっちゃ感じて、勝手に持っていた「怖い人」というイメージもなくなって。そこから野音で一緒にライブをやらせてもらったり、「Change」で声をかけてもらったり……と、音楽で繋がっていくのがすごく嬉しかったですね。私は英詞を歌ったことがなかったし、こういう曲調も初めてだったので、曲をいただいた段階から「カッケー!」と痺れちゃって。だからといって「よし、新しいことに挑戦するぞ!」という感じではなく、新しい食べ物を食べるような感じで楽しくチャレンジできたのは、お二人のおかげなのかなと思います。
僕らとしては女性ボーカリストと制作するのが初めてだったので、「実際に歌ってもらったらどうなるんだろう」と楽しみに思いながら作っていましたね。
えみそんがかなり歌える人だということはもちろん知っていたし、だからこそ制作にお誘いしたんですけど、実際に一緒に制作をしてみたら「こんなに歌える人なんだ!」と予想を上回る瞬間がたくさんあって。音源は予想以上にいいものになりました。そのあと、ライブにも2回出てもらったんですよ
「BAYCAMP」と大阪の野外音楽堂ですね。
そうそう。ライブのときには、ステージ上での牽引力がある人だなあと思いました。僕もステージとなればグイグイいけるタイプだと思っているんですけど、えみそんはもっとグイグイ引っ張っていくタイプというか。
そう言ってもらえてめっちゃ嬉しいです。私は元々ベーシストだったので、いつも一歩下がりがちだったんですけど、今の言葉を聞いて「あ、やっとボーカリストになれたんだな」と思えました。
いやいやいや、立派なボーカリストですいよ。
――ステージ上での牽引力というのは、今回の映像にも表れていた気がします。おかもとさんが登場した瞬間に空気が引き締まった感じがあって。
私は入ってくるときに一番緊張していたんですけどね。お二人が既に何曲か演奏していて、空気ができているところだったので、どう突入したらいいのかなと思って。「ナチュラルに、ナチュラルに……」と思いながら突入しました。
でも、ステージ上での牽引力は3年前よりももっと強くなっているなあと思います。上から目線な言い方になっちゃいますけど、撮影が終わったあと、忠章くんやスタッフと一緒に「えみそん、さらによくなっているよね」という話をしていたんですよ。
うんうん。
ホントですか? 嬉しいです。
えみそんはやっぱりカメラがまわったときの集中力がすごいし、それでいて大胆さもあるなあと思いました。
――大胆といえば、間奏での展開も面白かったです。おかもとさんがラップをして、それに対して田上さんが応えていくという。
あれはちょっとビビりました(笑)。えみそんがいきなりやり始めたから、「スゲー!ぶっこんできた!」「返さないと!」と思って。
あはははは。あのセッティングでライブをすることってあまりないじゃないですか。お互いを見ながら歌えるので、「ウェーイ!」みたいな感じで高揚感がすごくて(笑)。
俺は基本的にはふざけているキャラクターなんですけど、俺がちょっとふざけると、えみそんがすぐにノッてきてくれるから、どんどん上っていくみたいな感じがあって。だから、次もしまたやれたら、ふざけた曲を作りますよ!(笑)
いいですね、楽しそう! でも撮影ではあったけど「ライブしている」というい感覚でしたよね。
そうだね。因みに、今回の収録は7月に行ったんですよ。えみそんとオリンピックの話をしたよね。
あ、そうでした! 私、開会式のリハを見ちゃったんですよ。歩いていたら空が光っていて、「何だろう?」と思っていたら、その光が地球の形に変わっていって。
僕らはその映像をえみそんから見せてもらって、「ドローンのリハを見ちゃったんですよ!」「えー!」みたいな会話をした覚えがあります。
――改めて、3年ぶりに共演してみての感想を聞かせていただけますか?
普段ライブで「Change」を演奏するときはえみそんの声を流しながらやっているんですけど、今回一緒にライブをしてみて、やっぱり本物が歌ってくれるとなると違うなあと感じましたね。でも、いい意味で違和感がなかったというか。一緒にライブをするのは3年ぶりなのに、スッと入っていける感じがすごいなあと思って。
何か、独特な混ざっていく力、あるよね。
うん。あれは何だろう?
こんなにスッと入ってこられる人ってあんまりいないんですけど……人懐っこいキャラクターがそうさせているのかな?
あと、ピッチが全くズレないのは恐ろしいなあと思いました。
うん、それは恐ろしかった。
普通、ライブだと音程もちょっとズレちゃうじゃないですか。そういうズレが全くないので、いい意味で音源と大きく違うわけではないというか。やっぱりプロだなあ、さすがだなあと思いました。
練習の成果が出てよかったです。
ボイトレの先生に教わってきてくれたんでしょ?
はい、久々にこの曲を歌うから、ちゃんと発音できるようにしておきたいと思ったんです。ボイトレの先生からは「“シティー”じゃない、“city”だ」みたいに教えてもらって。
僕らの曲、ニューヨークスタイルだと言ってもらえたらしいです。完全に栃木スタイルですけど(笑)。
――あははは。おかもとさんは3年ぶりの共演、いかがでしたか?
フロンティアは、去年の7月に新代田FEVERで配信ライブをしていたじゃないですか。私、それを観ていたんですよ。「いいなあ、行きたいなあ」「でも、いきなり行っていいのかな?」と思いながら。
え~、言ってよ! 僕らとしては「いきなり誘ってもお忙しいだろうしなあ」「まさか来てくれるわけないだろうし」という気持ちがあったんだけど、それなら来てくれればよかったのに~。
その配信ライブのときに「Change」もやっていたので、家で一緒に歌っていたいんですけど、それを経て、今回一緒に歌えたということで、実際歌ってみたら、お二人の包容力みたいなものをすごく感じました。忠章さんのビートは安心するし、そこに田上さんの声が入ってくると……広場を用意してもらって、「好きにやっていいんだよ」と言ってもらえている感じ?
TGMX、TDC:(笑)
2人のフィールドの中で、私はのびのびと自分を解放することができました。すごく楽しくて、「もう終わりか!」と思っちゃったくらい。あと何曲か歌いたかったです。
それは僕も思いました。なので、また機会があったらお願いしたいなあと思いますし、可能なら、新曲も一緒に作れたらいいですよね。
そうですね。ぜひ!
――FRONTIER BACKYARDにとって今回のライブは「direct package」の第3弾にあたるものでした。「direct package」シリーズを3回続けてみて、改めて実感したこと・気づいたことなどはありますか?
新しいアレンジを考えるときに、BPMを落としがちだなあと思いました。今の自分たちには、BPMを落とした方が気持ちよく感じるというか。それは単純に歳をとったせいなのか……。
もちろん年齢的なところもあると思うけど、お客さんがいないということで、普段2人が聴いている音楽に近いBPMになっていったんだろうね。えみそんはヒップホップがずっと好きだと思うけど、俺も最近ヒップホップを聴くようになったんですよ。
そうなんですか。
うん。俺はまだ忠章くんほど詳しくないんですけど、アレンジの感じが、ヒップホップが好きなバンドマンっぽくなってきたなあというのは、コロナ禍におけるこの企画で改めて実感しました。あと、今回「I WONDER」を演奏していて、そのあと有観客ライブでも「I WONDER」を演奏したんですけど、僕ら2人で演奏している感じはどちらも一緒だなあと思いました。つまり、「direct package」も一つのライブだと思えているし、3作目でやっとそう感じられるようになってきたなあと。終わったあとの感覚も「撮影した」というよりかは「ライブをした」という感じ。特に今回はえみそんに来てもらったおかげで、ライブ感をすごく出せたと思います。
コロナ禍になってから配信ライブは増えていきましたけど、基本的には、アーカイブ期間が終わればもう観られないので、私の中で「配信ライブ=儚い」というイメージがあったんです。だけどお二人はちゃんとパッケージ化されている。フロンティアは、常に挑戦し続けているのがすごいなあと思いますし、昔のバンドのライブ音源CDみたいに「いつでもあの場所に戻れる」という瞬間を用意してくれているのがありがたいなあ、嬉しいなあと思いました。
ありがとうございます。従来のライブ盤だったら、お客さんの歓声が入ってたりするじゃないですか。だけど今回はそれが全くないので、CD音源との違いを出すのが大変だったんですけど、その分アレンジを頑張って。「いかにライブ感を出すか」というのがすごく難しかったんですけど、僕らが頻繁に行けないような地方に住んでいる人や、様々な事情から「ライブに行きたいけど行けない」という状況にある人に、ライブ感をデリバリーできていたら嬉しいです。
――有観客ライブが少しずつ復活してきたと思いますが、今後も「direct package」は続けていきたいですか?
そうですね。もちろんバンドマンとして「できれば有観客のライブをやりたい」という願いとしてあるし、この企画も「有観客ライブができない」「そしたら何をやろうか」というところから始まったもので、僕らが元々望んでいたものではないんですけど、実際にやってみたら面白かったし、学びもたくさんありましたし。
お客さんを入れてやってみるのもいいだろうしね。
そうだね。「direct package」は僕たちがコロナ禍で得た武器なので、大切に持っていたいなあと思っています。
――最後に、お互いに対して聞いてみたいことはありますか?
えみそんは元々ベーシストですが、シンセベースには興味ありますか? フレンズのサウンドだと涼ちゃん(長島涼平/Ba,Cho)がシンベを弾いていてもおかしくないよなあと思うんですよ。だけどシンベを使っている曲はないから、「シンベは使わない」というこだわりがあるのかなと気になりました。
あー……選択肢になかっただけですね。私はトラックものが大好きなので、シンセベースは最高だと思います。でも確かに、自分ではまだやったことがなかったなあと今言われて気づいたので、いつかチャレンジしてみたいです!
僕ら元々シンベバンドなので、シンベを使ったフレンズの曲も聴いてみたいなあと。
そしたらいつかシンベ共演をしましょう(笑)。じゃあ私からお二人への質問は……田上さんは最近ヒップホップを聴いていると仰っていましたけど、今後作っていく曲で取り入れてみたいジャンル、音楽ってありますか?
俺はやっぱりラップしてみたいんですよ。でもやっぱり恥ずかしくて。リリックもたまに書くんだけど、「じゃあ俺はレペゼン何なんだ?」という気持ちもどこかにあるんだよね。
えー! レペゼン田上でいいじゃないですか!
だから自分ではラップができないので、ラッパーと共演してみたいなあと。えみそん、友達いっぱいいそうだからラッパー紹介してくれない?
でも私は田上さんのラップが聴いてみたいです。
そうかー。そしたら誰にも聴かせないラップを作って、忠章くんと二人で細々とヒップホップの活動をしてみようかな。でもヒップホップは興味あるし、やってみたいという気持ちがありますね。
田上さんのラップが聴ける日を楽しみにしています!
direct package“Rhythm”
FRONTIER BACKYARD
2021.10.27 RELEASE
Niw! Records
1 PEEPS CLUB
2 Stories
3 I WONDER
4 Here again
5 so fair
6 higher
7 saute
8 BURN
9 Change feat おかもとえみ
10 Stand Stock Still
購入者限定フル動画視聴URLカード、オリジナルバッヂ付。
disk union各店、Amazon、FLAKE RECORDS
STEREO RECORDS
TOWER RECORDS 渋谷、新宿、大阪梅田丸ビル、仙台パルコ店
≪アーティストプロフィール≫
FRONTIER BACKYARD (フロンティア・バックヤード)
Profile:
TGMX (Vo)、TDC(Dr)の 2 人が SCAFULL KING 休止中に 2004 年より組んだバンド。 2004 年に 1st アルバム「FRONTIER BACKYARD」発売以降、 6 枚のオリジナルアルバムをリリース。
FUJI ROCK FESTIVAL、RUSH BALL、ROCK IN JAPAN、COUNTDOWN JAPAN、RISING SUN ROCK FESTIVAL、KESEN ROCK FESTIVAL、WALK INN FES!、Baycamp 、AIR JAM など多数の大型 フェスにも出演。2014 年には、CD デビュー10 周年を記念したベストアルバム「BEST SELECTIONS」とリミックスアルバム「 gladness」をリ リース。2015 年には 10 周年の軌跡と新木場スタジオコーストで行われた周年ライブを 収めたDVD「surroundings」をリリースしている。ライブはサポートメンバーを含めた編成で、 2016 年からは 7 人編成で活動をスタート。 同年、タワーレコード限定ミニアルバム「FUN BOY’S YELL」と、「THE GARDEN」、2018 年には、西寺郷太、おかもとえみをフィーチャリングした楽曲含む「Fantastic every single day」をリ リースし、2019 年よりメンバー2 人だけの LIVE 編成をスタートさせるなど精力的に活動中。
FBY Live Schedule
10/31 吉祥寺 WARP
CRAFTROCK BREWING presents
“SOUNDS ON TAP!! vol.1”
w/COMEBACK MY DAUGHTERS, 五味岳久(LOSTAGE)
11/5 下北沢 SHELTER
SHELTER 30th Anniversary POOL SIDE
w/Keishi Tanaka, KONCOS
おかもとえみ
Profile:
日本大学芸術学部卒業。
10代の頃から音楽活動を始め、THEラブ人間のベーシスト、ボタン工場のボーカルを務める。
2014年からソロ活動を本格的にはじめ、自主制作EPを発売後、翌年2015年Mini Album「ストライク!」をVYBE MUSICからリリース。その後配信販売で「POOL」を販売。
ソロ活動と並行し、神泉系バンド、フレンズを結成し活動が盛んになる。
また、各方面からボーカリストとして、作家としての活躍も盛んになり、現在までにさかいゆう、SexyZone、M!LK、吉田凜音から、FRONTIER BACKYARD、illmore、PARKGOLF、TSUBAME等、HIPHOP~CLUB系等ジャンルを超え活動の場を広げている。