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fox capture plan 井上司 × bohemianvoodoo 山本拓矢 対談

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fox capture planのドラマーであり、近年はトラックメーカーとしても活躍する井上司が「Tsukasa Inoue」名義でのセカンドアルバム『Helix』を完成させた。多彩なゲストを迎え、ヒップホップ、R&B、ブレイクビーツなどを横断しつつ、前作よりも生演奏の割合が増した本作は、これまでに蓄積してきた音楽の幅広さと、バンドマンとしての地肩の強さが融合した、まさに井上ならではの作品だと言えるだろう。そこで今回は今年結成15周年を迎え、先日ニューアルバム『CROSSING』をリリースしたばかりのbohemianvoodooから山本拓矢を迎えての対談を実施。テックやライターとしても活動する山本と井上の対話は、「ドラマー対談」という枠組みを超え、それぞれの生き方を映し出すような内容となった。

インタビュー・テキスト : 金子厚武

―bohemianvoodooとfox capture planは盟友とも言うべき関係性だと思うのですが、ドラマーとしてはお互いのことをどのように見ているのでしょうか?

井上

音源もライブもそうですけど、拓ちゃんは音がめちゃくちゃ綺麗で、音色のこととかすごくロジカルにちゃんとわかってやってるんだろうなっていうのが伝わってくるというか……僕はそのあたり適当なので(笑)。何気ないツイートとかを見ても、いろんな音楽を聴いて、いろんなカルチャーを吸収して、それを言葉にしていて、アウトプットがすごく上手いタイプなんだろうなって。

ーそこはライターであり、YouTuberでもあるわけで(笑)。

山本

一応やってはいますけど(笑)。

井上

実際拓ちゃんの何かを見て機材を買ったこともありますしね。

ー逆に、拓矢さんから見た司さんの印象はいかがですか?

山本

生粋のバンドマンっていう軸がありつつも、フォックス周りでは劇伴とかもやってるから、プレイも幅広くて。なかなかそういう広げ方って難しいと思うんですけど、それをちゃんとやってきてるから、ホントにすごいなって。

井上

やらざるを得ない状況に(笑)。

山本

でもそれをちゃんと全部クリアしてるからすごいですよね。音色のこととかにしても、さっき「全部ロジカルにわかってる」って言ってくれて、実際わかってるかどうかは怪しいんですけど(笑)、ソロアルバムのドラムのピッチ感とかを聴くと、感覚で分かってるんだろうなって。

―拓矢さんはドラムテックのお仕事もされていますが、いつ頃からやられてるんですか?

山本

2016、2017年ぐらいかな。松下マサナオさんがテックで入るはずだった現場に代わりで入ったところから広がって行って。

―僕がよく会うバンドで言うと、yonawoの取材で拓矢さんの名前が出てきたことがあるんですけど、最近だと他にはどんなバンドに関わられてるんですか?

山本

そんなにたくさんやってるわけではないんですけど、フレンズとかネバヤンとか。元々のきっかけになったのがPAELLASとの繋がりで、もう解散しちゃったけど、メンバーみんないろんなことをやってる中で、そこに呼んでもらえてっていうのが大きいですね。

―なるほど。ネバヤンやyonawoはまさにそこの繋がりなんですね。

山本

そうですね。阿南さん(元never young beach/元PAELLASの阿南智史。現在はyonawoの作品にプロデュースやミックスで関わってもいる)との繋がりで。

ー昔から単純にプレイするだけではなく、機材とかにも興味があって、それが今に繋がってる感じなんですか?

山本

そうですね。ドラムを始めた段階で楽器そのものに興味があって、そこが下敷きにあります。中学校の吹奏楽部で打楽器を始めたのが一応演奏のスタートなんですけど、その頃からお小遣いを貯めてスネアを買って、それを分解して、いろいろ試したりしてたので。先生に聞いても楽器の仕組みまではわからない人が多かったので、困らせたりしながら(笑)。

井上

みんなから「博士」って呼ばれてるもんね(『ドラムマガジン』では「博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品」を連載中)。

山本

それを言い出したのもマサナオさんで。ドラムが好きでドラムを集めてる人は結構いると思うんですけど、ちゃんと演奏に使ってて、何がどうなってるのかまで理解してる人はそんなに多くはないのかもしれないです。同世代のテックの人とかだと、その辺りがちゃんと繋がってる人が多い印象ですけどね。

井上

誰に聞いてもわからない、パッとしない答えしか返ってこないようなときでも、拓ちゃんと軽く話した中に答えがあったりとか、書いてる記事に答えがあったりとかして。僕も一回試奏動画でテックをやってもらったことがあるんですけど、拓ちゃんが来るの知らなかったからびっくりした覚えがあります(笑)。

―ボへの新作『CROSSING』についてお伺いすると、ボヘらしい歌えるメロディーやフロント2人のプレイが前面に出つつ、2020年に発表した『Bouquet』の延長線上で新たなチャレンジも散りばめられていて、リズム隊の存在感も増しているなと感じました。

山本

アルバムでは毎回何かしら新鮮さを出せたらいいなっていうのがあって、曲の幅については、それがちゃんと出せたんじゃないかと思います。いわゆるボヘっぽい曲もやりつつ、『Bouquet』のときの方向性をさらに掘り下げて、またちょっと別のこともできたかなって。去年が『SCENES』のリリースから10周年で、『SCENES』の曲を全部やるライブをやったんです。『SCENES』は僕が入る前に出たアルバムなんですけど、あれをひさしぶりに聴き直して、覚え直す作業をしたことによって、徐々に変化していった音色と、昔はこうだったよなっていうのを再確認することができたんですよね。で、ちゃんと連続性があれば、「ここまで変えてみても大丈夫かな」っていうのが何となく見えたし、テックとかの仕事で広がった部分もあって、曲に対するアプローチの変化が出たのかなと思います。

―ただ新しくするんじゃなくて、ちゃんと過去も振り返って、その延長線で新しいものにすることを意識したと。

山本

そうですね。先行配信してる「華火夜景」って曲があって、ボへ的にはかなり今までにない感じの曲になってると思うんですけど、もともと最初のアレンジが上がってきた段階でいい感じのドラムパターンにはなってたんです。ただアレンジを詰めて行く段階で、アルバムにフィットさせるとか、ボへの文脈でこの曲をやる上で、ドラムで何か面白い仕掛けができないかなと思ったときに、『SCENES』に入ってる「F.O.G」のドラムパターンを使ってみました。音色は全然違って、昔のは鳴ってる帯域というか成分がもうちょっとオーガニックな感じなんですけど、実はフレーズ的には同じようなことをやってるんです。

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