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ハードコアレジェンド達によるバンド「D・O・T」が、彼らを旧くから知る人物達とのインタビューで最新作『BOKU NO TOMODACHI』を様々な角度から紐解き、語る。
~ライター・大越よしはる~【前編】

photo: Genro Kitajima
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 前作から実に6年ぶりとなる4thアルバム『BOKU NO TOMODACHI』を完成させ、今週6月7日に発売を控える、アラビック・パンク3人組D・O・T。突然の病に倒れたHIROSHI(ベース、ヴォーカル)を欠きつつも、残る二人、NEKO(ヴォーカル)とMARU(ドラム、ヴォーカル)に話を聞くことが出来た。まずは前半をお届けしよう。

インタビュー・テキスト:大越よしはる
編集:汐澤(OTOTSU編集部)


―新作完成おめでとうございます!

NEKO&MARU:ありがとうございます!

NEKO:お待たせしましたって感じ。

―前作から6年空いてますけど、コロナ禍が影響していた?

NEKO:まず一番はコロナですね。

―レコーディング自体は去年ですか?

NEKO:9月に終わってました。

―今まで以上にボリューム感のある作品ですね。端的に言うと長い曲が多くなった…。

NEKO:はい、そうですね。

―長くなったのは、曲の構成上の自然な要求でしょうか?

NEKO:HIROSHIくんが長くしたっていう、気がしますね(笑)。

MARU:ループにはまって…(笑)。

NEKO:そうね(笑)。

―もうひとつの特徴としては、ミドルテンポの曲が増えて、速い曲、速いパートが少なくなって…ハードコアとは言い切れない音楽性に。

MARU:そうそう、俺もそう思った(笑)。

NEKO:ハードコア率低いですよね(笑)。

―コレも、意識的に速い曲を減らしたワケではなく?

NEKO:これもHIROSHIくんの意向ですね。どっちですかね、意図してやったのか、気付いたらそうなったのか。

MARU:速い遅いにこだわったんじゃなくて、キャッチーさ、だよね。

NEKO:そういうの(曲の速さ)関係ないでしょう、とは言ってたよね。

―これまでの3枚に較べても、メロディアスさやポップさが非常に増しましたね。

NEKO:はい、(速い曲が減った)その分、そっちに行ったかなという気がします。

―キャッチーでポップであるためには、メロディが非常に重要ですけど…ここに来て、NEKOさんの歌唱力の向上が。

NEKO:工場?…ああ、向上(笑)。

MARU:ファクトリーじゃなくてね(笑)。

―(笑)1枚目のアルバムで、歌メロを度外視した、テンション重視の…。

NEKO:勢いで投げつける、と言われましたね。1枚目はそんな感じでした。ハードコア一直線みたいな、投げつけ歌唱法みたいな感じ。

―作を重ねる毎に歌唱にメロディアスさが増しているというか、歌唱力そのものが上がってきている…。

NEKO:多分それを要求されていたせいで、そうなってきているのかなという気がします。

MARU:あとはHIROSHIの、楽曲を作る能力が上がってきた。楽曲作りも、楽器の演奏と同じでね、数こなすとやっぱり、上手になってくる。(初期は)「ベースラインとヴォーカルライン一緒じゃん」みたいなのがあったんだけど。

NEKO:HIROSHIくんが、大分前から曲がいっぱい出来ちゃって、正直歌詞が追い付かない、メロディラインが追い付かない…ってことで、(作詞が)後追いになっちゃったっていうのがありますね。HIROSHIくんが先行し過ぎちゃって、「ちょっと待って待って待って」(笑)が続いてましたね。

―もうひとつの特徴として、HIROSHIさんとMARUさんのコーラスとヴォーカルが前以上にフィーチュアされているという。

MARU:ギターがない分ね、試行錯誤して。

―コーラスは重ねてるところもありますよね?

MARU:重ねてる場所もあります。

NEKO:二人とも歌上手いんですよね。

―そうですよね。「diskunion」の特典音源ではHIROSHIさんのリード・ヴォーカルも…。

NEKO:初のHIROSHIくんリード・ヴォーカル(笑)。(アルバム本編の)中に入んなくて残念だったんですけど。

―更にもうひとつ。これまでにもかなり顕著ではあったんですけど、メッセージ性が更に前面に出たアルバムになっている。

NEKO:そうですね、明確に。

―特に今回は共生、インクルーシヴ(包摂)っていうのが非常に意識されている…。

NEKO:全編、みんな一緒に、共に生きるっていうのがテーマですね。

―曲が先で歌詞が後ということですけど、自然にそういう内容の歌詞に?

NEKO:こういうテーマで行こうっていうのが、最初にHIROSHIくんの中で決まっていて、先に曲が出来ていて、それに合った歌詞を、後から作っていったっていう順番ですね。

―昨年11月に僕がCHOP(池袋)でライヴを拝見した時に、今回のアルバムの曲もかなり披露されていたんですけど。その時に一緒に観ていた、音楽ライターの遠藤妙子さんが、ライヴ後におっしゃったことを凄くよく覚えていて…「包容力と怒りが同居している」っていう。

NEKO:正直やっぱり、怒りの感情っていうのは常にありますね。社会的な状況に対するそういった気持ちと、「みんな一緒に行こうよ」っていう気持ちと、両方ありますね。

―曲についてもお伺いします。1曲目が「CHILD WARNING」。いわゆる、“みんな違ってみんないい”…インクルーシヴを歌う歌詞になっている、一方で“WARNING”と。ヴォーカルにも非常に切迫感がある。一種の危機感が込められているような気がするんですけど。

NEKO:はい、汲み取っていただいた通りで。みんな違ってることを認めない世の中なので。みんな同じであることを強要されるというか。みんな同じじゃなきゃいけない、そこから外れた者はやっつけられるっていうか、出る杭は打たれる式の構図がやっぱりあって。そういう目にも遭ってるし、そういう人をたくさん見てきているので。根底に怒りというのがあったりするもので、それが出てきているのかなと。子供たちっていうのは、そういうのがわかっていたりするじゃないですか。違う国の子供や障がいのある子供でも、一緒に遊んだり出来るんですけど、大人になるとそれが出来なくなって、差別になっていったりする。それで、そういう表現になっていったと思いますね。「子供たちはわかっているんだよ」っていう。

―アルバム全体を聴く中で、曲を自分なりにグループ分けしてみたんですけど。「CHILD WARNING」と同じ流れにある曲として、8曲目の「HEART OF GOLD」があると思うんですね。コレも、たとえ理解出来ないとしても、違いをそのまま受け入れようっていう、そういう歌詞だと思うんですけど。

NEKO:おっしゃる通りでございます(笑)。

―「CHILD WARNING」「HEART OF GOLD」、あと「BOKU NO TOMODACHI」には、通底する大きなテーマがあるな、と。「BOKU NO TOMODACHI」の“離れているけど本当はつながっている”っていうのも、物理的とか距離的に離れているだけではないですよね。精神面や認識での隔たりとか…。

NEKO:ホントよく理解していただいて。ありがとうございます。

―僕はこの3曲を勝手に“共生三部作”と呼んでるんですけど。

NEKO:ちょっと、自分がメモ取りたいわ!(笑)。なるほど、共生三部作。

MARU:“離れているけど近くにいるよ”っていうワードは、亡くなって行った友達に対する想いも入ってるんでしょうか?(急にインタビュアーのような口調で)

NEKO:まったくその通りですね。レコーディングでは、“Hello Donkey Hello Bird Hello Cat”になってるんですけど、ライヴではレスリー、オニちゃん…とか、(亡くなったファンや関係者の名前を)言わせていただいてます。D・O・Tが活動してからいつも観に来てくれている友達が、あちらの世界に行ってしまったりしていて…離れているけど今もつながってるよ、ということを伝えたいな、と思っていて。皆さんもきっと、コロナの間とか、そういう出来事があったと思うし、これからもあるでしょうし、震災でもあったでしょうし。『BIRDS EYE VIEW』(3rdアルバム)にしてもその前にしても、死の連続の上に生が成り立っているっていう認識が常にあるんですよ。連綿とつながる命の上に立たせていただいている。そのお陰で生きてる者はこの瞬間の先端を生きている。…っていう意識を持ってステージに立ったり歌ったりしている、っていうのがあるので、それが自然と出てきちゃう。考えてないんだけど、歌詞に出てきちゃう、毎回の作品の中に出てくるっていうのがいつも…あとでそう気が付きます。

―で、2曲目の「FACE TO FACE」ですけど…コレは、ネグレクトとか毒親に関する歌詞なんですね。

NEKO:そうなんですよ。幼児虐待です。シンプルな歌詞なんですけど。

―“どうしてどうして?”っていうのは、虐待されている子供目線での歌詞。

NEKO:そうなんです。子供目線なんですよ。ある種、毒親だけじゃなくて、社会に対してもなんですけどね。

―3曲目「TIC TIC TIC」から4曲目「LIAR」、5曲目「I’M NOT FALLEN ANGEL」…この3曲は障がいのある人や子供たちについての歌になっていると思うんですけど。「TIC TIC TIC」は、いわゆる多動・衝動優勢型の自閉症とか…?

NEKO:トゥレット症候群…ゲオルギー・ジル・ド・ラ・トゥレットという人が見つけた病気で、意図してないのに奇声を発してしまったり、体が動いてしまう、チック症状、の歌になります。チック症状を持ってる人の気持ちになった歌、ですね。

―“奇声と聞こえる発声”“体が勝手に動くんだけれどびっくりしないでね”…。自閉の子にも当てはまるなあと。

NEKO:はい。実際、そういった大人とか子供たちに初めて会った時に、凄いびっくりしちゃって、私。「ええ~!」ってなっちゃって。でも、本人が出そうと思って出してる言葉じゃないので。そのしんどさとか苦しみに気付いて、またびっくりしちゃったんです。

―本人的には騒いで困らせてやろうとしているワケではないですもんね。

NEKO:そうなんですよ。意に反してっていうのが、つらいですよね。動きになって出ないと、余計気持ち悪いっていうか。切羽詰まってくるんですね、本人は。私が、凄く尊敬している先生がいて…もう亡くなってるんですけど、“野口体操”の創始者の、東大名誉教授の野口三千三先生っていう方がいて、若い頃師事してたんですが。その先生が私に言った言葉がもの凄く残ってて。「みんな障がい者だよ」って。「種類とか強度とかが違うだけで、人はみんな障がいだよ。個性のひとつじゃないか」って。私たちもそんな要素が、いろいろあるじゃないですか。濃さがいろいろっていうだけで(笑)。

―グラデーションですよね。

NEKO:そう、グラデーションが違うだけで、どっちの方に出てるかの違いだけで、他人事ではないんだっていうのを、切実に思うところがあります。HIROSHIくんもそれは言ってましたね。もの凄く共感出来るところで。(それを)強調して見せてくれる人たちがいるっていう…本当はみんな一緒。

―極端な顕れ、でしかないんですよね。

NEKO:そうなんですよ。別に障がいと括られてなくても、そういう人いっぱいいますからね、自分も含めて。

―僕も“発達障がい”の本を読めば読むほど、なんだ、周りじゅう当てはまる奴ばっかりじゃないかって…。

NEKO:おっしゃる通りです。(障がいの要素が)入ってない人いたら教えてもらいたいぐらいですよね。

―続く4曲目「LIAR」でも、“人はそれを嘘と言う”“記号のように繰り返す”…。

NEKO:そう、マントラみたいにね。なんかリズム遊びみたいに、いつも同じことをしゃべる人(知的障がい者に)多いですよね。噓をついてる訳じゃなくて。LIARっていうのは嘘つきっていう意味ですけど、竪琴のライヤー(LEIERまたはLYRE)をひっかけた、ダブルミーニングの歌詞なんですよ。ライヤーって、シュタイナーの…人智学とか、オイリュトミーとか、あとは…。

MARU:医学もやるし、農業もやるし…。

NEKO:全部やるよねえ。そのシュタイナーっていう人の音楽で、ライヤーっていう、昔の竪琴を復元した楽器があるんですよ。

―竪琴。

(註:ルドルフ・シュタイナーは19世紀末から20世紀初頭にかけてドイツ、オーストリアで活動した神秘思想家・哲学者・教育者。人間の五感を超えた感覚を追及する「人智学」や、音や言語を体の動きで表現する「オイリュトミー」を提唱し、医学や教育など多方面で活躍した。ライヤーはスイスで考案された竪琴の一種で、シュタイナーが運営した学校で用いられるようになった)

NEKO:その音を聴くだけで、体の調子が整ったりとか…っていう説があって、それは本当かどうかわかんないんですけど(笑)、私の知り合いでライヤー弾いてる人がいるんです。『千と千尋の神隠し』の主題歌を弾いてた木村弓さんっていうミュージシャンの方がいて、その人がライヤーを弾いてて。昔からライヤーってきれいな音だなーと思って、ちょっと天上界の音って言うと変ですけど、何かちょっと不思議な音色なんですよ。それとひっかけてるんですよね、実は。

―この曲、コーラス、男声ヴォーカルが非常に印象的ですね。

NEKO:MARUちゃんの声のファンの人、いるんですよ。「MARUちゃんの声、大好き」っていう友達とか、います。

MARU:まあ頑張って、おじさんたちがやっているから(笑)。

NEKO:頑張ってるよね(笑)。

MARU:はい(笑)。

―続く「I’M NOT FALLEN ANGEL」も…特別扱いされる、特別な目で見られる人たち。

NEKO:そう。

MARU:うん。

―“本当はつながっている”っていうのも…。

NEKO:また出てきましたけど。よく、そういった子どものことを、なんか天使みたいに呼ぶ…あるじゃないですか。でも、本人は別にそうは思われたくないんじゃないか、みんなと一緒でって思われたいんじゃないかな。そういう特別扱いを望んでいるのと、違うのかな?…って思うことがあって、そういう歌詞に。あとね、東田直樹くんの影響も受けてるかも知れない。自閉症で発達障がいの方…で、作家なんですよ。東田直樹くんの話す言葉を聞いた時に衝撃を受けて。本とか詩集も買ったんですけど。もの凄いんですよ、彼の言葉って。絞り出すように一言一言しゃべる言葉が、もの凄く胸を打つんですよ。その、彼の影響も、受けてるなと思いますね。YouTubeあるんで、東田くん。私、ツイッターとかもフォローしてるんですけど。自閉症の人たちが何を考えているのかをある意味代弁しているような存在で…海外からも注目を集めている人なんですよ。

MARU:パフォーマンスやNEKOの表現方法っていうのも、その方から影響を受けた表現になってるんですか?(再びインタビュアー風の口調で)

NEKO:表現は全然違う。出来ない、彼みたいには。物真似とかをするつもりもないので、自分の中の叫びというか…。

MARU:想い?

NEKO:想いは影響受けてる感じがします、うん。あと、今回のアルバムで歌詞を作るために、本を読んだり映像を観たり、映画とかもけっこう観たんで、影響を受けてるところがあるかなと思います。

▼続きは下記、後編にて


インタビュー:大越よしはる(フリーライター/DJ)

90年代後半からライターとして活動し、DOLLやEURO-ROCK PRESS、FOLLOW-UPなど各種媒体で執筆。

近年は音楽以外にも幅広いジャンルのライティングを手掛けている。

D・O・Tともdiskunionとも付き合いは長い。

DJとしても2002年から20年以上活動中。

https://lsdblog.seesaa.net/


Release Information

BOKU NO TOMODACHI
D・O・T

2023.06.07 RELEASE
ANKH records


D・O・T / BOKU NO TOMODACHI (Official Music Video)


【D・O・T】

2009年、初期あぶらだこのリズム隊であるHIROSHIとMARUの2人により結成。その後2011年、世界初の女性ハードコア・パンクバンドとして80年代に活動したTHE NURSEのNEKOを新ヴォーカリストとして迎え、現在のメンバーで本格的に始動。

Twitter:https://twitter.com/DOT_official3

▼各界からのコメント前編

▼各界からのコメント後編

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