毎週水曜日 27時に放送、BAYFM 『78 musi-curate』の選曲を担当するdisk unionのプレイリスト番組。DJ/NEW WAVE伝道師のmoe the anvilによる選曲と、ピックアップした楽曲解説コラム「DIVE INTO NEW WAVE OTOTSU EDITION #9」をアップ。
【DIVE INTO NEW WAVE OTOTSU EDITION #8】
『来日記念 : シンセの魔術師 ハワード・ジョーンズ』
O.Aリンク
78 musi-curate disk union zone | bayfm78 |
2023/08/23/水 27:00-28:00
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DJ/音楽コラムニスト、平成生まれの70’s & 80’s NEW WAVE伝道師moe the anvil(モエ・ジ・アンヴィル)です。
bayfm『78 musi-curate』diskunionゾーンでは月1回、今みんなに聴いてほしいNEW WAVEアーティストにちなんだ色んなことを語っています。連動したこちらのコラムでは、放送後記やこぼれ話、プレイリスト楽曲解説などを気まぐれにお届け。
今回の放送では、9月に来日公演を控えたハワード・ジョーンズを特集。同時に彼にとって今年はデビュー40周年となる節目。放送では1984年リリースの名盤1st『Human’s Lib(邦題:かくれんぼ)』から中心にピックアップ。
もうひとつ、全盛期のこれまた名曲揃いな2nd『Dream Into Action』から1曲も紹介してないじゃないか、というファンのお怒りが聞こえてきそうだが、厳密にはニューウェーヴに影響を受けたそれ以降のアーティストである(と個人的には解釈している)彼の作品の中でも、最もニューウェーヴ色が色濃いアルバムがこの『Human’s Lib』だからである。初期OMDやデペッシュ・モードを彷彿とさせるカオスなピコピコサウンド、リアルタイムで最も影響を受けたというバンドの一つである、JAPANを意した異国趣味あふれるイントロ使い等、全曲ハイクオリティな正に名盤。これら先達が鳴らしていた実験性を影響として残しながら、彼らが1980年代初頭には(時代として)表現しきらなかったキャッチ―なポップセンスという形で見事に昇華しているのが、このアルバムのすごいところ。しかもそんな音を、約6台のシンセ+ドラムマシンを同時に使い、彼ひとりで完成させているのだから神業的なミラクル盤である。
アイドル的なイメージで玄人なマニアからは食わず嫌いされがちな印象のあるハワード・ジョーンズであるが、デビューから間もない1985年のグラミー賞授賞式では、今昔シンセサイザー功労者としてスティーヴィー・ワンダー、ハービー・ハンコック、トーマス・ドルビーらとともに各々のヒット曲をアレンジしたメドレーを披露したり、彼が最も尊敬するキーボーディスト、キース・エマーソンらプログレ界の御大とも数々コラボレイトするなど、シンセオタクの間では早くから別格扱いであった。当時のオタク少年少女からすれば、新たなシンセ師匠といったところか。
デビュー当初から「シンセの魔術師」なる異名を取り、80年代におけるテクノポップの商業的な発展にもっとも貢献した一人であるのは間違いない。1990年代以降はそうした作風も見せ始めてはいたが、もし彼が若かりし頃に心酔したジャズやプログレの感覚をそのまま引きずっていたら、シンセが子供たちの憧れの的になるのはもっと先の話になっていたかもしれない…仮にYMOを差し置いても、である。やっぱりあのかわいいヴィジュアルで、一人で何台ものシンセを操るという超絶技巧のギャップは、当時かなりの衝撃があったはず。
私は80年代を体験できなかった身、まああんまりその辺のやり場のない悔しさに目を向けたところで身も蓋もないわけであるが、やっぱりハワード・ジョーンズのひとりバンド態勢パフォーマンスだけは、どうにかワープして見てみたい…そんな苦しいノスタルジーを、9月の来日公演では思い切り昇華したいと思う(笑)。いや、今のハワードおじさんも良いアルバムをコンスタントに出してくれるし、今っぽいエレクトロなのだがちゃんとその源流に己ありといったプライドが流石のイブシ銀な、カワイイおじさんなのだ(相変わらずベビーフェイス)。ニック・ベッグス(元カジャグーグー(b))もサポートで入るし、今から来日公演が楽しみ!
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10代から70・80年代Punk/New Wave/ニューロマンティックに傾倒したことをきっかけに2017年よりDJキャリアをスタート。 J-WAVE番組イベントへの出演等を経た後、2018年からはディスコミュージックを中心にプレイ、アンダーグラウンドシーンにおいても、大貫憲章、松田高志、DJ MIKU、牧野雅己といった元新宿ツバキハウスDJとの共演などを重ね、プレイスタイルに磨きをかけていった。その傍ら、延長に派生したと解釈するIndie Dance / Dark Disco / Leftfield等をプレイ。 現在、都内唯一のNew Wave イベントである”New Wave Lounge”を主宰、主要クラブや野外ダンスパーティーGLOBAL ARK等へ出演するほか、活動はフロアでのプレイに留まらず、ラジオ番組レギュラー出演・音楽コラム執筆を通し、平成生まれの後追い世代ならではの多角的なアプローチ、ノスタルジックな雰囲気を残したセレクトで、幅広い世代に今昔のNew Waveサウンドを伝道する。