2026年にシンガーソングライターとしてCDデビュー10周年の節目を迎える岡山健二の、新連載シリーズ。
2025年7月上旬より不定期更新。
編集:清水千聖 (OTOTSU編集部)
前書き
小説を書きたいというよりは、文章で何かを表現したい。それも自分のことからは少し離れたところで何かを書いてみたいと思い、ポツポツと書き始めたのは、2024年の秋頃だった。
ノウハウも何もないし、それらをどうするかということも、とくに決めていなかったのだけど、何かを書くということは続けたほうがいいなと、漠然と思ってはいたのだった。
たしか最初の作品は二ヶ月くらいでひとまず書き終えたのだけど、四百字詰めの原稿用紙十五、六枚くらいのその文章は、それまでに自分が作ってきた様々な創作物の中でも、奇異な印象を受けるものだった。
慣れ親しんだドラム演奏であったり、自作曲からなる歌やギターの録音、イラストや詩作、今までの活動を辿った文章、blogなど、いろいろあったが、紙に書かれた全く架空の出来事の集合体ともいえるその作品が、机の上に置かれているという事実が、何かとても妙なものに思えた。
こんなものを作ってしまって、自分はどうするつもりなのだろう。
ただ、いろんな流れがあり、自分がその時に文章を書くといった形で何かを作ろうと思い、それに乗っ取って物事を進めた結果、その作品が生まれたということだったので、これはこれでいいのだろうと思うことにしたのだった。
「38年分のPULP」というタイトルを思いついたのは、おそらく年が明けてからのように思う。
PULP(パルプ)については、以前も書いたことがあるので引用すると。
安出来の読み物のことをパルプ小説というらしく、何でも、集めて溶かして再生紙の原料にでもするしかないというので、そう呼ばれているみたいなのだけど。
一説によれば、とある外国のことを知りたいとして、そういう時は、その国の一流のものではなく、二流の作品を読めば、その国のことがよくわかるという話があるみたいで。
(※ミュージック・ヒストリー -今までとこれから- 第十二回目より抜粋)
といった感じである。
自分はいつしかミュージシャンと呼ばれるようになり、曲がりなりにも、それで生計を立ててきたのであるが、やはり文章を書くということは音楽とは全然違い、あまり立ち入れない領域のようにずっと思ってきた。
作詞から始まった言葉での創作が、徐々に変質していき、こうして音のない言葉だけの創作物という形にまでなったけれど、何となく、これでよかったのだろうか、という感じはある。
でも、何冊か作品を読んだことのある作家が、作中で「またこうして駄作を作ってしまった」といったことを書いており、もちろん、自分とその作家ではレベルが全然違うということは知っているのだけど、何となく、何かを書くということについての一つのヒントのように思えたし、よし、それなら俺も駄作を書き続けようとも思えた。
改めて自分の書いたものを見返すと、文章というよりかは、長い詩のようだなと思う。
昔、自分の書いた曲に対して「止まっている」「絵のようだ」「もっと情景や出来事を動かさないといけない」と指摘され、それらを改善しようと真剣に取り組んでみたことがあったのだけど、途中で、べつにそれでいいじゃないかと開き直って、そこからは、とくに何も変えずに曲を書き続けたのだけど、何だか、その時のことを思い出した感じだった。
自分の本分はミュージシャンにあるのだろうなとも思っているし、こうして、紙やパソコンに向かっているより、ドラムの練習でもしているほうが本当はいいのだろうけど、何かに追い立てられるように、書かないと、と思う自分がいる。
本屋に山積みされていたり、賞をとるような、いわゆる売れ線の本は元々読まないのだけど、どうも何かを書くということは、そういったものを目指さなければいけないのかな、といった先入観のようなものがあった。
ただ、いろいろと本を読むうちに、そうと一概には言えないというか、音楽と同じように、全然世に知られていなくても、すばらしいなと思える作品は沢山あり、必ずしも、先に述べた、大売れするようなものを目指さなければいけない、ということはないのだな、となり、自分は自分に書ける内容のものを書いていくことにしたのだった。
自分が書くものはパルプ的なものであると仮定することにより、行き詰まって書けなくなることを回避した部分もある。(どちらにせよ自分は書くのには相当な時間を必要とするのだが)ただ今にして思うと、そんなに自分を卑下する必要もなかったなとも思うし、単純に、そういった性質のものが自分の好みなのだろうというところに落ち着いた。どういった内容のものがいいのだろうと考えた結果、こういうスタイルなら書き続けられそうだ、というものを書くようには心がけた。
と、ここまでつらつらと小難しいことを説明してきたけど、自分はただ、いつも新しい表現を探しているだけなのかもしれない。だけど、今まで曲では歌えなかった部分を作品に落とし込むことができるのだなという発見のあったことは、割と大きな収穫だったのかもしれない。自分がこれからも何かを書き続けるのであれば、安出来の、どこにでもあるようなテーマの、それに短い読み物がいいなと今は思っている。
以前、一年間に渡り連載をさせてもらったOTOTSUで、今回は書き上がる毎に作品を発表するという形で進めていけたら、と考えている。
ひとまず三作は書いてみたので、立て続けに発表しようと思う。それ以降がどうなるかは、ちょっとわからない。なるだけ書き進めようとは思っているが。
この一連の文章の掲載は、歌い始めて今年で十年。そして、来年は自分の曲で音源を発表して十年ということで、自分としては、どちらの年も十周年となる感じであり、OTOTSUの編集部に、そういった話を持ちかけたところ、それでは、その流れを盛り上げるといった意味合いも含めて、連載を開始しようということになった。
一つ目の作品は、自分が一五歳くらいの頃、年上のバンドメンバーから聞いた話を元に、勝手に自分で膨らませていったもの。
二つ目は、実際よく着ていたTシャツのことを思い出して。三つ目は、友達との電話がきっかけとなった。
自分の文章は、なんだかんだで日常とは切り離せない部分があるのだなと実感している。

* * * * * *
目次
第一回「幻のテープ」
2025.07上旬 公開予定
第二回「ヨレヨレのCBGB」
順次公開予定
第三回「窓を開ければ」
順次公開予定
RELEASE INFORMATION
Hasta La Vista
classicus
2025.07.23 Release
second hand LABEL
Price: 2,500yen (tax in)
Format: CD / Digital
Catalog No: SHLT2
Track List
01 フェルメールの肖像 (free coffee ver.)
02 君の家まで (another motif ver.)
03 ブルーバード
04 Hasta La Vista
05 yokomitsu park
06 みえない
07 土曜の夜
08 ナイト・ドライブ


ZERO #1 : ZERO #2
classicus
2024.10.14 Release
second hand LABEL
Price: 2,500yen (tax in)
Format: CASSETTE / Digital
Catalog No: SHLT1
Track List
Side A 「ZERO #1」
01 真夜中
02 sea you
03 車輪の下で
04 ひらめき きらめき
05 恋の伝説
06 コチニール
Side B 「ZERO #2」
01 ホタル
02 シネマのベンチ
03 デッドストックのペイズリー
04 盟友
05 夜のプール
06 グッドナイト
The Unforgettable Flame (CD&LP)
岡山健二
CD 2023.08.02 Release
LP 2024.03.20 Release
monchént records
Price:
CD 2,200 yen (tax in)
LP 4,500 yen (tax in)
★ブックレットに書き下ろしライナーノーツ掲載
★ディスクユニオン&DIW stores予約特典:
オリジナル帯
Track List
Side A.
01. intro
02. 海辺で
03. 名もなき旅
Side B.
01. あのビーチの向こうに空が広がってる
02. 軒下
03. 永遠
04. My Darling

LIVE INFORMATION

2025.07.09 (Sat.) 吉祥寺MANDA-LA2
classicus「Hasta La Vista」発売記念ワンマンライブ
11:30 open / 12:00 start
ticket:
(一般)前売 4,000円 / 当日 4,500円+1drink
(U23)前売 2,000円 / 当日 2,500円+1drink
ご予約はこちらから
ARTIST PROFILE

1986年三重県生まれ。12歳でドラムを始め、のちにギターとピアノで作曲を開始。19歳の時に上京し、2011年にandymoriでデビュー。2014年、同バンドの解散後は、自身のバンドclassicus(クラシクス)を結成し、音源を発表。
現在は、ソロ、classicusと並行し、銀杏BOYZ 、豊田道倫 & His Band!ではドラマーとして活動している。
【Official SNS】
岡山健二 Official SNS / リリース一覧
https://monchent.lnk.to/kenjiokayama
classicus
Web Site
https://www.classicus.tokyo/
YouTube
https://www.youtube.com/@classicusofficialchannel186