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ノイズが私たちを別の空間、時間、次元に連れて行ってくれる —Gustavo Infante 『Pássaros』インタビュー

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ボサノヴァやMPBのみならず、近年ではジャズにおいても注目を集める音楽家も多い、音楽大国ブラジル。しかし、このミナス・ジェライス州出身の音楽家、グスタヴォ・インファンチの音楽はブラジル音楽の伝統に根ざしながらも、そのどれとも異なっている。サム・ゲンデルらを擁するLAシーンで活動するブラジル人ギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメントの音楽性をさらに先鋭化させたともいえる、靄がかった深いエコーによる空間的なサウンドに、フィンガーピッキングでつま弾かれる超絶技巧のギター、そして歌。ジョン・フェイヒィ~ジム・オルークの系譜にあるギターミュージックのエクスペリメンタル・サイドとミルトン・ナシメントやロー・ボルジェスといったクルビ・ダ・エスキーナのソングライティングが融合したともいえる音楽性だ。グスタヴォは2019年に1stアルバム『SER』を発表。2021年に発表した本作『Pássaros』においては、前作に引き続きカセットやアナログ・テープを録音に使用し、さらにディレイやリバーブなどのプロセスを経由することで時空間を歪曲させるかのような磁場を発生させ、しかしながら伝統に根差したソングライティングにより超自然的な音世界を生み出すことに成功している。『Pássaros』の世界初となるCD化を祝し、CDのライナーノーツのためのインタビューを公開する。今もっともブラジルで先鋭的な音楽家と言って過言ではない彼の音楽を理解する助けとなれば幸いだ。

INTERVIEW:原 雅明 (Masaaki Hara)

TEXT:宮本剛志 (Takeshi Miyamoto)

Gustavo Infante『Pássaros』
グスタヴォ・インファンチ『パッサロス』

Think! Records
THCD-616
2022年9月21日発売
CD
ライナーノーツ: 原 雅明


―― まず、あなたの音楽的なバックグラウンドから教えてください。どのようにしてギターを演奏するようになったのでしょうか?

グスタヴォ・インファンチ(*以下省略) 子供の頃、メタルバンドをやっていた兄が家で弾いていたナイロンギターのコードやメロディーを真似してギターを始めました。それから近所の先生に短期間習いましたね。私はナイロンギターには昔からとても強い繋がりがあり、その音色に魅了されたんです。思春期になると、大学でコースを取るという不可避の選択肢があり、そこではポピュラー音楽コースを選びました。試験に合格するために、先生のもとで真剣に勉強しましたよ。UNICAMPという大学のポピュラーミュージック・コースを受講し、その後、同じ大学で音楽の修士課程に進みました。

―― At first, please tell me about your musical background. How did you come to play guitar?

Gustavo Infante I started as a child imitating chords and melodies on the nylon guitar that I saw my brother doing at home, he played in a metal band. Then I continued learning for a short time with a first teacher in my neighborhood. I’ve always had a very strong connection with the nylon guitar, I was mesmerized when I heard it. When I reached adolescence, there was pressure to take a course in college, so I chose the popular music course. In order to pass the tests, I studied seriously with a teacher. I took the Popular Music course at UNICAMP (name of the university) and then did a Masters in Music at the same university.

―― 師事した人はいますか? あるいは音楽を学ぶにあたって、直接的な影響を受けた人はいますか?

私にはメンターがいません。しかし、幸運にも私の1stアルバム『SER』の音楽監督にセルジオ・マシャード(Plim)を迎えることができました。この出会いは、私に多くの音楽的関心をもたらし、それは私の作品に響き続けています。

私の学びにおいて直接的な影響は、音楽的な混沌から始まります。なぜなら、ロック、グランジ、ブラジル音楽、ギターによるクラシック音楽、現代音楽、ドリヴァル・カイミ(私の修士論文のテーマ)、ココ(筆者注・ブラジル北東部で演奏されるアフリカ由来のリズム)などのブラジルの伝統音楽らを通じ、そこから何かを聴いて吸収した様々なバックグラウンドを持つ異なった宇宙があるからです。

―― Do you have a mentor? Or who were your direct influences in your musical studies?

I don’t have a mentor. But I was lucky to have Sergio Machado (Plim) as the musical director of my first album SER, this meeting brought me many musical concerns that continue to echo in my work.

My direct influences in my studies start from a musical chaos, because there are many different universes that I was listening to and absorbing something. Through rock, grunge, Brazilian music, concert music for guitar, contemporary music, Dorival Caymmi (theme for my master’s), traditional Brazilian music such as coco.

―― ドリヴァル・カイミが修士論文のテーマとのことですが、彼の音楽から学んだことを教えてください。また、『Pássaros』では、どういった点を参考にしたのでしょうか?

修士課程では、1959年のアルバム『Caymmi e seu Violão』を全曲、楽譜に書き写しました。カイミのギターの独創性、伴奏の右手で使ったいくつかの方法について多くを学びました。また、声とギターという形式の録音における彼のパイオニア精神についても学びました。『Pássaros』で私がカイミを参考にしたのは、彼が求めたようなギターでのユニークなサウンドの追求だったと思います。また、カイミのギターが持っていたイメージ的な側面もあります。彼の指使いに映像的な軌跡を探したのです。

―― You mentioned that Dorival Caymmi was the subject of your master’s thesis, what did you learn from his music? Also, what were your references in “Pássaros”?

In the master’s degree I transcribed the album “Caymmi e seu Violão” from 1959 in full, in sheet music. I learned a lot about the originality of Caymmi’s guitar, some resources he used in the right hand of the accompaniment. I also learned about his pioneering spirit in recording voice and guitar formats. I think my reference to Caymmi in “Pássaros” was the search for a unique sound on the guitar, as Caymmi sought. Also the imagery aspect that had in the guitar of Caymmi, I looked for a cinematic trace in the conduction of the fingerings.

―― 音楽家として活動していくことになった転機や出来事を教えてください。

『Clube da Esquina』(筆者注・ミルトン・ナシメントとロー・ボルジェスの連名による1972年作)のアルバムを初めて再生したとき、ループで始まるトラックを聴いたのを覚えています。また、子供の頃、ギターの弦の上に無造作に指を置き、その音を楽しみながらコードを「発明」したことも覚えています。この2つの出来事は、私の音楽との出会いに大きな意味を持つものだったと思います。

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