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矢崎恵理 2nd アルバム『Home』インタビュー

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2022 年の 1st アルバム『it』リリース後、ライブ活動を通じて表現の幅を広げてきたジャズシンガー矢崎恵理。満を持して登場する 2nd アルバム『Home』は、等々力ジャズレコーズ レーベル設立者であるトランペット奏者 島裕介をプロデューサーに迎え、自身と聴き手の双方にとっての「居場所」を目指した作品。本インタビューでは、制作の背景から、表現者としての思いまで、その創作の核心に迫る。

インタビュー●大伴公一

矢崎恵理 – Home
2026.03.25 RELEASE

——2022年に1stアルバム『it』をリリース。その後ライヴハウスにも多く出演するようになり、ジャズフェスやNHKの公開放送など、大きな舞台も多く経験されました。

矢崎恵理

本当に想像していた以上の経験をさせていただくことができました! ツアーで全国を回ったことで新しい出会いもたくさんあり、さまざまなミュージシャンと共演する中で自分は今後どうしていきたいのかを改めて考えるきっかけにもなりました。

——その答えは出ましたか?

矢崎恵理

いまも考えながらいろいろトライしているところです。でも、もっとオリジナルな世界観を広げていきたいとは常々考えています。

——ご自身のルーツとなった音楽も幅広いようですが、幼少からどのような音楽と接していたのですか?

矢崎恵理

中学の頃から下北沢のライヴハウスなどに行くような子どもでしたから、Jポップもロックも好きだったし、両親の影響でビートルズやビリー・ジョエル、スティーヴィー・ワンダーなども聴いていました。いまでもたくさんの音楽を聴きますが、あまりジャンルで分けて考えていないかもしれません。それよりも演奏者の表現がストレートに伝わってくるような音楽にグッとくるんです。自分自身の音楽性も「ジャズ」「ポップス」と明確に限定してしまうのではなく、どちらも「矢崎恵理の音楽」として聴いていただけるようになりたいと思っています。

——一方で、今回リリースされる2nd『Home』は、カバー曲が中心のラインナップとなりました。

矢崎恵理

そうなんです。前作がオリジナル中心だったので、今回は自分のルーツ・ミュージックをひとつ形にしたくて。2024年の2月に7インチのEP*制作のためにレコーディングをしたのですが、その頃からすこしずつ2ndアルバムの構想を練っていきました。前作から引き続きプロデュースをしていただいた島(裕介/tp)さんにも相談しながら、1stアルバムとはまた毛色の違う作品にしたいと話していたのですが、結果として幅広い楽曲をラインナップすることができました。

——7インチEPの反響はいかがでした?

矢崎恵理

リスナーはもちろん、ジャズや昭和歌謡を得意にしているDJの方が私の作品をかけたいと言ってくださることが多くて。思った以上に問い合わせがあって驚きました。

——「北酒場」がSpotifyの公式プレイリストに載ったことも影響が大きかったのでしょうか。

矢崎恵理

それもありますし、ショップで手に取って口コミで広まっていった部分も大きかったんです。実際に購入してくださったDJの方から、イベントに呼んでいただいたこともあり、作品が私の手を離れてひとり歩きしていく不思議な感覚を味わいました。

——ニュー・アルバムにはどのような思いを込めましたか?

矢崎恵理

今回は「Home」というタイトル通り、私を形作ったルーツ・ミュージックを多くラインナップしたカバー・アルバムに仕上がりました。聴いてくださる皆さんが、家でリラックスできるような作品にしたいという思いもあったので、演じる側と、聴く側にとって「ホーム」という言葉がダブル・ミーニングになっています。

——前回の編成に加え、曲によってピアノとドラムが加わっています。

矢崎恵理

前作がギターをメインに据えたアコースティックなサウンドだったので、もうすこしヴァラエティに富んだ編成で録ってみたかったんです。バンド編成だけではなくピアノとのデュオもあるし、ギターとのデュオもある。おかげで彩り豊かな作品ができあがりました。

——作品を聴くと、前作にも増して矢崎さん自身が楽しく歌っている印象を受けました。

矢崎恵理

確かにそうかもしれません。前作をきっかけに、様々なミュージシャンと出会い、数多くのライヴを経験したことで、よりその瞬間に合ったパフォーマンスに意識を向けて歌うことができるようになった気がします。また、ライヴを重ねたことでメンバーとの相性が深まり、レコーディングでも緊張せず楽しく臨むことができました。

——今作ではスタンダードやカバー曲を多く扱っていますが、アレンジはどのようにディレクションされたんですか?

矢崎恵理

中村さんがアレンジのベースを考えてくださった楽曲が多く、ホーン・セクションのアレンジは島さんにアイディアをいただきました。それから、「Smile」「Everybody Wants To Be A Cat」「Easy Living」はピアニストとして参加してくれた浅川(太平/p)さんにアレンジをお任せしています。雰囲気がすこし違いますよね? また、スティーヴィー・ワンダーの「I Wish」は、斉藤(良/ds)さんのアイディアを多く取り入れています。

島裕介 (tp,flug,fl)
浅川太平 (p)
斉藤良 (ds)

——バンド全体で作り上げた一枚になったのですね。

矢崎恵理

そうですね。1stからのチームワークが結実したともいえるでしょう。

——2026年2月に先行配信された「Everybody Wants To Be A Cat」は、ディズニー映画『おしゃれキャット』の劇中歌ですね。

矢崎恵理

日本ではあまり馴染みのない曲かもしれませんが、海外のジャズ・シンガーでカバーしている方は多くいるんですよ。

——マイナー・キーのミュージカル風なナンバーですが、アルバムの中でも良いアクセントになっていました。

矢崎恵理

ありがとうございます。浅川さんと共演することが決まり、どんな曲をお願いしようかと考えた時に、彼がスイーツと猫が好きということを思い出して。それで「Everybody Wants To Be A Cat」を提案したら、浅川さんもとても気に入ってくださったんです。上がってきた譜面には「猫への気持ちを熱く表現してください」という指示が書かれていました(笑)。

——もうひとりのピアニスト、小沢咲希さんはどのような存在ですか?

矢崎恵理

現在、シーンで大活躍中のピアニスト。私たちは同世代で、飲み仲間で……そういえば昨日も一緒に演奏していました(笑)。とにかく仲が良いので、レコーディングでも会話をするようにリラックスして演奏することができるんです。

小沢咲希 (p)

——本作では、矢崎さんのスキャットにも磨きがかかっているように聴いて取れました。

矢崎恵理

ありがとうございます。ライヴやCDで私の歌を聴いてくださった方から「スキャットってどうやるんですか?」と質問されることも多いんです。そういう時に改めて、自分はどうやってやっているんだろう……と考え、自分で調べながら研究を重ねてきました。そんな状態なので、上達したと言っていただけてほっとしています(笑)

——前作にも収録された「ボヘミア遊休声歌」の新バージョンと、ライヴではお馴染みの「リブラ」、矢崎さんのオリジナルが2曲収録されています。

矢崎恵理

「ボヘミア遊休声歌」は7インチでシングルカットもしましたし、いまでは私のテーマ・ソング的な位置付けになっています。確かに、2作続けて同じ曲を入れるのって珍しいことかもしれませんね(笑)。でも、前作がボサ・ノヴァっぽいアレンジだったのに対し、今回はドラムが入ったバンド・アレンジになっています。それぞれ異なる雰囲気を楽しんでいただけたら嬉しいです。そして「リブラ」は、天秤座のこと。私が10月生まれの天秤座で、バースデイ・ライヴに合うような曲を作りたいと思い手掛けました。ふとした瞬間に「あの時の自分が、いまも自分の中にいる」と感じることがあって、昔の自分と今の自分がクロスオーバーする気持ちを描きました。

——普段から作曲はどのように?

矢崎恵理

「さあやるぞ」と机に向かってもなかなか出てこないタイプなので、日頃から生まれたメロディの断片を繋ぎ合わせて曲にすることが多いかな。鼻歌を録音しておいて、すこしずつイメージを膨らませながらメロディにして。そのイメージから歌詞を作って、あとはバンド・メンバーと一緒に演奏しながらアレンジしていきます。

——武蔵野美術大学の油絵学科を卒業されていますが、絵を描くことが作曲や歌唱に生きていると感じたことはありますか?

矢崎恵理

絵画におけるモチーフの捉え方は先ほど言った鼻歌での作曲にも通じるし、最終的にどのような作品に仕上げていこうかと考えている時と、楽曲のアレンジを考えているときなど、どちらも同じような頭の使い方をしていると思うんです。作曲も描画も「表現」することに変わりありませんからね。ずっと油絵を描いてきたのですが、最近ではチョークアートを手がけることもあり、油絵とは異なるアプローチでデザインしていく過程がとても面白いんです。こんな経験も、これからの歌や作曲に生きてくるんじゃないかと思っています。

——表現者でありヴォーカリストである矢崎さんは、レコーディングやライヴの際に楽曲表現と自己表現のどちらに重きを置いていますか?

矢崎恵理

どちらかといえば私は自己表現に重点を置いているかな。自分がこの曲を選んで、歌うということにしっかりとした意味を持たせるためにも、その比重は大切にしているつもりです。もちろん、歌っている時に頭の中で順序立てて考えているわけではなく、振り返ってみてそうであることに気づくのですけど。

——今回、自身のルーツを探ってみて、“矢崎恵理”というキャラクターについての気づきはありましたか?

矢崎恵理

肩肘張らない感じが自分の持ち味なのかな、って思いました。日常を描いた歌詞も、普段の自分をありのままに表わす歌唱も、そのナチュラルさが自分の良さなのかな、って。だから、レコーディングの時もうまく歌おうとし過ぎないことを意識しました。それから、ジョージ・シアリング(p)とドン・トンプソン(b)がデュオで録音した『George Shearing “At Home”』というアルバムがあって、私はあのアルバムが大好き! 暖炉の前で座っているジャケットも印象的で、ああいうくつろぎを『Home』でも感じてほしいと思いながら制作しました。完成した作品を改めて聴いてみて一人の時間でも、たいせつな人と一緒でも、ゆったりとした気持ちで聴いていただける作品になったのではないかと思います。誰かの日常に、そっと寄り添えるような一枚になれば嬉しいです。


RELEASE

矢崎恵理 – Home
2026.03.25 RELEASE

LIVE EVENT

矢崎恵理2ndアルバム”Home”リリース記念ライブ

4月10日(金)谷津エルコラソン
17時オープン
1st 19時〜 2nd 20時30分〜
3500円
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt)

4月17日(金)甲府 櫻座
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt) 須藤ヒサシ(b)
時間:open 18:30 start 19:00
MC:¥3,500(予約)¥4,000(当日)

4月18日(土)長野県原村 StudioR
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt)
時間:open 14:30 start 15:00
MC:¥3,000(予約)¥3,500(当日)

4月19日(日)長野県伊那 蔵ZEN
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt)
時間:open 13:30 start 14:00
MC:Tip(¥1000〜)+1order

4月25日(土)御殿場 cafe156
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt)
チャージ3500円 17:00オープン 18:00スタート

5月24日(日)六本木アルフィー
矢崎恵理(vo) 浅川太平(p) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt) 田代たかし(b)

6月4日(木) 名古屋ラブリー 
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt) 平光広太郎(p)
チャージ3,500円
開場18時、1stステージ19:30、2ndステージ21:00

6月5日(金) 福山ポレポレ
予約3500円(当日4000円)
open 19:00 Start 19:30
Opening act: 島裕介&ベティ(p) DUO
Main act: 矢崎恵理(vo) 中村かずひと(gt) 島裕介(tp,flug,fl) ベティ(p)

6月6日(土)和歌山ルルホール
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt)
予約4000円(当日4500円)
open 18:00 Start 18:30

6月7日(日) 大阪梅田ジャズオントップ 
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt) 生田さち子(p)
予約4000円(当日4500円)
Open. 18:30
1st. 19:30~20:30
2nd. 21:00~22:00

6月8日(月) 浜松ハーミットドルフィン
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 中村かずひと(gt)
予約4000円(当日4500円)
open18:30 start19:30

6月28日(日)佐世保 サセボノオト
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 浮城久美子(p)
予約4000円(当日4500円)
open 18:30 Start 19:00

6月29日(月)博多ニューコンボ
矢崎恵理(vo) 島裕介(tp,flug,fl) 浮城久美子(p)アックス小野(b)
予約4000円(当日4500円)
open18:30 start19:30


その他 ご詳細は 矢崎恵理 公式HP にて

【プロフィール】

矢崎恵理

東京都下北沢出身のJazzシンガー。
中学時代、エラ・フィッツジェラルドのCDを手に取ったことをきっかけにJazzの世界に出会う。

武蔵野美術大学油絵学科にてアートを学びながら、ジャズ研やジャズバーにてJazzヴォーカルを学ぶ。

2020年Jazzドラマー橋詰大智率いるプロジェクトJAZZLETTERにて同年代の若手ミュージシャンと共にJazzを若い世代に届ける活動を開始、「All Because of You」「February」をデジタルリリース。

2022年、Jazzボーカルプロデュースを多数手がけてきた島裕介プロデュースで1stアルバム「it」をリリース。
オリジナルの日本語詞の楽曲や、「北酒場」のボサノバカバーがSpotify公式プレイリストインし話題となる。
収録曲「まるくなって」が阿武の鶴酒造の日本酒「三女好」のWEBコマーシャルに起用される。

2024年7inch EP「ボヘミア遊休声歌/北酒場」をリリース。

2023年と2024年に渋谷セルリアンタワー内JZ bratにて開催したバースデーライブは満席で成功を収める。
2023年、2024年旭ジャズまつり出演。
2024年、NHK横浜放送局「はまキラ!ジャズライブ」全国生放送ライブ出演。 
東京都内ジャズクラブ、銀座swing、六本木アルフィー、代々木ナルなど出演。

中村宗仁とのデュオユニット「なずどらびー」では、スタンダードだけでなく童謡や日本の名曲のJazzアレンジに取り組む。子ども向け施設や介護老人福祉施設・病院等の施設での演奏活動も積極的に行なっている。

現在はJazzクラブでのライブ活動・オリジナル楽曲の制作、アート制作の活動も精力的に行なっている。
2022年3月グループ展「tenki」光鱗亭ギャラリー(神楽坂)
2025年10月個展「TOWA」ギャラリーうみねこ(祐天寺)
2025年2月グループ展「LOVE LOVE LOVE」gallery PARADISO(代々木上原)

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