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FRONTIER BACKYARD 3年9カ月の歳月を経て、世界中の音楽ファンの想いをファンキーなビートに乗せて歌った『million feelings』インタビュー

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コロナ禍での不安と思うようにライブができない状況にあっても、とどまることなく活動を続けるのは容易ではない。そんな中、四季に合わせた定期的なdigital single配信や、無観客ライブ配信企画「direct package」など行うバイタリティや、様々な環境の変化の中で、制作に至った今作のことをTGMXに語ってもらった。世界中の人が抱えてきた様々な思いを導いていくような希望のサウンド「million feelings」誕生。

インタビュー・テキスト・ 編集:山口隆弘 / 上野雅浩(OTOTSU 編集担当)

–コロナ禍で、バンドの活動や私生活にも影響があったと思うんですが、周りの状況の変化を踏まえてアルバムを作り終えた率直な感想を聞かせてもらえますか?

このように取材をしていただいたりすることも含めて3年何ヶ月振りなので、一言で言うならば、本当に久々かなーということです。

–これだけ空いたリリースはなかったと思いますが、不安はなかったでしょうか?

不安にも色々な要素があると思いますが、音楽人としての不安はないです。なぜなら今も昔も「やりたいことをやってる」でしかないので。例えば、忘れられちゃうんじゃないかとかそういう不安はほぼないですね。いち人間の生活の不安はありますけどね。笑

–音楽に対するモチベーション的な部分では変わらずでしたか?

モチベーションはむしろ増したというか、このコロナ禍でヒップホップが好きになって。ネットで色々見る機会が増えて、自分が今まで触れてなかったものに触れてみようと思ったら、ヒップホップのMVって面白いじゃないですか。USではギャングが出てきたり、ちょっとセクシーな女の人が出てきたりとか色々刺激的なものが多くて、それを見てるうちに面白くなってきて、昔はブラックミュージックのひとつとして聴いていたくらいで、そこまで聴いてなかったんだけど最近は掘って聴くようになりました。それが音楽制作に関係あるかどうかは分からないけど、今は僕達もバンドじゃなくてデスクトッププロジェクトを中心に活動してるから、そういう意味では少し関係あるかもしれないし、やりたいこと(デスクトッププロジェクト)ができてモチベーションにもつながってると思います。

–今作の制作では大きなスタジオでの録音作業といったものがなくなったと思うんですが、そういう作業の変化について聞かせてください。

今までだと自分達のパソコンでデモを作り、スタジオに流し込んで(スタジオの)スピーカーで聴いたら、まず環境が変わるじゃないですか。そこで、思ってた感じとちょっと違うと、描いてた完成系がブレてしまう事もあるな…と思ったりがあった。でも今回は最後まで自分のパソコン上で完結する事で、思ったものをそのままダイレクトに出せるという利点もあるなと。録音作業をパソコン上のデータのやり取りでしかしてないのでヘッドホンで聴いた音をそのまま出せている感じがして、そういう意味では新しい感覚かな。良くも悪くも今はこの作り方がいいなと思ってやってますね。録音自体にエンジニアの力やセンスに頼りたい時はお願いします。

–最初は戸惑いや難しさもありましたか?

今も難しいですよ。宅録レコーディングは自分に知識がないとできないから、ソフトシンセもプラグインエフェクターも色々ダウンロードしたり買ったりして研究して、YouTubeで使い方を調べて、という作業をやって。前よりはエンジニア寄りの考え方を持つことができたし、できるようにならないといけないなと思ったので、そういう努力をしています。

— エンジニアの変化はどうですか?プラスに作用していますか?

ミックスのエンジニアは元PAELLASのbisshiにやってもらってて、彼は若いから好きな今話題のアーティストの名前を出して共通の会話ができるのは大きいし、若い視点でミックスしてもらうのも今のFBYにとってプラスに感じてます。

private recording風景 エンジニアミックスのエンジニア:bisshi

–そういった録音環境も含めて、2019年からは二人編成での音楽活動をされていますね。

バンド出身なのでもちろんバンドサウンドは好きです、みんなで作るライブもそうだし。でもそういった音源やライブはたくさんやってきたので一回お休みしてます。コロナ禍でサポートメンバーと会えない時期がずっと続いた中で、もちろんコロナに気を付けながらだけど正式メンバー二人で作業することも増えてきて。あとは自分が好きになってる音楽も生音の音楽というよりはシンセが目立ったり、ドラムも打ち込みだったりするものが多かったこともあって、今は色んな面で二人で活動する理由と意味があると思ってます。今回ドラムは全部プログラミングで、TDCも自分がドラムを叩かないアルバムを出すなんて思ってなかったと言ってましたけど。笑 TDC自体打ち込み系ドラムも好きみたいで。
あと、コロナとは関係なく理由はもう一つ。好きなミュージシャンを集めてライブしてるから、サポートを入れて演奏することがすごく楽しかったんですよ。仕上がり以上のライブを作ってくれる状態というか。でも、それに満足しすぎて自分の中で飽和してきたのと、このままじゃいけないとだんだん思ってきて。サポートがいないとできないんじゃないかと思えてきたことも、思い切ってメンバー二人だけでやってみようと考えた理由の一つですね。

–サポートメンバーを含めて作り上げてきたものを、また一から二人で作り上げることへの怖さはなかったですか?

僕達はメジャーのアーティストでもないので、何かに縛られて音楽をやるのは絶対違うと思ってて。給料をもらってる訳でもないし、CDが売れなかったり、お客さんがいなかったりしたら活動費という金銭的な悩みが自分達にできるだけだし。それを犠牲にしても挑戦したいことがあるなら、作ってきた物を壊しても別に平気っていう感覚が僕にはあって。どんどん新しいことを音楽として提示していくことの方が自分達のやりがいとやるべきことと思ってて、続けられてると思ってます。

–そんな新たな環境の中でも『direct package』はファンの方々に向けて作られていますよね。

今はフェスが戻ってきたりとか、人と交わってもいいですよみたいな感じだけど、この2、3年は人を集めるなという風潮でダメだったし、僕達ミュージシャンはどうしたらいいのかって思っていた中で、ライブだけじゃなくて音源を出して「家で楽しんでください」っていうアウトプットの形を考えました。あとは、ファンのみんなと繋がっていたいっていう精神的な話も大きいと思ってます。僕達もみんなとやり取りしてることが楽しいから、そういう意味ではライブを待ってくれているみんなのためにもこの企画をやれて良かったと思いましたね。

direct package”Rhythm”

–2020年から配信シングルリリース中心の活動になり、「small talk」は13万再生を突破していますが、手応えはどうでしたか?

ぶっちゃけサブスクの数字とか気にしたことないです。CDだと1万枚売れてますとか、5,000枚売れてますとかリアルで分かるけど、全世界で何万再生突破っていうのがどのぐらいのことなのか実感があまりないし、良い意味でも悪い意味でも全く気にしてなかったです。SNSのダイレクトメッセージとかでリアクションをもらったけど、これまでのようなライブでのリアクションやファンとの交わりもなかったので、あまり手応えというものはなく過ごしてきましたね 。

small talk

–そうすると、楽曲制作においては周囲の手応えというより、自分達の中で思い描いているものを形にしたということでしょうか?

そうですね、出したいものを出しましたっていう感じ。今表現したいものを出しましたね。その繰り返しをずっとやっていた。良い曲だと言われたらもちろん嬉しいけど、悪いと言われても「まあその人は聴かなくなるのかな」と思うだけっていうか。誰かに合わせて曲を作ったことはないし、レーベルの意見は聞くけど話半分というか、やりたい音楽を曲げたら嘘になるから僕達の音楽は二人で作り上げたものでしかないです。あとはNiw! Recordsという母体が僕達の音楽を作りやすい環境ではあったのかな。こういうジャンルや曲調は出せませんっていうのはなかったから、レーベルも変えずに自由に制作をやれてきたのかなと。

–今までのようにデモを作ってアルバムの内容を決めていく制作ではなく、配信リリースしていく中でアルバムが見えてきたのでしょうか?

正直8曲もコンスタントに配信リリースだけを続けるとは思ってなかったです。どこかでコロナ禍も終わって、アルバムリリースできるかなと思ってたから。気がつけば何曲もあるし、まだまだ作りかけの曲もあったので、それをまとめてこの2、3年というイメージでアルバムを作ったかな。タイトルの話になるけど『million feelings』というのはたくさんの気持ちだったり、感覚だったりという意味で、まさにこの数年間のことを表した言葉かなと。そういう意味でも今までの中で一番思い出があるアルバムになったかもしれないです。今まではある程度期間が決まってレコーディングしてたけど、今回は1曲ずつミュージックビデオがあって、その時の洋服だったりとか、その時々のモードが刻まれてる気がするし。初めてこういう作り方をして、感覚的にはベスト盤に近い気がするし、良いアルバムになったと思ってます。

–バンドマン出身だけどその発想から離れようと思っていると以前おっしゃっていましたが、この作品にも反映されていますか?

今はバンドサウンドだったり、ロックだったり、もっと言えばギターが入ってたり、生音のドラムが入ってたりする音楽をあまり聴いていなくて、つまりは今のFBYのような音楽しか聴いていないので単純にそう(バンドという発想から離れること)なりましたね。バンドサウンドが欲しくなればサポートメンバーを入れてまたやればいいのかなと思ってて。例えば、すごく練ったシンセの音とかはライブだと同じ機材がないと再現できないけど、今は作曲やレコーディングの時に作った音色をライブでそのまま出したいという感じ。それをサポートメンバーに頼むのは意味もないし、今はどちらかと言うと自分が家で作った100%のものをライブハウスで発信していきたいです。

2020/03/16 新代田FEVER 無観客配信ONEMAN LIVE

–今回ギタリストを入れたのはどういった狙いですか?

単純に『direct package』にも参加してもらった佐藤のギターが好きで、今回も弾いてもらったらめちゃくちゃいいのが上がってきたという感じです。ギター以外にもベーシストでも他の楽器でも、いい人がいたら一緒にやってみたい。でも特にギターは生じゃないと感じが出ないんですよね。参加してもらった「FEEL SO GOOD」はギターのカッティングが欲しくて。彼はUNCHAINの頃から上手なのも知ってたし、宅録できるのも知ってたので、サクッとやってくれて、思った以上のものをつけてくれました。直接会ってはないんですけど。笑
元メンバー(KENZI MASUBUCHI)は、ギターが上手で、なかなか代わりになれる人がいないので。なので佐藤も恐れ多いと言ってましたが、「気にしないで自分の感じでやってね」って話しました。やっぱりギターって存在感あるし、彼はアレンジも上手なんですよ。入れてほしい箇所と、2、3個オーダーを伝えただけであとはお任せでした。思いのほか色んなパターンを用意してくれてむしろ減らしたぐらい。笑

the room feat.Masafumi Sato from direct package “move”

–今後、客演などはどのように考えてますか?

どんどんやりたいです。ただ、理由がないのにやりたいとは思ってなくて。無理やりは失礼だし、やっても面白くない。理由と人材が一致することが重要だと思ってます。今回で言うと「CRUISING」でMimeのひかりちゃんに参加してもらってるけど、女性ボーカルかつアーバンで無機質な声質がとても合致したなと思ってます。今はレコーディングではコーラスをTDCに入れてもらわずに自分でコーラスを入れてて、少し変化をつけたいなと思ったら女性ボーカルの方にお願いするとしっくりくるかな。あとは割と自分のキーが高いので、それより更に高くハモリを入れてほしくて探しているから。でも男性ボーカルの方でもいい人がいればやってみたいですね。他にも「h/e/a/r/t/b/r/e/a/k」は友達のミュージシャン20人に少しずつ歌ってもらってて。この曲は、コロナ禍になって最初のロックダウンで「みんなどうしてる?」、「とにかく家にいます」とか連絡をする中で、宅録できる人に歌ってもらえる曲を用意してお願いしました。これは楽しかったですね。 錚々たるボーカリストの裸の歌データを聴けるのは贅沢なことだなあと思いながらミックス作業してました。コロナ禍に関する歌詞なので、これで(コロナ禍を)終わらせたいなと思ってます。「h/e/a/r/t/b/r/e/a/k 2(ツー)」は嫌だし、ステイホームも終わりにしたいしね。

「h/e/a/r/t/b/r/e/a/k 」 Playlist

–今の音楽シーンと自分たちの活動とを結びつけようと意識したりしますか?

今は今なりの曲の落とし込み方があるじゃないですか。僕達もサブスクやネットに落とし込んだ活動もしていて、世界もその方向だからどんどん続けていってたくさん聴いてもらえればいいかなと思ってて。例えばトラックを色んなバージョンでリリースしたりもやってみたいかな。自分でも「Change Clothes」っていうJAY-Zとファレル(・ウィリアムス)の曲をインストで聴いて楽しんだりしてて。そういったバージョン違いを聴いてみると面白いし、FBYでも色々なバージョンで曲を出したりしてみたいですね。音源に関しては、どんどん広げていくような活動をしていきたいかな。今自分が聴いてるヒップホップとかは海外のティーンが聴いてる音楽だし、若いエッセンスで取り入れられることはやっていきたいと思いますね。あと今はDTMが楽しくて。そこから自分、メンバーのTDC、あとはエンジニアのbisshiだけっていうクローズドな空間で音楽を作り上げていく楽しさというか。

「Change Clothes ()」

–先行配信楽曲「Wave your light」はメロウでソウルフルなラインが2020年以降のFBYの新機軸だと思っていて、締めくくりにもとても良いと思いました。

そうですね、アルバムはだいたい最後と最初の曲がまず決まっていることが多いかな。あとは最初の曲なんてラップこそしなかったけどヒップホップの影響を受けてますね。分からないことも多いけど、とりあえずやってみてバンドにヒップホップを取り入れたい、吸収したいという気持ちが前に出た感じになったかな。

「Wave your light」

–今後さらにそういった部分が取り入れられるのでしょうか?

ラップもやってみたいとか思ってましたからね。でもクラブで活動する訳じゃなくて、クラブでもライブハウスでも同じようにやっていけるような活動をしていきたいですね。実際のライブはバンドっぽくなるかなーと思いつつ、どんな場所でも盛り上げていくっていうのは難しいし、だからこそチャレンジしがいもあるし。世の中的にもライブハウスでパンパンの状態で暴れたりということがしばらくないかもしれないと思うし、自分が客席に降りて歌うのとかももう今後はやらないかなと思ってて。新しいライブの楽しさを見つけるというのがこれからのチャレンジになっていくのかなと。
今回のアルバムはそのための作品としては合ってるのかなと思います。FBYが最初から目指してる所ではあるけど、ロックバンドの垣根だったりクラブとライブハウスの垣根だったりを超えて、ダンス系、ロック系とか関係なく盛り上がるポイントを作るというのは変わらない目標かな。

OTOTSU STORE限定*数量限定販売

『million feelings』 (CD+DVD初回限定盤)
DVD (11MV)
01. small talk (day ver.)/02. small talk (night ver.)/03. Here again/04. moment/05. infi method
06. CRUISING feat. ひかり/07. CRUISING feat. ひかり (lyric video)/08. I WONDER
09. SNOWING TOWN/10. SNOWING TOWN (direct ver.)/11. 3 byoushi
https://ototsu.stores.jp/

million feelings
FRONTIER BACKYARD
 2022.07.06 RELEASE
Niw! Records

01.THIS IS
02. FEEL SO GOOD
03. We have no choice
04. small talk
05. Here again
06. lemonade
07. I WONDER
08. CRUISING feat. ひかり
09. h/e/a/r/t/b/r/e/a/k (album ver.)
10. moment
11. SNOWING TOWN
12. 3 byoushi (albuxm ver.)
13. ONE THING
14. Infi method
15. Wave your light

8th album “million feelings”
RELEASE ONE MAN TOUR

10月21日(金) 大阪 Live House Pangea
OPEN 19:00 / START 19:30
前売¥4,300(スタンディング、ドリンク別)
GREENS 06-6882-1224

10月22日(土) 名古屋 CLUB UPSET
OPEN 18:00 / START 18:30
前売¥4,300(スタンディング、ドリンク別)
JAILHOUSE 052-936-6041

10月30日(日) 新代田FEVER
OPEN 18:00 / START 18:30
前売¥4,300(スタンディング、ドリンク別)
SMASH 03-3444-6751

オフィシャル先行情報
受付期間:7月6日(水)12:00~7月10日(日)23:59
受付URL:https://w.pia.jp/t/frontierbackyard-22/

一般チケット発売日
7月23日(土) 10:00~
不明.png
大阪:ぴあ(222-075)、e+(プレオーダー:7/14-7/18)、ローソン(54063)
名古屋:ぴあ(222-084)、e+(プレオーダー:7/14-7/18)、ローソン(42226)
東京:ぴあ(222-015)、e+(プレオーダー:7/14-7/18)、ローソン(70531)

主催: SMASH
総合問合せ:SMASH 03-3444-6751 https://www.smash-jpn.com/

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