“シンガーソングライタードラマー”岡山健二の、ソロ作品では初流通となる1st mini Album『The Unforgettable Flame』が、2023年8月2日に発売された。記念すべきソロ作品第一弾の完成を祝して、OTOTSUでは岡山氏本人によるセルフライナーノーツを公開。全3編にわたり、じっくりと解説してもらった。
文:岡山健二
編集:清水千聖 (OTOTSU編集部)
名もなき旅
今回のアルバムをリリースするもう一つのきっかけは『名もなき旅』という曲が出来たことだった。
今更、2021年頃のことを書きたいとは、あまり思わないのだけど、曲を説明するには、やはり必要になってくるので、書いてみることにする。
でも、その前にもう少し昔のことも振り返ってみる。思えば、僕の生活は、2017年頃からずっとバタバタしていた。
classicusでアルバムを出したものの、約1年後にはギタリストである弟も脱退することになり、ベースの淳也くんと2人編成でのライブのやり方を模索し続けるという状態に突入。(ちなみにそれは今も続いている。)
そして、その頃、ほとんど同時に始まった銀杏BOYZとサニーデイ・サービスのドラム・サポートで毎日レコーディングや、ライブで各地を飛び回り、それから、もう少しで生まれてくる子供のために、家具や、手続きなど、いろんな準備を進めるといった具合で。
何とかくぐり抜けたけど、もうあのような忙しさは二度と味わいたくないと思うような日々だった。
andymoriが解散してから、立ち上げた自分のバンドclassicusは、 2015年頃から本格的に活動を開始した。僕はエレキギターを弾いて歌うようになった。その当時の心境は、もうドラマーとしての活動をやめるつもりでいたのだった。
元々、サポートなどを、たくさんやりたいというタイプでもなかったし、この際、段々とフェードアウトしていこうと思っていた。ポジティブな意味合いでいうと、ドラムに取って代わるようなものを、バンドで作ろうとしていた。
しかし、バンドのドラマーがなかなか定まらず、結果、自分が叩くしかないかと、ドラムボーカルという形で、再びドラムを叩くことにし、弟の靖史にギターを弾いてもらうことに。
これは今にして思うと、不思議なことなんだけど、歌を歌いたいと思っていたのに、ドラムの仕事が増えたということだった。自分のバンドをやりながら、しっかりできるのだろうかと悩んだが、結果やることに決めたのだった。
その頃から、何となく自分にとってドラムというものは仕事なんだな、ということがわかってきた。というか諦めがついてきた感じか。
ドラムが仕事で、歌が趣味(と書いたら、何だか軽くなっちゃうから、かっこよくライフワークとでもしておくか、でも。それだとカッコよすぎる気もする)といった具合に、自分なりのペースを作り始めていった。
ロック系のドラムの仕事というのは、誰にでもできるというわけではないんだな、ということも30歳くらいになり、ようやく理解できるようになった。でも、ありがたいことに今は、それを求められているのだから、やっていくべきだなと素直に思うようになった。

andymoriが解散してから、ソロやclassicusを始めて、自分の表現方法を何とかアルバム1枚分くらいまで作ったかと思ったら、次は仕事としてのドラムを自分の中で、どう捉えていくかということを考えるようになった。
神様が6日間で世界を作ったという話もあるが、ひとつのことがようやく肩がついたかと思った途端、また別の何かが転がり込んでくるという、いつものパターン。
自分のバンドは、小さな規模ではあるが、日々ライブ活動を続け、サポートでは、大きな会場でドラムを叩き続ける日々の中、自ずと、自分がどういったことを歌っていくべきなのか、ということに改めて、向き合わされることになった。
自分は今まで何度も夢破れてきたせいか(人からはあまりそういう風にはみられないのだが)あまり多くは望まないといった習慣が身についているのだけど、それでも、日々の中に、少しでも希望を見出していたいと思っているし、それに、今の自分があるのは、今までに出会ってきた仲間や友人たちがいたからで、でも、そのほとんどが、もう遠く離れてしまっているので、なかなか会って話をすることもできない。でも、ずっと感謝はしている。
自分が作る曲のほとんどは、そういった気持ちが込められていると思うし、(歌詞では、そういったことを書いてなかったとしても)今更歌うこともないと思っていたが、心の奥底では、改めて、そういう曲を作りたいという気持ちがあったのだろう。
2021年のヘビーな夏、家族の半分が流行りの風邪にかかり、体調はすこぶる悪く、部屋からは一歩も出れずという、ある種の地獄を見ていたのだけど、そんな中でも、子供たちは遊びたいと泣きついてくるしで、気付いたら、手にしていたギターで、思いついたのが「名もなき旅」のはじめの一節だった。
10代後半や20代前半の頃は、曲を作った時、理由もなく、よく涙が出てきたものだったが、30代にもなるとカラッとしたもので、そんなことは全く無くなってしまっていたのだが、この曲を作った時は、とても久しぶりに、涙がこみ上げてきたことを、今書きながら思い出した。
多分歌とかは、本来はそういうものなんだろう。いろんなことに慣れてきてしまっていた自分にとって、とても大きな1曲だった。
昔みたいに夢ばかり見ていられないし、ドラムの仕事もヘタは打てないが、歌は続けないと、という葛藤の末に、ある日、生まれた曲。
自分は本当に時間のかかるタイプなんだと思い知らされた一連の流れでもある。

あのビーチの向こうに空が広がってる
4曲目の「あのビーチの向こうに空が広がってる」は、2015年くらいの作。
当時、自分は吉祥寺の「スタジオ分家」というスタジオに通いつめて、毎日のように曲を作っていた。
スタジオ近くのカフェで、コーヒーを買ってから、スタジオに向かうという、いつもの流れがあり、この曲は、そこの店員たちを日々眺めていたら、ある日、ポロッと出来た曲だった。
「海辺で」「名もなき旅」などに比べると、特に何もないところから出来たし、思い入れがものすごくあるかと言われたら、そういうわけではないのだけど、ふとした時に、この曲のことを思い出すことがよくあり、自分にとっての大事な何かしらが、そこに描かれているのだろうなと思ったりする。
曲名は、当時よく読んでいた植草甚一氏の雰囲気を模倣している。
軒下
5曲目の「軒下」は、2021年の3月に作った。
その頃の自分は、ライブバー、またはライブハウスなどで、定期的に歌っていたが、(今も変わりはない)世の中は、まだコロナの影響で、大きな会場での、人数制限や声出しなどが、まだまだきびしい状況だった。
ちょうど、その3月に銀杏BOYZが、久々にアコースティック編成でのツアーを行うことになり、スタジオに集まり、練習に精を出していた。
いつだったかは忘れてしまったが、その中のどこかで、リーダーの峯田さんが来れなくなった日があり、スタジオも、もうすでに押さえてあったのもあり、スタッフの方が好きに使ってくださいと言ってくれた。
ドラムを叩いていたけど、あまり乗り気にならなかったので、目の前にあった峯田さんのギターをポロポロ弾いてたら出来た曲。
自分が日頃思っていることが、自然に出てきた感じがあるし、サラッとしているところも気に入っている。ライブでも歌いやすくて、非常に助かっている。バンド編成だと、この曲の終わりにギターソロを弾くのが、最近の楽しみのひとつ。

RELEASE INFORMATION
The Unforgettable Flame
岡山健二
2023.08.02 Release
monchént records
Price: 2,200 yen (tax in)
Format: CD / Digital
Track List
01. intro
02. 海辺で
03. 名もなき旅
04. あのビーチの向こうに空が広がってる
05. 軒下
06. 永遠
07. My Darling

LIVE INFORMATION

2023/09/17 (Sun.) 大阪 梅田 HARD RAIN
岡山健二 × 明るい部屋 共同企画
岡山健二 1st mini album『The Unforgettable Flame』
発売記念イベント
act:岡山健二 (band set) / 横沢俊一郎バンド / 加納良英(and young…)
open 18:00 / start 18:30
ticket adv. ¥3,000- / door. ¥3,500- (+1D)
予約:各アーティスト または
hardrainmail@yahoo.co.jp
ARTIST PROFILE

1986年 三重県生まれ。12歳でドラムを始め、のちにギターとピアノで作曲を開始。19歳の時に上京し、2011年にandymoriでデビューを果たす。2014年、同バンドの解散後は、自身のバンドclassicus(ヨミ:クラシクス)を結成し、コンスタントに音源を発表。現在はソロ活動と並行し、銀杏BOYZ / miida / 横沢俊一郎などのサポート活動や、様々なアーティストの音源参加なども積極的に行っている。
【Official SNS】
Twitter https://twitter.com/Okayama_Kenji @Okayama_Kenji
Instagram https://www.instagram.com/kenji_drums/?hl=ja @kenji_drums
Classicus
Web Site https://www.classicus.tokyo/
YouTube https://www.youtube.com/@classicusofficialchannel186
