毎週水曜日 27時に放送、BAYFM 『78 musi-curate』の選曲を担当するdisk unionのプレイリスト番組。DJ/NEW WAVE伝道師のmoe the anvilによる選曲と、ピックアップした楽曲解説コラム「DIVE INTO NEW WAVE OTOTSU EDITION #8」をアップ。
【DIVE INTO NEW WAVE OTOTSU EDITION #8】
『没後40周年:クラウス・ノミ』
O.Aリンク
78 musi-curate disk union zone | bayfm78 |
2023/07/19/水 27:00-28:00
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DJ/音楽コラムニスト、平成生まれの70’s & 80’s NEW WAVE伝道師moe the anvil(モエ・ジ・アンヴィル)です。
bayfm『78 musi-curate』diskunionゾーンでは月1回、今みんなに聴いてほしいNEW WAVEアーティストにちなんだ色んなことを語っています。連動したこちらのコラムでは、放送後記やこぼれ話、プレイリスト楽曲解説などを気まぐれにお届け。
今回の放送では、6/21に没後40周年アニバーサリーとして、生前のアルバム2タイトル+ベスト盤+初CD化となるライヴ盤のデラックス・エディションがリリースされたクラウス・ノミを特集。
前回のDEVOもヴィジュアルが楽しいニューウェーヴ・バンドとしてピックアップさせて頂いたが、このクラウス・ノミに関しは、もはや空前絶後のインパクトを備えた異形、ニューウェーヴの枠に収まりきらない、アンダーグラウンドの巨人である。人間性を完璧に排除した見た目の奇怪さは、まさしく存在しているだけでファンタジー。さぞかし当時を生きたファンたちは、突如地球に現れた謎の生き物に、この上なくワクワクしたことだろう。ああ羨ましい。
彼のヴィジュアルに影響を受けたアーティストには、ほぼ同時期に衣装をパクったゲイリー・ニューマン(彼はノミ以外に関しても当時よく“パクリ屋”と揶揄されたが、ふたを開けてみれば同時代のアーティストの中でも確固たる地位を築き、現在、もっとも第一線で活躍中の一人。アーティストもどう成長していくか分からないものである)、そしてマリリン・マンソンやレディ・ガガなど枚挙に暇がない。
中でも、別ベクトルで仰々しい存在感のあるマンソンあたりは、メタル文脈とはいってもそのヴィジュアルがかなりインパクトがあったが、ノミの異質ぶりに比べたらまだとっても現実味があるほうだ。
それもひとえに、ノミの見た目の奇怪さからは想像できない、ボーカリストとしての唯一無二の個性のおかげ。ドイツ語なまりの攻撃的な英語で変態性を帯びた低音と美しいソプラノヴォイスという二面性は、ちょっと悪魔に見せかけた天使といったふうで、あんなに徹底的に人間性を排除しているのに、白塗り顔の上でいつも驚くほどキラキラしている目からは隠せない人間臭さが余計に浮き彫りになっているのだ。まさに当時のニューウェーヴな連中が目指したSF、フューチャリストの世界を一人で体現しちゃった感がある。SFとはつまるところヒューマニズムだから。
かつて地球に実在したらしいこのチャーミングな異星人はこの2020年代、80年代音楽のリバイバルとしてでなく、レトロなアングラカルチャーのネオな進化系といった感覚で受け入れられ、現代に蘇りつつある気がしている。
今のところファッション界隈で主に取り上げられているみたいだし、ハライチ岩井さんのコントもかなり衝撃的だった。彼が自作したらしい塩の魔人の歌も、ノミのオリジナル曲にすごく寄せていて感心した(あれがきっかけでノミリバイバルが盛大に起きるかと思ったが、まだ少し時間はかかりそう)。
これからノミは今日のアングラカルチャーでどんなふうに進化していくのか。そしてこれに乗じてニューウェーヴが意外な形で、もうちょっと派手に盛り上がってくれればな…と模索していく中で、微妙な気持ちではあるが、やっぱりその鍵は音楽性よりも、ノミのような取っ掛かりの良いアーティストにあるんだろうな、という気がしている。
moe the anvil
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10代から70・80年代Punk/New Wave/ニューロマンティックに傾倒したことをきっかけに2017年よりDJキャリアをスタート。 J-WAVE番組イベントへの出演等を経た後、2018年からはディスコミュージックを中心にプレイ、アンダーグラウンドシーンにおいても、大貫憲章、松田高志、DJ MIKU、牧野雅己といった元新宿ツバキハウスDJとの共演などを重ね、プレイスタイルに磨きをかけていった。その傍ら、延長に派生したと解釈するIndie Dance / Dark Disco / Leftfield等をプレイ。 現在、都内唯一のNew Wave イベントである”New Wave Lounge”を主宰、主要クラブや野外ダンスパーティーGLOBAL ARK等へ出演するほか、活動はフロアでのプレイに留まらず、ラジオ番組レギュラー出演・音楽コラム執筆を通し、平成生まれの後追い世代ならではの多角的なアプローチ、ノスタルジックな雰囲気を残したセレクトで、幅広い世代に今昔のNew Waveサウンドを伝道する。
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