

1990年代よりジャパニーズ・デス・メタル・シーンの最高峰に君臨し続けるDEFILEDが、早くもニュー・アルバム『Horror Beyond Horror』をリリース。バンド・リーダーの住田雄介へインタビューを敢行。
国内のみならず海外でも人気を誇るDEFILEDが、昨年にリリースした『The Highest Level』から間髪入れずに新作アルバムを完成させた。独特な音楽性から歌詞のコンセプト、さらには海外での人脈に至るまで、バンドの深層に迫ります。
インタビュー: 田村直昭
-前作『The Highest Level』から約1年半という短いインターバルで『Horror Beyond Horror』がリリースとなりましたが、曲のアイデアはいつ頃から出来上がっていたのでしょうか?また、なぜこのような短期間でアルバムを制作しようと考えたのでしょうか?
住田雄介(以下S): 曲のアイデア、ラフな原曲は前作『The Highest Level』がリリースされる前からほぼ揃っていました。前作の延長線上の勢いで曲を書いた、というと語弊がありますが、コロナ禍パンデミックでツアーそのものがキャンセルになりその鬱憤と空いた時間を創作にぶつけた結果、創作の波に乗りました。過去には創作のスランプ期も経験していたので曲が書ける時はどんどん書いていこう、と。リリースの間が1年半というのは特に短くもなく昔は多くのアーチストにとって標準的なスパンでした。連年で出しているアーチストが昔は沢山いましたし。私達もノっている時は立て続けにリリースを、と思っています。今は多くのアーチストが2年から3年スパンでのリリースが増えた印象ですが、矢継ぎ早のリリースも勢いありますしアリではないでしょうか。
-『Horror Beyond Horror』の曲作りを行う上で前作と異なったアプローチを取り入れたことはありますか?
S: 前作『The Highest Level』でも音楽的挑戦はありましたが、今作『Horror Beyond Horror』は更なる挑戦もありました。サンバのリズムを取り入れた“The Crook and Flail”や、ギター/ヴォーカルの濵田の発案でしたがフラメンコ調クリーン・トーン・ソロを取り入れた“To See Behind the Wall”などでしょうか。ストンプしつつスラッシュ・リフで変則的な曲構成という“The Chains”などもかなり異質かもしれません。初聴では「え?! なんだこりゃ!?」となるかもしれませんが、何回か聴けば面白いと感じて頂けるかもしれません。デス・メタルというのはスタイルやテンプレートに保守的といいますか、伝統や系譜を重んじる傾向が強いと思います。勿論、それらも大事ですが異端な前衛要素も自然に取り込んでいけたら面白いかな、と。そのマインドはVOIVODなどから学んだものかもしれません。
-前作同様、ミキシングとマスタリングは初期DEFILEDを手掛けていた菊池賢治氏によるものですが、その理由を教えてください。
S: 菊池賢治さんは旧知の仲で信頼関係にあります。当バンドの初めてのデモ・テープのレコーディングも千葉県船橋市のスタジオ・ネストで1993年に彼の手により録音、ミックスされました。今作でも私達の要望も細かく聴いてくれます。CASBAHやGENOAに始まり日本デス・メタル黎明期から多くのデス・メタル・バンドのレコーディング、ミックスをされてきたベテラン・エンジニアなので安心して任せられました。彼との仕上げ作業にはとても満足しています。
-アルバム・タイトルはどのような意味が込められているのでしょうか?
S: 私が青年だった頃 (20世紀)はディストピアな世界は近未来のダークなSFのテーマと捉えていました。たとえばジョージ・オーウェルの『1984』という小説の虚構世界。思想統制され言論の自由もなく監視社会の全体主義と洗脳がはびこる暗い世界。2024年の今、まさにそんなディストピアが除々に現実になってきている?!というリアルこそがホラー。そしてそんなディストピアな時代になりつつあることにすら多くの人が気付かないというホラー。そんな感じの意味合いもこっそり込めています。深く考えると気持ちが暗くなりますよね。あまり多くを語るのは野暮です。単なるホラーをテーマにしたデス・メタルなアルバムとして楽しんで貰えたら、それで全然良いと思います。
-ニュー・アルバムの歌詞について詳しく教えてください。
S: 歌詞はどういう風に読むかによって捉え方が変わると思います。シリアスに読むと結構、暗い陰鬱なテーマかもしれません。古典SFのお約束なテーマとも言えますし、深読みすれば痛烈な社会風刺とも捉えられます。過激さが求められるジャンルではあると思いますが、私達に関しては人の気持ちを傷つけるレベルの歌詞は書かないように気をつけています。楽曲との整合性から狂った暗い世界観を扱ってはいますが、最終的には誰もが楽しめる作品であってほしいと思っています。露骨で直接的な表現や特定個人や団体への非難などは含めず、ダークですがエンターティメントとして成り立つ範疇で歌詞を仕上げているつもりです。
-所謂デス・メタル的な死や残虐な歌詞ではなく、社会的なアンチテーゼや皮肉にまで及ぶ、幅広い世界観を持っていると思いますが、それはどこからインスピレーションを得ているのでしょうか?
S: 前述と重複しますが『1984』(ジョージ・オーウェル著)などダークな古典SFのファンタジーがベースにあり、そこに現代社会に世界で起きている様々なソーシャルな事象への冷笑的視点、警鐘などリアルを織り込んでいます。若い頃にメタルとは別腹でハードコア・パンクも好んで聴いていたので、ソーシャルな風刺などを歌詞として扱うことへの抵抗はありませんでした。私の個人的な話になってしまい恐縮ですが、小学生の時に電車の飛び込み自殺の現場に遭遇してしまい、残虐なモノへのトラウマがあります。血や死体とかは一切、興味なく生理的に苦手です。怒り、憎悪というのはアングリー・ミュージックなので私達の歌詞の根幹にもありますが、社会的な不条理、腐敗などへのフラストレーションから来るものが大きいですね。それらも聴く人を選ばず誰もが共感できる範疇で書くようにしています。
-前作の国内、海外での反応はどうでしたか?
S: 国内外ともに良い反応が多かったです。中には笑ってしまうほどの酷評もありましたが、そういうのは気にしません。海外ですとアメリカからの反応が断然よかったですし、多かったです。メディアのレビューのみならず多くのファンから激励のメッセージをもらいました。アメリカへのプロモーションに今後、力を入れたいと思います。国内は地道に全国ツアーをした成果が出ているのか、各地から良い反応が返ってきていて嬉しい限りです。
-DEFILEDは『DIVINATION』(2003年)からSeason of Mistからアルバムをリリースしていますが、Season of Mistと契約を継続している理由を教えてください。
S: レーベルとのビジネスもですが、それらを超えた繋がりもあるからかもしれません。2016年にはプロモーション担当者がアイスランドで結婚式を挙げ、私達も招待されました。当初はバンドを代表して私だけで来訪する予定でしたが、結局メンバー全員でお祝いすることになり、ならアイスランドでライヴもやったら?となりレイキャビック・デス・フェスティバルのワームアップ・ギグへの出演をアレンジしてくれました。そこでBLOOD INCANTATIONとも共演して仲良くなり、といろいろ拡がっていきました。またレーベル・オーナーと彼の父上が大の日本文化好きでたびたび日本を訪問していたので、一緒に相撲を観たりちゃんこ鍋食べたりという交流もありました。彼らは今や大きなレーベルですが、ニッチな音楽をやっている私達へもリスペクトを払ってくれています。ありがたい話です。20年以上、彼らとの契約が継続しているのは自分たちでも驚いています。
-DEFILEDは所謂オールドスクールなデス・メタルとも、テクニカル・デス・メタルとも異なるサウンド・スタイルだと思いますが、今のデス・メタル・シーンの中でDEFILEDはどのような位置にいると思いますか?
S: どうでしょう。人によって分析は違うと思います。自身がシーンの中でどういう位置かという客観的なことは正直分かりません。私達の音楽性はサブ・ジャンルでカテゴライズしづらいニッチなポジションかもしれません。エア・スポットにいるような。どの潮流にも属していない自覚はあります。だからこそというと変ですが、音楽的には独自な挑戦を恐れずやっています。外部に対して気負うものはなく、あくまでバンド内でのストイックな対話と好奇心の中から自分たちのサウンドをひねり出しています。自由に創作とはいえバンド内では進むべき方針は明確です。

-12月に来日公演を行うMALEVOLENT CREATIONと共演しますね。
これまでに共演した海外バンドで、特に印象深いバンドを教えてください。
前作をリリースした後、国内でのライヴ活動を精力的に行っていましたが、ライヴやツアーにおけるバンドの考え、またこれまでに面白いエピソードがありましたら教えてもらえますか?
S: MALEVOLENT CREATIONは30年を超えての交流があったので今回の共演は熱いものがあります。まさか共演する機会があるとは、当時思っていませんでした。彼ら以外も共演した海外バンドとの思い出は沢山あります。昨年、VADERとEXHUMEDと国内で共演しましたが、どちらも過去の縁が繋がった再会でした。VADERとはパンデミック宣言でたった5公演だけで終わってしまったものの、2020年は3週間、欧州を同じツアー・バスで揺られる予定でした。空港でバスを降りた時は「またいつか再会、共演できるかな」とおセンチになっていましたが、日本で再会/共演できました。EXHUMEDとの縁は私達の2ndアルバム『Ugliness Revealed』(2000年にリリース)のプロモーションを担当してくれたのが、EXHUMEDのMattだったんです。そのアルバムはNecropolis Records傘下のBaphomet Recordsからのリリースでしたので、Necropolis RecordsのオフィスでDeathvomit Recordsを担当していた彼が、実質的に私達のアルバムをプロモーションしてくれていました。不思議なもので良い縁があった人達とはまた時間をおいてでも再会があります。面白いものです。
国内のツアー活動でも同じことが言えます。中には四半世紀ぶりの再会などもあり音楽活動をやってきたからこその奇跡もあります。デジタルで簡単に音楽は聴けますし、情報も伝達しますが、ツアー活動で目の前で演奏をし、共演バンドやファンと直接触れ合うことは今の時代でも凄く重要だと思います。人とのフィジカルなコンタクトあってこそ音楽活動の醍醐味があると信じています。
-最後に今後の活動について教えてください。
S: まずは今作をリリースしたら9月に約3週間、日本国内のサーキットをします。今回初めて巡業する街もあり楽しみです。海外での活動も再開していきたいです。皮切りに11月下旬にバンコクでMALEVOLENT CREATIONと共演します。あとは今作の次のアルバムも制作が佳境段階なので、波にノッている時に仕上げたいと思います。今作リリースにあたり3本PVも作りましたのでお時間あれば是非チェックしてみて下さい。興味もったら是非ライヴ会場にも足をお運び下さい。日本盤は1曲ライヴがボーナス・トラックでついています。特定のショップで購入すると缶バッチもついてきますので是非チェックしてみて下さい。今後ともよろしくお願いいたします。インタビューを読んで頂きありがとうございました。
-TOUR INFORMATION-
DEFILED
『Horror Beyond Horror』 JAPAN TOUR 2024
9月13日(金) 岡山 @ Dogvuilt
9月14日(土) 広島 @ Leo
9月15日(日) 唐津 @ Yggdrasill
9月16日(月祝) 福岡 @ reflex
9月20日(金) 大阪 @ Hokage
9月21日(土) 彦根 @ Benihana Dance hall
9月22日(日) 名古屋 @ 246
9月23日(月祝) 東京 @ Earthdom
9月24日(火) 横浜 @ El Puente
9月25日(水) 福生 @ Chicken Shack
9月26日(木) 宇都宮@ Beat Club
9月27日(金) 長野 @ Rosebery Cafe
9月28日(土) 新潟 @ Rocka
9月29日(日) 仙台 @ Solfa
9月30日(月) 福島 @ Area 559
10月25日(金)甲府 @ Kazoo Hall
10月26日(土) 東京 @ Earthdom
10月27日(日) 松戸 @ Dugout2

–RELEASE INFORMATION–

DEFILED
Horror Beyond Horror
2024.09.25 Release
CD: DYMC-6096
-DEFILED SNS-