山崎想太(ピアノ)、杉村謙心(ギター)、近藤凛太朗(ドラム)によるインストバンド、Liquid Stellaが約2年ぶりとなるセカンド・アルバム『BRILLIANCE』をPlaywrightから発表した。「ネオフュージョン」を打ち出したファースト『AUTHENTIC』のリリース後、3人それぞれが作家やサポートなど多方面で活躍し、その経験をバンドに還元させた『BRILLIANCE』は、前作同様にフュージョン、クラブジャズ、ラテンなどをクロスオーバーさせたサウンドでLiquid Stellaとしてのカラーを強めつつ、初のボーカル曲にもチャレンジするなど、よりアウトプットの幅を広げてみせた充実作。fox capture plan的な多彩な音楽性と、bohemianvoodoo的なピアノとギターの絡みで聴かせる美メロ、その両方を併せ持ちながら、それを2020年代の感覚で見事に鳴らしている。10月から始まる東名阪でのリリースライブを控え、山崎と近藤にバンドのこれまでについて語ってもらった。(前編)
インタビュー・テキスト : 金子厚武
ーバンド結成の経緯から教えてください。

まず僕と今日はいないギターの謙心が高校の同級生で。彼は軽音楽部に入っていて、僕は部活動何もやってなかったんですけど、鍵盤を弾ける人があまりいないから、同じクラスの子がバンドに誘ってくれて、そのバンドに謙心がいて。そこから3年間いろいろやって、謙心は昭和音大に進学したんですけど、そこで凛太朗と会ったんだよね。

そうですね。入学したときからギタリストの中でも目立ってて、「バンド組めたらいいよね」みたいな話を軽くしてたら、「いい曲作るやつがいる」って、想太の話をされて、音源を聴いたらめっちゃよくて。それがファーストアルバム『AUTHENTIC』に入ってる「nomadic」。そこから「1回スタジオ入ろうぜ」ってなったのがバンドを組むきっかけですね。
―それぞれの音楽的なルーツについて教えてください。

僕は母親の影響でクラブジャズ、クラブミュージックをずっと聴いてました。ハウスも好きだし、SOIL &“PIMP”SESSIONSさんとか、quasimodeさんとか、あのころのクラブジャズを聴いて育ちましたね。
―親の影響もあって、楽器も自然とやるようになった?

もともとエレクトーン出身で、母親がエレクトーンの先生だったんですけど、それよりも幼稚園の友達がやってたことが大きくて。幼稚園にエレクトーン教室が併設されてて、幼稚園が終わったら、そこに通う人はそっちでレッスンを受けて帰る、みたいな感じで、友達がやってたから僕だけ帰るのが嫌で、それで始めました(笑)。
―作曲はいつから?

16〜17歳ぐらいですかね。エレクトーン自体は5歳から始めたんですけど、全然練習してなくて。謙心は昔から本当にギターがやりたくて、空いてる時間ずっと弾いてた、みたいなことを言ってたんですけど、僕は友達と一緒にいたかっただけで、全然練習してこなかったんです。でも今の師匠でもあるエレクトーンプレイヤーの尾野カオルさんの曲に出会って、こういう曲を弾けるようになりたいと思って、そこから一生懸命やるようになって、曲も作るようになりました。エレクトーンのコンクールに挑戦したりしてましたね。
―近藤くんのルーツは?

僕はジャンルで言うとファンクとかソウルが好きで、ギャップ・バンド、スレイブ、オハイオ・プレイヤーズ、チャカ・カーン、JBとかが好きですね。実家が名古屋で音楽教室とか楽器店をやってまして、ちっちゃい頃から音楽に囲まれてはいて、地元のおじさんたちがファンクバンドをやってたので、それをよく見に行ってたのが大きいと思います。あと高校の頃にT-SQUAREにハマった時期があって、謙心もT-SQAUREっ子なんですよね。そういう面で謙心とは話が合って、Liquid Stellaにも繋がってるかなって。
―杉村くんのルーツはフュージョン?

入りはシンガーソングライターのYUIさんだったらしくて、そこから布袋さん、BOØWYに行って、中学生に上がったときにT-SQUARE、みたいな感じらしいです。

あとメタルっ子だったので、メタルもやるし、幅広いよね。基本ジャズ以外はやる、みたいな感じですね。

スタンダードジャズ以外は全部やりますね。
でもフュージョンとかクラブジャズとか、インストの音楽は通ってきたので、よく言えばクロスオーバー。がっつりジャズみたいなのも聴くのは全員好きなんですけど、実際に演奏することはあまりないかもしれないですね。
―Playwrightは「ジャズ」のイメージではあるけど、オーセンティックなジャズというよりクロスオーバーが基本ですもんね。Playwrightからリリースすることになったのは、山崎くんから主宰の谷口さんにアプローチをして実現したんですよね

そうですね。Playwrightか、JABBERLOOPさんとかがいる巡音彩祭か、いつかどっちかに入れたらいいな、と思ってました。
―JABBERLOOPのMAKOTOさんと山崎くんのお母さんが昔からの知り合いとか。

同郷なんです。宮崎の高千穂っていう、山奥の町の出身で。

MAKOTOさんは僕も高校のころにつながってて。実はLiquid Stellaを組む前に、SYNCHRONICITYっていうフェスがあって、僕が大学上京したての頃にJABBERLOOPさんの手伝いに行ったんですけど、そのときに想太も手伝いで呼んでたみたいで。同世代だから会わせてあげたいと思ってたらしく、結局そのときは会えなかったんですけど、その後に違うところで会って、「なんでお前ら会ってんの?」って(笑)。
―ファーストアルバムを出したときの関係者コメントで、MELTENさんが「僕のやってるJABBERLOOPは、山崎想太とは彼が幼少期からの、近藤凛太朗とは彼が中学生時代からの友人」と書いているのを見ました。

僕は中学校の頃から地元の名古屋で吹奏楽団をやってて、そこで「シロクマ」をやったことがあって。僕の父がイベンターもやってて、毎年「楽器を楽しむ日」ってイベントをやってるんですけど、それにJABBERLOOPさんが出て、一緒にコラボさせてもらったりしてたんです。
―別々にJABBERLOOPとつながってた2人が、結果的には全然違うところで、杉村くんを通じてつながったと。

縁ですよね。つながるべくしてつながった感じもあって、嬉しかったです。
―ファーストアルバムの『AUTHENTIC』リリース時には「ネオフュージョン」というキャッチコピーを打ち出していましたが、バンドの方向性はどのように考えましたか?

「ネオフュージョン」に関しては、谷口さんに「キャッチコピーを考えろ」って言われて、ひねり出しました(笑)。フォックスさんの「現代版ジャズロック」、TRI4THさんの「踊れるジャズバンド」みたいな、「一言で伝わるように考えろ」って言われて、じゃあ「ネオフュージョン」かなって。謙心がT-SQUAREさんのサポートを一時期やってたこともあって、フュージョンが好きな方からも認知してもらえるようになったこともあったので。僕自身は実はそんなにがっつりフュージョンは通ってないんですけど。
―ずっと聴いてたのはクラブジャズで、もちろんLiquid Stellaにもその要素はあるけど、がっつりクラブジャズでもないですよね。山崎くん的には作曲する上で方向性はどう考えていましたか?

最近になってようやく自分たちらしさみたいなものが見えてきたかなと思ってるんですけど、僕はずっとクラブジャズやインストを聴いてきて、もともとあんまりポップスは通ってなくて。でも大学に上がるぐらいのタイミングで、サブスクでいろいろ聴ける時代になったので、最初は竹内アンナさん、Suchmosとか、いわゆるシティポップだったり、歌ものをようやく聴き始めて、その要素も自分の中に入れるようになって。だからLiquid Stellaの曲って、いわゆるジャズのテーマAがあって、Bがあって、アドリブで回して、最後Aで終わる、みたいな形式じゃなくて。Aメロがあって、Bメロがあって、サビがあってっていう形式が多いのは、そういうところにつながってますね。
―ポップスを意識した上で、それをインストで表現している。

でも考えてみれば、それこそ(T-SQUAREの)「TAKARAJIMA」もAメロがあって、Bメロがあって、サビがあるし、そういうところでいうと、フュージョンにつながってくる部分もあるのかなって。
―近藤くんとしては、Liquid Stellaの音楽性の軸をどう感じていますか?

想太と謙心の、上もの2人のサウンド感がリキッドらしさなのかなって。想太の作るメロディーはすごいキャッチーで、そこに謙心はフュージョンチックな音色とか、ロックな音でかき鳴らしてくれるし、想太はバッキングだったり、メロウなフレーズで弾いてくれて、そこが組み合わさってるのがリキッドのサウンドかなと思ってて。あとはいつも想太がデモを作ってくれるんですけど、リズムの癖がだんだんわかってきて、思ったよりラテンチックなのもあるなと思ってて。ファーストは結構勢いでやった感じなんですけど、セカンドはそれぞれいろいろ活動して、それぞれの音が出てくる中で、上の2人が歌ってる中でのリズム隊のサウンド感だったりが、自分の中で言語化されてきた感じがあります。
―DTMでデモを作って、メンバーに渡しているそうですが、それを忠実に再現するんですか?それとも、デモはあくまでデモで、そこからメンバーが自由に変えていく?

ほぼ完成形が来るので、8割ぐらいはデモのままですね。余白もちょっとあるので、最後は僕らなりの音で出す感じなんですけど、基本的にはデモで完成してます。
―山崎くんはいつからDTMで曲を作っているのでしょうか?

コロナ禍になってからですね。コロナ禍になって、時間がいっぱいできたし、せっかくの機会だからやってみようと思って。デモは全然ラフなものなんですけど、構成とかが変わることはほぼないです。2人もそれぞれの活動で忙しくて、リハーサルにガッツリ入ることが難しいので、プリプロ[※]1回やったらすぐレコーディングできるぐらいのものを持っていくようにしてますね。
※本格的なレコーディングの前に、曲の構成やアレンジを確認・調整する準備作業
―作曲者として、もしくはプレイヤーとして、憧れの存在はいますか?

BLU-SWINGの(中村)祐介さんはめちゃめちゃ尊敬してます。祐介さんは打ち込み系も超一流だし、BLU-SWINGみたいに生でやるってなったときも、すごくいい曲を作られるし、すごく尊敬してます。
―近藤くんはどうですか?

国内で言ったら、伊吹文裕さん。今ローディーのお手伝いをしてるんですけど、伊吹さんのプレイはフレーズ的にも影響されてるなと思います。最近はそれこそラテン系が好きで、インコグニートとか、この間フジロックに来たカトパコ(カトリエル&パコ・アモロソ)にどハマりしてて。あとコリー・ウォンはヴルフペックも好きなんですけど、コリー・ウォンのバンドのドラマーのピーター・ジャンジックを最近コピーしてますね。
後編へ続く
RELEASE

BRILLIANCE
Liquid Stella
2025.08.06 RELEASE
Playwright

AUTHENTIC
Liquid Stella
2023.04.12 RELEASE
Playwright
LIVE

PROFILE

2019年結成、ジャンルを越えて進化を続ける次世代インストゥルメンタルバンド。
ジャズをルーツに、洗練されたアンサンブルと耳に残るキャッチーなメロディで唯一無二の世界観を築き、リスナーの心を瞬時に掴む。ライブハウスからサブスクのチャートまで、世代やジャンルの壁を越えて注目を集め続けている。
2023年に1stアルバム『AUTHENTIC』をリリース。総再生回数は100万回を突破し、Spotify公式プレイリスト「Jazz Fusion Japan」のカバーを飾った。
2024年よりビーチライフスタイル・マガジン『SALT…』とのコラボレーションCD 「SALT… meets ISLAND CAFE –Sea of Love -」シリーズに参加。
そして2025年2月、結成5周年を記念してBLUES ALLEY JAPANで開催したワンマンライブは満員御礼・大盛況で幕を閉じた。8月、待望の2ndアルバム『BRILLIANCE』をリリース。10月からは初の東名阪ツアーを行う。
【ソーシャル】
HP:https://liquidstella.ryzm.jp/
X:https://x.com/LiquidStella(@LiquidStella)
Instagram:https://www.instagram.com/liquidstella_official/ (@liquidstella_official)
